2015 Fiscal Year Annual Research Report
「予測」をめぐる科学・政策・社会の関係 -科学社会学からのアプローチ
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15H01774
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
山口 富子 国際基督教大学, 教養学部, 上級准教授 (80425595)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福島 真人 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (10202285)
日比野 愛子 弘前大学, 人文学部, 准教授 (00511685)
秋吉 貴雄 中央大学, 法学部, 教授 (50332862)
纐纈 一起 東京大学, 地震研究所, 教授 (90134634)
綾部 広則 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80313211)
田原 敬一郎 公益財団法人未来工学研究所, その他部局等, 研究員 (80520973)
村上 道夫 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (50509932)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 予測科学 / 科学社会学 / 期待の社会学 / 知識の流通 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、「予測をめぐる科学技術的実践の多様性とそれが政治あるいは社会に与える影響」という研究テーマをリサーチ可能な問いにするために、情報科学専門家、地震学、農学の専門家など、諸領域の専門家への聞き取りをすすめるとともに、STS関連の文献のサーベイを進めた。また本研究グループのメンバーを中心に3度の研究会を実施し、本課題の問いを以下の5つの問題に収れんさせることとした:(1)予測をビッグデータの問題としてとらえ、その有用性や有害さの境界を明らかにする、(2)地震学における予測、予知問題、(3)予測ツールと政策への接続の問題、(4)リスク評価という政策的ツールに包含される予測と社会の問題、(5)巨大プロジェクトにおけるロードマップの行為追随性にかかわる問題。2つめに研究成果を社会に還元するための活動が挙げられる。主な活動として、情報科学の世界的権威であるGeoffrey Bowker 教授(カリフォルニア大学アーバイン校)をパネリストとして招き「地方都市における情報インフラの活用」(弘前大学に於いて)をテーマとする国際フォーラムを実施したこと、また科研のホームページ(http://forecastingresearch.weebly.com/)の開設などがある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当研究グループは、社会科学と自然科学を含む分野横断的な共同研究のため、それぞれの領域における「予測」の科学的な特徴やその科学に影響を及ぼす諸要因(予測の具体的な意味、データの質、その分野におけるデータの収集方法、計算用アルゴリズムの問題)や科学的営為を取り巻く社会経済状況(データベースに代表される情報インフラの問題など)が異なる。そのため、平成27年度は、研究参加メンバー間での知識の共有に重点をおいた。そのため、研究グループを中心とする研究会を実施し、基本事項や前提についての確認作業を行った。その結果、研究テーマを5つの具体的な問い(「研究実績の概要」に記載)とすることとした。当初の計画では、研究グループを予測班、政策班、社会班という3つのサブグループに分け、課題を推進する予定であったが、分野横断的な共同研究であるという強みを生かすために、研究メンバーがそれぞれの専門性を生かし個別に問題に取り組む方が良いと判断されたため、3つの研究グループという体制も廃止する事とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に実施した3度の研究会、また弘前大学で実施した国際フォーラムなどを通して得られた知見を踏まえ、今年度以降は、上述の5つ小課題(「研究実績の概要」に記載)を進める。具体的には、地震学、気象学、生物学・医療、農学、人工市場、食品リスクといった諸分野における「予測」について、予測モデルの特徴(シミュレーション、確率的計算、記述・規範モデル)、前提条件、データの収集方法や計算方法、科学社会学的な諸問題(分野の国際的な分布、論争点、研究の動向など)など分析対象となる諸要素を洗い出し、これらの諸要素を、「ビッグデータ」、「予測」、「情報インフラ」、「期待の社会学」といった鍵となる概念や理論とどう接続できるのか(できないのか)について考察を進める。そのため、今年度以降も研究会を定期的に実施する。また今年度は、「期待の社会学」(技術の発展における期待の役割)の第一人者である、Professor H. van Lente (マーストリヒト大学、STSプログラムの統括)を日本に招聘し、科研メンバーを中心にワークショップ形式で研究交流を実施する。国際科学技術社会論学会において、ビッグデータをどう理解するのか、シミュレーションをどう扱うのかについて「期待のレジーム論」の観点からの議論が活発になりつつあることから、これらの議論も射程に入れながら本科研の理論的な進化を試みる。ビッグデータをめぐる国際的な制度設計という観点から、特にアメリカを中心としたインフラ整備が急速に進んでおり、社会の隅々にデータによる予測の網の目が張り巡らせるようになった。 こうしたいわば予測の過剰(あらゆる分野での最適値への努力)という現象がもたらしうる諸問題についても集中的に検討する計画である。
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Research Products
(9 results)