2018 Fiscal Year Annual Research Report
Agent Based Modeling & Its Real World Application - from Simulation to Real World Operating System
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15H01719
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
出口 弘 東京工業大学, 情報理工学院, 教授 (60192655)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市川 学 芝浦工業大学, システム理工学部, 准教授 (60553873)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | IoT / エージェントベースモデリング / リアルワールドOS / 自律分散協調 / サービスシステム / 生産管理システム / マイクロプロジェクト / マネジメントのダウンサイジング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究『エージェントベースモデリングの実世界応用-シミュレーションから実世界OSまで』では、インターネット上でのひと・もの・ソフトウェアなどからなる自律的エージェントの相互作用を支援することで、社会技術複合体としての実世界の様々な課題に対するシステムの革新を目的としている。本年度は、工場でのリアルワールドOSの枠組みに基づいた、モデリングサイクルの実証実験を通じて、エージェントベースモデリングの実世界応用のための「モデル運用とシステム実践」の一般的なフレームワークの構築を課題としてきた。この課題に沿って、協力工場で実際の切削加工プロセスの解析を可能とする、IoTベースのデータ把握の実証実験を行ってきた。この実証実験を通じ8台の切削加工装置の内部状態(Mコードなど)を16ビット取り出す装置を作成し、それをJSON形式でPublishし、NO SQLのドキュメント指向データベースであるMongo DBにJSON形式で格納すると同時に、この加工装置の内部状態を、タスクのワークフローにコンバートする枠組みを構築した。これにより切削加工装置の種類によらないタスクの遂行プロセスの把握が可能となる。ここから単に稼働状態の見える化や稼働率などの指標のみならず、タスク単位での実際原価計算のためのデータの取得や段取り替えプロセスを分析することによるワークフローの解析など高度なマネジメントのためのデータ加工を可能とした。 これらの成果は、第二回のリアルワールドOSシンポジウムで公開されたほか、自治体や企業団体のセミナーでも公開され、機種によらないオープンイノベーションの基盤構築が進みつつある。またこのIoTシステムの開発の基盤となるリアルワールドOSについては、さらに改良が進み、より現実の工場でのマネジメント改善に適した形に設計変更が行われている。すでに一部はGITHUB上での公開も始まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初研究計画は、インターネット上でのひと・もの・ソフトウェアなどからなる自律的エージェントの相互作用を支援するシステムの革新を目的としたものであった。そのためのアーキテクチャを我々はリアルワールドOSと呼び、これをエージェントベースモデリングの新たな発展領域として、理論的にも情報システムとしても確立することを目的としてきた。 その研究の成果として、タスクが疎結合した小規模なプロジェクトをマネージメントの基本単位としたビジネスプロセスに対する、IoTを利活用したマネージメントプロセスの革新こそ、IoTのフラッグシップモデルとなるという結論に達した。また新たな知見として、このリアルワールドOSというエージェントベースモデリングの新たな発展領域の開拓の過程で、社会の様々なサービスを支援するためのダウンサイジングされたマネジメント方法論が新たに開拓された。例えば、従来のMES(製造実行管理システム)は、マネジメント概念が中核にあるにもかかわらず、製造装置の制御ラインの上でデータを取得するアーキテクチャが主流となっている。しかもそのマネジメントの単位が既存のERPと結びつき、製品のロット単位(製造やサービスのマイクロプロジェクト・タスク単位)になっていないという大きな課題が明らかになった。これに対して我々は、マイクロプロジェクト単位での計画と実際の差異を把握しマネジメントする、よりダウンサイジングされたマネジメントの枠組みを制御のアーキテクチャとは独立に設計し、さらにそれを実際の工場の現場で事例を通じてPOC(概念実証)することができた。その過程で、既存のIoTを利活用したマネジメントプロセスでの過剰な「規格化」の課題も明らかとなりCNCからの出力が機種依存となる他は共通のマネジメントシステムのおーぷにのベーションが可能であることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で得られた知見を基盤として向かうべき方向は、ダウンサイジングされたマネジメントシステムそのものにある。技術と社会の界面で、新たなマネジメント技術を開拓するためには実社会の企業も含む新たな概念枠組みの構築が必要となる。既存のプラットフォームなどの「仕組み」ビジネスの背後にあるロックインのメカニズムに対抗し、産業構造をスケーラブルなプロジェクト型のビジネスユニットの集合体にすることのできるオープン型の「仕組み」を普及させることが本研究の次のステップの課題となる。 そのためには、疎結合型のビジネスプロセスに対するマネージメントがIoT化で刷新されることでビジネス自体が、より柔軟で多様なものへと進化できることを示す必要がある。サービス領域ではマイクロプロジェクト単位でのビジネスプロセスの把握は十分に行われておらず、タスクの疎な連結としてのマイクロプロジェクト単位でのビジネスの見える化を行い、それに伴う管理情報の収集・管理を行うことが可能な膨大な領域が存在する。タスクが疎に結合した小規模なプロジェクトをマネージメントの基本単位としたビジネスプロセスに対する、IoTを利活用したマネージメントプロセスの革新が「もの」や「サービス」の生産と運用管理の領域でいかなる可能性をもたらすかについて具体的な検証をすることが必要になる。IoTを利活用して高度化するのは、ものづくりやサービスの計画と遂行をマイクロプロジェクト単位で管理するためのマネジメントシステムである。タスクとその疎な連結の形で遂行される疎結合型のプロジェクトを単位として、IoTを利活用して高度なマネージメントが可能となり、それが次世代の産業構造の基盤となり得ることを理論とPOCを通じて示していくことが課題となる。この活動をリアルワールドOSコンソーシアムを通じてオープンイノベーションとして水平展開していくこともまた課題となる。
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Research Products
(10 results)