2015 Fiscal Year Annual Research Report
日本染織コレクションの形成とその美術史的価値観の確立に関する研究
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15H01873
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Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
小山 弓弦葉 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 主任研究員 (10356272)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 淑江 共立女子大学, 家政学部, 准教授 (70636456)
澤田 和人 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (80353374)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 日本染織 / 近代日本 / 古美術商 / コレクター / 海外古美術市場 / 野村正治郎 / 長尾美術館 / 日本染織コレクション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本国内外の機関や個人コレクターが所蔵する日本染織コレクション蒐集の経緯や来歴、構成内容を網羅的に調査し、近代以前は蒐集されることがなかった日本染織が古美術品としての価値観を形成していく過程を考察するものである。平成27年度の調査研究計画にしたがって、以下の調査を行った。 海外調査については、ロサンゼルス・カウンティ・ミュージアムにて、同機関に所蔵・寄託される日本東洋染織176件(27年8月17日~26日)、同機関に所蔵される野村正治郎関連染織16件(27年12月1日)を調査した。サンフランシスコのデ・ヤング美術館では、同館に所蔵される野村正治郎関連染織25件を調査(27年12月3日~4日)、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館では、同館に所蔵される日本染織2件を調査した(27年12月28日)。 日本国内調査については、女子美術大学美術館に所蔵される日本染織45件を調査(27年10月8日~9日/28年3月28日~29日)した。 上記の調査の結果、ロサンゼルス・カウンティ・ミュージアムおよびサンフランシスコのデ・ヤング美術館に所蔵される海外古美術市場を通して蒐集された日本染織コレクションの全貌がほぼ把握できた。ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館については、これまでの調査と合わせて見ることにより、同館に所蔵される日本仏教染織については全貌を把握することができた。女子美術大学美術館に所蔵される日本染織については、事前に研究会を行い、数年度にまたがって順次調査を行うこととなった。本年度においては、長尾美術館旧蔵品についてその来歴に関する知見を得た。 東京国立博物館が所蔵する野口彦兵衛旧蔵小袖コレクションの悉皆調査を元に得られた研究の成果を、特集陳列「呉服商「大彦」の小袖コレクション(27年6月2日~8月2日)で展示、情報公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、国内調査として、当初は、昭和初期に実業家・根津嘉一郎が蒐集した、東京・根津美術館所蔵の日本染織コレクションを調査する予定であった。しかし、年度中に根津美術館とのスケジュール調整が難しくなったため、年度計画を変更し、女子美術大学美術館に所蔵される日本染織コレクションを調査することとなった。女子美術大学美術館には、昭和初期に長尾夫妻が蒐集した長尾美術館旧蔵の日本染織コレクションが所蔵されている。今回の調査では、その中核である小袖コレクションを中心に調査した。その中で、長尾美術館旧蔵品である手がかりとなる資料の発見もあり、今後の調査を進展させる結果を得られた。また、海外調査としては、アメリカ・ロサンゼルス・カウンティ美術館、サンフランシスコ・デヤング美術館に所蔵される海外古美術市場で売買された日本染織コレクションを調査した。この調査において、京都の古美術商であった野村正治郎がアメリカの西海岸で売った日本染織コレクションの主要なものの調査が完了した。また、ロンドン・ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館では、これまで行ってきた調査の不足分を補う調査を行った。その結果、同美術館に所蔵される仏教美術関連の日本染織はすべて調査し終えた。 以上の調査によって得られた調査データは、電子データ化して整理した。その研究成果については、順次論文や報告書の形で次年度中に公開する準備が進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も、近代日本(明治維新から第2次世界大戦前まで)に蒐集された日本内外の日本染織コレクションの調査を続行する。研究計画に基づき、次年度は、国内調査については、引き続き、女子美術大学美術館に所蔵される長尾美術館旧蔵の日本染織コレクションを調査する。長尾美術館旧蔵品については、本年度で調査完了を目標とする。また、新たに、松坂屋美術館に所蔵される日本染織コレクションについても調査を行う。海外調査については、ニューヨーク・メトロポリタン美術館に所蔵される野村正治郎関連の日本染織コレクション、ボストン美術館、ワシントン染織美術館に所蔵される日本染織コレクションを調査予定である。アメリカについては、在米日本染織コレクションに詳しい、ロサンゼルス・カウンティ美術館の染織部長・シャロン・サダコ・タケダ氏に情報の提供をおねがいする予定である。また、ヨーロッパに在る日本染織コレクションについても順次、調査を進めていく。次年度は、デン・ハーグ美術館を中心にオランダに所蔵される日本染織コレクションを調査する。オランダに所在する日本染織コレクションについては、ヨーロッパに収蔵される日本染織コレクションについて詳しい、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館で日本染織を研究するアンナ・ジャクソン部長に協力を要請し、共同調査を行う。 調査結果は、当初の研究計画通りに、順次電子データ化して整理し、その成果を論文や報告書として発表する予定である。
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Research Products
(2 results)