2016 Fiscal Year Annual Research Report
高感度原子磁気センサモジュールをコアとする超低磁場マルチモダリティMRIの実現
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15H01813
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 哲生 京都大学, 工学研究科, 教授 (40175336)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 原子磁気センサ / MRI / NMR / MEG / 磁気粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,まず光ポンピング原子磁気センサ(OPAM)のさらなる高感度化に向けてKとRb原子のハイブリッド型OPAMにおける原子密度比の最適化に関する理論並びに実験的検討を進めた.その結果,K原子とRb原子の密度比が400が最適条件となり原子を封入するガラスセル内の空間的均一性を向上できることを明らかにした. 次に,小型のOPAMモジュールをMR信号の受信に用いる超低磁場MRIに関して,プロトンの磁気共鳴信号をフラックストランスフォーマとOPAMモジュールを組み合わせて遠隔計測するシステムを新たに設計・試作した.合わせてこのMRIシステム用のパルスシーケンスの開発を行った.本研究では,フラックストランスフォーマの入力コイルを2次微分型とすることによりS/Nを向上させ,さらに独自の水冷のプリポーラライズ磁場コイルを製作し,ラーモア周波数が5kHzという低周波数において世界ではじめてOPAMによる磁気共鳴信号ならびにMRIの撮像に成功した. さらに本年度は,OPAMを用いた,心磁図、脳磁図、脊磁図といった多様な疾患の機能診断につながる生体磁気信号計測を行う際に必要となる多チャネル同時計測法に関する検討を行った.本研究では、まず2本の強度変調されたポンプ光を、ハイブリッドセルに入射することで、2点同時計測の実証を行った。実証を行うにあたり、まず強度変調されたポンプ光を1本入射させ、変調周波数を変化させることによる磁場応答信号強度への影響を確認した。同様に、ポンプ光強度を変化させ、磁場応答信号強度の変化を観察した。さらに2点同時計測を行い、ループコイルから発生する磁場分布を計測することで、ポンプ光強度変調を用いたプローブ光方向の複数点同時計測法の有用性を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原子磁気センサのさらなる高感度化について,K原子とRb原子のハイブリッド型とすることで多チャネル計測時に重要となる空間的に均一な高感度化が実現できることを理論と実験の両面から示す事ができた.また実績の概要に記載の通り,超低磁場マルチモダリティの実現に向けてラーモア周波数が5kHzという低周波数において世界ではじめてOPAMによる磁気共鳴信号ならびにMRIの撮像に成功した.さらに生体磁気信号の同時計測に繋がる新たな方式に関しても検討が進み,おおむね順調に計画した研究内容が達成できていると言う事ができる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,OPAMモジュールに関して,引き続きその高感度化,小型化などのさらなる深化を図る.OPAMの多チャネル化については、小型モジュールのアレイ化とアルカリ金属蒸気を封入する大型ガラスセルを用いた多チャネル計測の両面から研究を進める。また,OPAMモジュールの広帯域化に向けて検討を進める計画である。 生体磁気計測については,OPAMモジュールにより,正中電気刺激により誘発され求心性の末梢神経軸索を伝搬する活動電位に伴って発生する磁場の検出を試み、合わせてマルチチャネルの光ポンピング原子磁気センサモジュールを用いた脳磁図計測についても、多様な疾患の機能診断につながるイメージングに向けた検討を進める. OPAMを用いた超低磁場MRIに関しては、プロトンイメージングのためのパルスシーケンスならびに画像化のための技術をさらに改良し、分解能とS/Nの向上を目指す.なお,本年度もMR信号を光ポンピング原子磁気センサモジュールで計測する方法としてフラックストランスフォーマを用いた遠隔計測に関する検討を継続する。加えて,この超低磁場MRIに関しては,上記のプロトンイメージングと共に超偏極Xeを対象としたイメージングの検討にも取り組む。 さらに次年度は,超低磁場MRIとの融合を目指したモダリティとして磁気粒子イメージング(MPI)にも着手し,原子磁気センサモジュールを用いて磁性ナノ粒子であるリゾビストから発生する磁場の計測を試みる.
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Research Products
(28 results)