2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H01794
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
杉岡 裕子 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (00359184)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市原 美恵 東京大学, 地震研究所, 准教授 (00376625)
浜野 洋三 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球深部ダイナミクス研究分野, 特任上席研究員 (90011709)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 離島火山活動 / 西之島 / リモートモニタリング / 海域観測 / ウェーブグライダー |
Outline of Annual Research Achievements |
東京都の離島、西之島では、2013年11月の噴火以来、高い活動水準を保ちながら、2015年12月に活動が一旦停止するまでの約2年間、拡大成長を続けた新島の面積は旧島の12倍にも及んでいる。この新しい海洋島形成という希少な地学現象を逃さず観測するための手段として、本研究では、無人の自走型海上ヴィークルを利用し、離島火山近傍においても長期観測が可能な新しい機動観測システムを構築し、その実用化を目指すものである。また、突発的な火山噴火とそれにより派生する津波災害にも臨機対応可能な、減災・防災にも資する極めて機動性、実効性の高いシステムは、急務の要請であり、初年度である平成27年度にはシステムをほぼ完成させている。一方で、平成27年12月に、本システムの要であるデータ伝送部のメーカーから、全く新しいモジュールのアップデート版が発売され、観測を実施するためには、汎用性、安定性に優れたアップデート版が必要不可欠であると考え、仕様の見直しを図り、再製作を行った。それにより多少計画は遅れたものの、平成28年10月の調査船「新青丸」航海に対し、十分な準備期間をとれたことによるメリットは大きく、観測は成功に終わった。 本観測航海では、当初計画通り、海上ヴィークルであるウェーブグライダーに火山観測に必須である、空振計(噴火に伴う大気圧変動観測)、ハイドロフォーン(火山性地震に伴う水圧変動観測)、タイムラプスカメラ(望遠観察)及びGPS波浪計(山体崩落に伴う津波観測)を搭載し、いずれもスラーヤ衛星経由でのリアルタイム観測に成功した。平成27年12月以降、西之島の活動は沈静化を辿っており、観測を行った平成28年10月も噴火は無かったものの、バックグラウンドである波浪に伴う大気圧変動を空振計と波浪計で記録し、十分なノイズ評価ができた。本観測により、本離島火山観測システムを用いた長期観測への目処が立った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではウェーブグライダーと呼ばれる完全自律型海上プラットフォームを用いた離島火山活動モニタリングシステムを構築し、現在最も活発である東京都の離島、西之島火山の実観測を行うものである。平成27年度は当初計画通りに進捗し、平成27年8月にウェーブグライダーを入手し、12月にシステムはほぼ完成した。一方で、完成と同じ頃、データ通信用のスラーヤ携帯電話に代わる通信モジュール(SM2700)がアップデートされ、携帯電話よりも汎用性、安定性は極めて高いため、長期観測には有利であると判断し、仕様を変更した。 また、西之島近海での観測航海は当初平成28年5月に予定されていたが、本観測調査も含め海洋研究開発機構管轄する調査航海計画の大幅な見直しがあり、それに伴い、本調査航海は平成28年10月に変更となった。平成27年12月頃から西之島火山活動は沈静化の一途を辿っていたが、観測を行った平成28年10月においても、全く噴火活動が無かったため、当初計画していた長期間の観測は取りやめ、開発したシステムの評価試験観測として位置づけ、短期間の観測に変更した。短期間ではあったが、得られたデータの質・量ともに評価には十分であり、本システムを用いた長期運用への目処が立った。 平成28年度の計画を終えた時点では、西之島は依然として沈静化が保たれたままであったが、平成28年4月20日、海上保安庁の巡視船により、西之島の再活発化が認められ、新たな火口が観察される等、西之島は依然アクティブであることが明らかになった。現在、この絶好の機を逃さないよう、急遽、西之島近海における観測計画を立てているところである。平成29年度は本科研費の最終年度であるが、この再活発化により、開発した本離島火山観測システムによる、西之島近海におけるリアルタイム観測ならびに取得データの評価の実施など、当初設定した目標を遂行できる見込みとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、平成28年10月に西之島海域における評価試験観測を実施により、本システムによるリアルタイムでの長期観測の目処が立ったところである。一方、平成27年12月頃から、沈静化の一途を辿っていた西之島火山活動は、平成29年4月20日に、海上保安庁の監視船により、1年半振りの再活発化が観測さた。また、東京大学地震研究所の連携研究者(前野深)により、新しい火口の存在も認められており、西之島火山の活動状況は別のステージに入った可能性について指摘があった。海上保安庁による公開映像からも、噴火活動も最も活発な時期と同程度に活発であることが伺える。 平成29年度は、本科研費の最終年度でもあり、本システムによる長期観測を実施する。但し、今回は調査船公募航海が不採択となったため、傭船を用いた観測となる。そのため、西之島の最近島である父島近海において本システムを投入し、約130km西方の西之島までウェーブグライダーを自力航走させるため、ナビゲーションに対する十分な対策が必要である。また、平成28年10月の評価試験観測では、タイムラプスカメラによる望遠観測はオフラインであったが、リアルタイム観測を目指し、現在、スラーヤ衛星携帯モジュールを用いたシステムの開発を進めているところである。 本科研費計画の事前調査として、平成27年2月26-27日に西之島近海において実施した調査船「かいれい」船上での観測では、本システムと同じセンサー群の評価試験を行ってる。その観測時期は、噴火活動が最も活発化する導入期でもあり、空振計では噴火に伴う大気圧変動を、また、ハイドロフォーンでは火山深部の火道における火山性微動を数多く検出した。これから実施する長期観測でも、空振計およびハイドロフォーン観測により、活動に伴うシグナルが検出されれば、異なる活動ステージにおける噴火大気圧変動ならびに火山性微動の比較検討が可能となる。
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Research Products
(20 results)
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[Presentation] 房総沖海底地震観測による地震活動2015
Author(s)
伊藤亜妃, 杉岡裕子, 尾鼻浩一郎, 中野優, 山本揚二朗, 末次大輔;,中東和夫, 篠原雅尚, 日野亮太
Organizer
日本地震学会2015年度秋季大会
Place of Presentation
神戸国際会議場(兵庫県・神戸市)
Year and Date
2015-10-26 – 2015-10-26
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[Presentation] 太平洋アレイ2015
Author(s)
川勝均, 竹尾明子, 一瀬建日, 西田究, 塩原肇, 末次大輔, 杉岡裕子
Organizer
日本地球惑星科学連合2015年大会
Place of Presentation
幕張メッセ(千葉県・千葉市)
Year and Date
2015-05-28 – 2015-05-28
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[Presentation] フレンチポリネシア下のP波速度異常2015
Author(s)
大林政行, 吉光淳子, 杉岡裕子, 伊藤亜妃, 一瀬建日, 塩原肇, 末次大輔
Organizer
日本地球惑星科学連合2015年大会
Place of Presentation
幕張メッセ(千葉県・千葉市)
Year and Date
2015-05-26 – 2015-05-26
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