2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15H01713
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
林 健司 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (50202263)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 幸二 九州大学, 工学研究院, 准教授 (10180324)
冨浦 洋一 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (10217523)
李 丞祐 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (60326460)
内田 誠一 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (70315125)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | センサ / イメージング / 匂い / 可視化 / 分子認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物の嗅覚は膨大な種類の化学物質の組合せ情報を高速、かつ高感度に読み取る優れた感覚であるが、ディジタル情報として扱うことができない。本研究は匂い情報の脳内表現である匂いクラスタマップに基づく匂い情報コーディングと匂い空間を可視化する匂いイメージセンサにより、匂いの質と空間をディジタル化し、可視化された匂い情報を創出することを目的としている。 まず、匂い情報処理に関しては、ラットの嗅球の活性状態を撮影した約500枚の画像について、歪みを考慮した画像を生成する統計モデルのパラメタを推定し、標準的な画像を生成し、様々な匂い物質に対して反応を示す嗅球の領域のクラスタリングに成功した。 匂い受容部位については蛍光性カーボン量子ドットに匂い物質官能性ペプチドホストを結合させた蛍光性ナノ粒子をFmoc保護法を利用して、単純なアミノ酸であれば再現性良く導入できる方法を確立した。さらに、従来にないカーボン量子ドットの利用法として、化学発光法分析法における発光物質として利用できることを初めて見いだし、過酸化水素の分析法を提案した。 ZSM-5ゼオライトとPDMSを複合したハイブリッド薄膜を開発し、脂肪族アルコールおよび芳香族化合物の検出限界が0.0034~0.049ppbであることを確認し、市販の清涼飲料水に含まれるVOCの分析にも応用展開した。実環境中または実サンプル中のアンモニアの高感度分析のために、2つ電極を有する水晶振動子(ツイン電極)を利用したセンサ開発を行い、前処理なしに100ppb以下の検出を可能にした。 匂いイメージングについては、局在プラズモン共鳴と分子認識膜を組み合わせた分子選択性を有する人に関連する匂い物質の可視化、および複合蛍光色素を用いたポリマフィルム、および蛍光性分子鋳型マイクロビーズを用いた検知プローブの開発を行い、光学的な匂いの流れや痕跡の可視化を可能とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
匂い分子と匂い情報処理については、匂い物質の物理化学的な性質(分子パラメタ)から,その物質に対応した標準嗅球画像を生成するモデル,および標準嗅球画像からその匂い物質の特徴を言語化したラベルを識別するモデルを機械学習により精度よく求めることが可能となった.匂い情報処理については、匂いマップと匂い計測の関連付けを行っており、これは匂いのセンシングおよびセンサから得られる情報に基づく匂いの言語化という総合的な匂いセンシングシステムの開発に繋がっており、予定通りに進捗している。 匂い受容部位については、多くの方式を検討しており、それぞれ十分な実績を得ているが、最終的に匂いの可視化計測に最適な受容部位の開発を明確化し、十分な性能の検知系を確立する必要がある。 匂いイメージングについては検知プローブの検討が進み、匂い可視化実験を行うことで様々な匂いの分布や分子組成の解析を実施できる段階となった。分子鋳型プローブについては局在プラズモン共鳴による検知系をさらに高感度化し、今後の可視化データの取得につなげていく。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではレイヤ1:匂いナノレポータ粒子、レイヤ2:匂い可視化フィルムと分光イメージング、レイヤ3:匂い空間と感性情報解析と匂い空間提示技術を基軸に研究を進め、レイヤごとに目的とした成果を得る。 ナノレポータ粒子の分子応答性を多種類の匂いコードに拡張し、併せて匂い可視化情報の提示技術を開発することで匂い可視化センシングの匂いインタフェース展開を検討する。また、ナノレポータ粒子とハイパースペクトルカメラを用いた匂いイメージセンサを開発し、実証研究も含め匂いイメージセンサと匂い感性情報の応用技術を確立する。具体的には次のレイヤごとの研究を推進する。 レイヤ1:ナノレポータ粒子開発。匂いコードを構成する分子形状・サイズ,官能基(アルコール,有機酸,アルデヒド,ケトン,芳香族,アミンなど),分子の剛直性(2重結合,芳香環の有無)などの組合せに対応した分子認識層を開発する。さらに、匂い分子選択性、拡張性を高めるため、分子認識層のモノマーの種類や混合比などの合成パラメータ調整による最適設計条件検討を推進する。 レイヤ2:可視化フィルム開発。粒子ごとに異なる光学的な特性を持つように蛍光プローブの種類や金属ナノ粒子の材料・サイズ・形状を制御された多種類の匂いナノレポータ粒子を混合した匂い可視化フィルム作成技術を開発する。この匂いナノレポータ粒子の特性を反映させたハイパースペクトルイメージングを実施し、匂い可視化センシングの実証研究を実施する。 レイヤ3:匂いコード情報変換。分子サイズや極性など分子情報と匂いクラスタマップの関係を調べ匂いコード情報にまとめあげ、さらに匂いクラスタマップから匂い感性情報への変換を試み、ナノレポータが認識すべき分子情報を明確化する。また、匂い情報を直感的に理解できる提示技術を開発する。また,匂い空間と実空間と対応付けることができる計測技術を開発する。
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Research Products
(23 results)