2016 Fiscal Year Annual Research Report
西部北極海の海氷減少と海洋渦が生物ポンプに与える影響評価
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15H01736
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
小野寺 丈尚太郎 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 主任研究員 (50467859)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 裕一郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 副研究部門長 (50357456)
渡邉 英嗣 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 北極環境変動総合研究センター, 研究員 (50722550)
溝端 浩平 東京海洋大学, 海洋環境学部門, 助教 (80586058)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 北極海カナダ海盆 / チュクチ海 / ノースウィンド深海平原 / 海洋渦 / 海洋表層循環 / 沈降粒子フラックス / 物質循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
北極海環境の将来予測にとって数値モデルは有効な手法であり、現場観測データに基づくシミュレーション結果の検証と数値モデルの改良は重要な課題である。本研究は、これまでの研究によって地球シミュレータで計算されたアラスカ北西端バロー沖の海洋渦形成域における生物源沈降粒子フラックス(Watanabe et al. 2014)を現場観測から検証するとともに、その観測結果と海洋環境との関係についても理解を深めることを目指している。平成28年度は海洋地球研究船「みらい」MR16-06航海に乗船し、前年10月に北極海太平洋側カナダ海盆南西縁の2か所に投入したセディメントトラップ係留系の回収と再設置を実施した。回収した係留系からは、沈降粒子試料のほか水温・塩分など水塊環境を観測する各種センサーの通年データが一部を除き計画通り取得され、流向流速計からは海洋渦を捉えたと思われるデータが得られた。また係留した水中カメラには粒子が流されていく様子も撮影された。これまでの研究によると、ノースウィンド深海平原の南部(以下NAP)に供給される沈降粒子や懸濁粒子の起源には、バロー海底谷北方沖(以下NBC)で発達する海洋渦に陸棚域の物質が取り込まれ、海洋渦が陸棚物質を伴いつつ海洋表層循環の下流域に位置するNAPに向かって移動してくるプロセスが重要である。そのシミュレーションでは、NBCの粒状有機窒素の日平均フラックスはNAPに比べて3倍ほど高く見積もられているが、NBCにおける通年の実測データは存在していなかった。そこで2010年~2012年にNAPで得られた実測データを使って今回実測されたNBCの結果と比較すると、NBCの粒状有機窒素の沈降フラックスはNAPと比べて約6倍高かった。粒子フラックスの年による変動幅も考慮して検証する必要があるため、翌年度以降のデータも含め最終的な評価に繋げていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度初めに計画した内容に沿って、おおむね順調に研究観測活動を実施することができた。当初計画していたセディメントトラップ係留系のノースウィンド深海平原への投入は、本年度も当該海域が海氷に覆われて観測船が立ち入れなかったため実施していない。しかし、ノースウィンド深海平原の代替地点として現在係留系を投入しているハンナ峡谷も、陸棚起源水の下流域の1つと考えられる一方で、これまでにセディメントトラップ係留系による通年観測の実績が殆どないことから、そこに続けて投入することにも大きな意義がある。したがって、本課題の現場観測計画に関して、目的の達成に対して大きな影響はないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に当初の計画通り実施していく。本課題で係留系を投入するのは翌29年度が最終となるので、最終年度(30年度)は係留系の回収を確実に実施する必要がある。そこで今後の係留系の投入箇所は夏季に海氷がない28年度の係留系投入地点と同じ場所を第一候補とし、設置個所を当初計画の地点に変更することなく、現状得られているデータの連続性を優先させる。観測データの分析とモデル研究は、計画通り実施していく。
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Research Products
(10 results)