2015 Fiscal Year Annual Research Report
身心変容技法と霊的暴力ー宗教経験における負の感情の浄化のワザに関する総合的研究
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15H01866
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鎌田 東二 京都大学, こころの未来研究センター, 教授 (00233924)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
町田 宗鳳 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (10334450)
島薗 進 上智大学, 神学部, 教授 (20143620)
津城 寛文 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 教授 (30212054)
河合 俊雄 京都大学, こころの未来研究センター, 教授 (30234008)
棚次 正和 京都大学, こころの未来研究センター, 連携研究員 (30241748)
永澤 哲 京都文教大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (40388210)
井上 ウィマラ 高野山大学, 文学部, 教授 (40421292)
篠原 資明 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (60135499)
鶴岡 賀雄 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (60180056)
齋木 潤 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (60283470)
野村 理朗 京都大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (60399011)
倉島 哲 関西学院大学, 社会学部, 教授 (70378884)
金 香淑 京都大学, こころの未来研究センター, 連携研究員 (70548106)
林 紀行 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80619510)
稲葉 俊郎 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80747832)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 身心変容技法 / 神秘体験 / ワザ / 負の感情処理 / 身体 / 瞑想 |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研研究プロジェクトは、「こころの荒廃」から抜け出る手がかりとして、宗教的リソース(技術と知恵)に着目し、その学術的・社会的な可能性を拓くことを課題として、「身心変容技法」の諸相を明らかにしてきた。これまでは、仏教における止観、密教の瞑想、修験道、合気道・気功・太極拳など各種武道・芸道の特色と構造を、人文学的手法によって探究する一方、fMRIを用いた神経科学的手法と、フィールド調査の実証研究とを重ね、理論的研究と実証的研究とを有機的に連関させながら、各伝統における根源的な「こころの変容」の在り方を解明してきた。 2015年度は、今日社会問題となっている、超越的世界観に裏付けられた破壊性の問題、宗教性にまつわる「負の感情処理」の問題に焦点を当て、研究を進めてきた。修行やトレーニングの深化に伴い、当初は身心のより善き状態、社会のより善いかたちを目指していたはずの「身心変容技法」が、暴力的破壊性に転化してしまう事例は少なくない。本科研では、現代社会の至るところで表面化するこうした負の作用について、具体的事例を通して比較検討し、学術的に究明することで、その構造や特徴・問題点を明らかにする。そうすることで、宗教的リソース(技術と知恵)から現代を生きる活力を掘り起こし、身体とこころをより良い理想的な状態へと変容・転換させる諸技法を社会へ発信することを目指した。 具体的には、1年間で11回の定例公開研究会(第35回身心変容技法研究会~第45回身心変容技法研究会)、3回のフィールドワーク(2015年5月と9月の2回にわたる鎌田の東北被災地追跡調査(第9回目~第10回目)、天河大辨財天社鬼の宿・節分祭・立春祭調査)、毎月2度の定例分科研究会「世阿弥研究会」を行ない、それらをHP上で公開すると同時に、研究年報『身心変容技法研究』第5号を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年間で11回の定例公開研究会(第35回身心変容技法研究会~第45回身心変容技法研究会)を開催し、3回のフィールドワーク(2015年5月と9月の2回にわたる鎌田の東北被災地追跡調査【第9回目~第10回目】、天河大辨財天社鬼の宿・節分祭・立春祭調査)を実施し、毎月2度の定例分科研究会「世阿弥研究会」を行ない、それらの研究成果をすべてHP上で公開すると同時に、研究年報『身心変容技法研究』第5号(A4・3段組み・144頁)に発表・公開した。 同5号は、「身心変容技法研究会」のHP: http://waza-sophia.la.coocan.jp/data/nennpou/nennpou51.pdf で全頁公開している。
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Strategy for Future Research Activity |
社会に蓄積されてきた宗教的リソース(技術と知恵)に着目し、その学術的な可能性を、「身心変容技法」の諸相として明らかにしてきたが、「身体と心の状態を当事者にとってよりよいと考えられる理想的な状態に切り替え変容・転換させる諸技法」である「身心変容技法」が、その理想や理念とは裏腹に、「スピリチュアル・アビューズ(Spiritual Abuse)」を引き起こす事例がたびたび報告されている。オウム真理教事件はその典型的な事例である。宗教・哲学・芸術・思想・科学の各観点から総合的に「身心変容技法」と「負の感情」の関連を照射し、各事例の共通原理や共通構造を見出し、「身心変容技法」が引き起こし得る負の局面への処方箋を探る。宗教的リソースの危険性や問題点を学術的に明らかにしつつ、「身心変容技法」の応用可能性を広げ、社会に還元する道を探ることは、喫緊の課題であり宗教研究の責務である。
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Research Products
(24 results)