2018 Fiscal Year Annual Research Report
高感度原子磁気センサモジュールをコアとする超低磁場マルチモダリティMRIの実現
Project/Area Number |
15H01813
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 哲生 京都大学, 工学研究科, 教授 (40175336)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 原子磁気センサ / 光ポンピング / MEG / MRI |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、光ポンピング原子磁気センサモジュールに関して、高感度を保持したまま小型化を図ることを目的として新たな小型ガラスセルの開発を行った。さらに、この小型ガラスセルを組み込んだコンパクトな光ポンピング原子磁気センサモジュールの設計を行い、そのプロトタイプの試作を行った。一方、大型ガラスセル(5cmx5cmx5cm)を用いた多チャネル生体磁気計測に関しては、ヒトの開眼・閉眼に伴って後頭葉の視覚野近傍において8~13Hz帯の自発脳磁界律動である(α波)のパワーが変動する事象関連脱同期の8チャンル同時計測に成功しその多チャネル計測の実証とその有効性を示す事ができた。 また、生体磁気計測に向けたK原子とRb原子を混合してガラスセルに封入する我々のオリジナル技術であるハイブリッド型光ポンピング原子磁気センサについては、両アルカリ金属原子の密度ならびに密度比に伴って感度や帯域幅といったセンサ特性が如何に変化するのかについて、実験ならびにシミュレーションにより詳細に検討し、セルサイズやセル温度に応じた最適な密度比を決定することによりさらなる高感度化が達成できることを世界に先駆けて報告した。 光ポンピング原子磁気センサモジュールを用いた超低磁場MRIに関しては、まずシミュレーションによってフラックストランスフォーマを用いた遠隔計測と誘導コイルを用いた撮像に対する詳細な比較・検討を行った後、超低磁場における超偏極XeのMRI撮像のためのパルスシーケンスの開発を進めた。その後、実際に円筒形の容器に封入した超偏極Xeの撮像を行い、遠隔計測したNMR信号から画像の再構成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
K-Rbハイブリッド型光ポンピング原子磁気センサを用いた8チャネルのMEG同時計測(事象関連脱同期計測)に成功したことは大きな成果である。また、超低磁場マルチモダリティの実現に向けて超偏極Xeを対象としてNMR信号をフラックストランスフォーマと組み合わせた遠隔計測によってMR画像の再構成に成功したことは世界を先導する画期的な成果であり、順調に計画した研究内容が達成できていると言う事ができる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、前年度試作した小型ガラスセルを組み込んだ1チャネル光ポンピング原子磁気センサ(OPAM)モジュールのプロトタイプのさらなる高感度化と小型化を行う。ここで、高感度化については、K原子とRb原子のハイブリッド型OPAMモジュールを対象に,二つの原子を封入するガラスセルの温度ならびに原子密度比を最適に設定したセルを試作し、シミュレーションで予測される最高感度に到達させる。一方、大型ガラスセルを用いた多チャネルOPAMでの計測に関しては、計測チャネル数を前年の8チャネルから大幅に増加させ,各チャネルで計測される磁気信号の差分を得る一次微分型のグラジオメータをハードウェア的に構成しノイズの低減を行う.加えて,多チャネルOPAMの出力信号をAD変換後にフィルタリングすることや,多変量解析を含む各種信号処理を行うことで、さらなるノイズの低減とS/Nの向上を図る.その後、これらのOPAMを用いてヒトを対象として視覚誘発脳磁界(VEF)を中心とした誘発磁場応答の計測と,数Hz~100Hzで観測される複数の自発律動に基づく事象関連同期・脱同期に基づく脳機能計測を行う。 OPAMモジュールを用いた超低磁場MRI(ULF-MRI)に関しては、上記の新たな小型OPAMモジュールを受信センサとする遠隔ULF-MRIを、MEG計測との同時計測が行えるマルチモダリティシステムとして,そのプロトタイプ機を試作する。その後,この新たなULFマルチモダリティMRIシステムを用いたMRI撮像に向けて,高速撮像パルスシーケンスの開発ならびに超偏極XeとプロトンのMR用ファントムを対象にした画像化を行う。 なお,以上の研究成果については、そのつど論文や国際会議等での発表などにより公表すると共に、最後に研究全体の総括を行って研究を完結させる。
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Research Products
(34 results)