2017 Fiscal Year Annual Research Report
An Archaeological Study on the Origin and Economic History of the Kuril Ainu
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15H01899
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高瀬 克範 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (00347254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増田 隆一 北海道大学, 理学研究院, 教授 (80192748)
江田 真毅 北海道大学, 総合博物館, 講師 (60452546)
手塚 薫 北海学園大学, 人文学部, 教授 (40222145)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 千島列島 / カムチャツカ半島 / 千島アイヌ |
Outline of Annual Research Achievements |
マガダンに保管されている南カムチャツカ出土考古資料としては世界最大のコレクションであるジコヴァ・コレクションのカタログ作成を行うとともに,草食動物の骨を用いて年代測定を実施した。これにより,前年度までに行った骨の同定作業による成果とあわせて検討に必要な基礎的なデータを収集することができたため,動物骨に関する論文作成を進めた。本コレクションに含まれる土器については,これまで知られていなかった新たな類型が含まれているため,この種の土器に関する評価も公表した。プロジェクト1年目にカムチャツカ半島で実施した野外調査の成果のうち,竪穴住居をはじめとする遺構に関する基礎的情報の開示と建築技術や地域性に関する研究結果を公表した。同時に,この調査で得られた土器の年代と分布に関する論文の作成を進めた。プロジェクト2年目に実施した北千島における野外調査についてはすでに英語で概要を公表しているが,今年度はより豊富な写真をとともにロシア語での概略報告を行った。また,スウェーデンに保管されているベルグマン・コレクションのうち,千島出土資料(主に南千島出土)についての報告を刊行した。カムチャツカ出土分についての論文も査読を通過し,刊行を待っている状態である。このほか,ロシアの研究協力者と共同での北海道保管骨角器の比較研究や島嶼部との比較研究を目的とした内陸部での先史経済の調査,米国の研究協力者と共同での北太平洋先史時代の人口変動とその要因に関する学会報告,本州島における鉄器生産に関する研究,島嶼生物地理学の理論を応用した千島列島先史時代の解釈に関する研究成果の公表,北海道エサヌカ2遺跡の遺物再整理報告書刊行などの活動を行った。動物骨のDNA分析についても,分析結果のレポートを公表すべく準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロジェクト1・2年目のカムチャツカ半島および北千島(占守島)における野外調査が予定通り実施され,新たな資料が収集された。これと並行して,東京,札幌,ストックホルム,マガダン,ペトロパヴロフスク・カムチャツキー,ユジノサハリンスク,シアトルなど,世界各地に散在している関連資料の現地調査もほぼ予定通り実施できたことにより,千島アイヌに関する考古学的情報が組織的に収集されてきている。このほか,民族誌・文献史料の精査,イヌ・ヒグマ出土骨のDNA分析やアミノ酸を用いた骨の同定などもほぼ予定通り実施されており,プロジェクト4年目を迎えて活動内容の中心は徐々に分析結果のレポートや研究成果のまとめに移行しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに収集された動物骨の情報について,時期ごと,地域ごとに組合せを分析し,千島アイヌ経済の時空間変異やその前の時期(続縄文文化期,オホーツク文化期)との違いの有無を検討する。また,出土骨の三次元データを用いて,千島出土イヌの特徴,ラッコの体長復元などを実施するほか,文献史料の検討,アミノ酸を用いた未同定骨の同定なども継続して行っていく。このほか,これまで本格的な検討対象になっていなかった石器についても,黒曜石製剥片のフラクチャー・ウイング分析,非黒曜石製石器の石器使用痕分析を通して,石器製作技術の簡素化や石器の利用対象の変化の有無を確認する。 研究成果の発信作業として,ロシアに保管されているカムチャツカ出土資料のカタログと論文,千島アイヌのカムチャツカ半島での活動範囲の変化に関する論文,DNA分析結果のレポート公表などを予定している。
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Research Products
(15 results)