2015 Fiscal Year Annual Research Report
批判的地域主義に向けた地域研究のダイアレクテイック
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15H01851
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
小川 英文 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20214025)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩崎 稔 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (10201948)
佐々木 孝弘 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (10225873)
島田 志津夫 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 講師 (20624117)
小松 久男 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (30138622)
吉田 ゆり子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (50196888)
山内 由理子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (50626348)
菊池 陽子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (60334447)
小田原 琳 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 講師 (70466910)
米谷 匡史 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (80251312)
大川 正彦 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (80323731)
島田 周平 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (90170943)
李 孝徳 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (90292721)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地域研究 / コンフリクト / グローバリゼーション / 帝国主義 / 植民地主義 / 島嶼研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度には、研究計画で示した「歴史と責任の認識をめぐる抗争」という研究論点のもと、戦前には東アジア地域で覇権を握っていた大日本帝国と戦後には覇権を奪取するアメリカ合衆国の政治力学によって大きな地政学的規定を受けてきた東アジア地域に注力して、2015年5月に国際ワークショップ(「琉球・朝鮮・「島嶼」へと、植民地併合の歴史を問う」)、2015年12月に国際シンポジウム(「東アジアで考える戦争民主主義と戦後日本」)、2016年3月に国内シンポジウム(「世界史のなかの台湾植民地支配」)を開催し、東アジアにおける批判的地域主義を構築するため、帝国史を地域からの視点によって多焦点的な世界の歴史(地域史の輻輳)へと読みかえ、近代における地域と国家の主権の問題について継続的に検証した。 また、本科研の次年度以降の展開のために、「国家の下位集団による社会的承認の創発化」という研究論点のもとでオセアニアでは先住民問題、米国では人種対立、沖縄では国家主権と地域主権の対立、「トランスボーダーな宗教復興の拡大」という研究論点のもとで中東の民主化をめぐる地域紛争、「国際政治のローカリゼーション」という研究論点のもとでヨーロッパと東南アジアでは地域史の国際化について、それそれの地域で研究調査を行い、その調査結果を本科研の担当者が多く帰属し、研究の拠点となっている海外事情研究所で継続的にワークショップを開催して、意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、東アジア地域に焦点をあて、近代国家における主権の成立過程に着目して、「戦争」と「島嶼」という観点から、戦前から現在にまで続く「歴史と責任の認識をめぐる抗争」の構成機序について検証したが、そこから「島嶼研究」という新しい地域研究のモデルを設定することができ、また、戦前・戦後を断絶した時代ではなく、連続した「貫戦期」として一貫した流れとして捉え、植民地戦争や世界戦が近代国家の成立過程に不可分であるという新しい歴史認識を導出することで、本研究が目指すローカリティとコンフリクト耐性を剔抉する批判的地域主義的な研究の前提を構築することができた。 また、次年度以降の本研究課題の展開に向けた各研究論点での諸地域での現地調査が順調に進んでおり、その調査結果をもとにして、本研究の担当研究者たちが所属する海外事情研究所で開催されたワークショップに、これまでは交流がなかった研究領域の研究者たち集うようになり、新しい地域研究モデルの構築に向けて活発な議論を行うようになって、次年度以降の展開に大きな貢献が生み出されている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は研究計画で提示した研究論点と対象地域のうち、「国際政治とローカリゼーション」ではアフリカにおける地域紛争をグローバリゼーションの観点から再考する国際シンポジウムと、「トランスボーダーな宗教復興の拡大」では中央ユーラシアにおけるイスラームの拡大と変容について討論する国際シンポジウムを開催し、グローバリゼーション下で変容する第三世界をとらえるための新しい地域研究の構築に向けた検討を行う。 また、先進諸国地域で劇症化している「国家の下位集団による社会的承認の創発化」を対象化するための地域研究のモデルについて検討すべく、ヨーロッパにおける移民問題と東アジアにおける島嶼研究の動向を認識するための国際カンファレンスを開催する予定である。
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Research Products
(19 results)