2018 Fiscal Year Annual Research Report
南限の古代窯須恵器の生産と流通‐考古学的手法と自然科学分析の補完的研究‐
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15H01902
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
中村 直子 鹿児島大学, 総合科学域共同学系, 教授 (00227919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 智和 鹿児島国際大学, 国際文化学部, 教授 (70244217)
新里 貴之 鹿児島大学, 総合科学域共同学系, 助教 (40325759)
鐘ヶ江 賢二 鹿児島国際大学, 公私立大学の部局等, 係長 (00389595)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 須恵器窯跡 / 古代 / 南九州 / 自然科学分析 / 生産と流通 / 国家領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 平成31年2月~3月に、須恵器窯跡としては南限に位置する南さつま市中岳山麓窯跡群荒平第2支群1号窯跡の第5次発掘調査を実施した。昨年度までの調査で、岩盤である砂岩層をくり抜いた地下式で直立型煙道を有し、焼成部床面は40度以上の傾斜角をもつ構造などが解明されていたが、今年度の調査によって、床面に設置された焼台の構造や、焚口付近から燃焼部床面下に土壙があり、最終焼成前にそれを埋めて床面としていた事など、窯構造の詳細が判明した。また、窯は傾斜面を利用して作られており、窯の前庭部は埋め土によって平坦面を形成している事などもわかり、地層や地形によって窯の選地がなされた可能性も出てきた。 2 中岳山麓窯跡群周辺の踏査も実施し、新たに1カ所の関連遺物の散布地を発見した。遺跡の範囲がさらに北側に広がる結果となった。 3 昨年度発掘調査でのサンプリング試料による鉱物学的分析をすすめた。須恵器に使用した粘土の組成や焼成温度について有効なデータが出されている。 4 昨年度までの発掘調査によって出土した遺物の整理作業をすすめた。 5 平成27年度にサンプリングした試料による熱ルミネッセンス分析と地磁気年代測定の結果を日本文化財科学会において発表した。また、発掘調査成果を含め、国際学会SEAAで中岳須恵器窯の特徴について発表を行った。 6 中岳山麓窯跡群の研究成果を一般向けに公開するため、発掘調査出土品を中心にミニ展示を実施した。南さつま市教育委員会との共催で、南さつま市歴史交流館金峰にて2月~3月に実施した。また、発掘期間中には金峰中学校1年生の郷土の歴史に関する授業に協力し、発掘調査の見学と中岳山麓窯跡群の踏査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主要な事業としては、荒平第2支群の発掘調査であったが、1号窯跡は天井部以外良好に残存しており、詳細な窯構造が解明できる資料となった。また、窯跡内部には、天井片や窯壁片、焼台、須恵器片など多くの遺物が残されており、天井が崩れてはいるものの、原位置がある程度推定できるものが多かった。これらを焼成温度や焼成回数の解明に向けた自然科学分析のためのサンプリングも実施できたため、焼成技術についての良好なデータを得る事ができると期待される。 また踏査の結果、新しい関連遺物の散布地も発見され、新たに窯跡群の範囲が広がる可能性が出てきた。 自然科学分析では、今年度より材料や焼成温度に関する鉱物学的分析として、ポーランドARCHEAの研究者が参加した。これまでのところ、炭素年代測定、熱ルミネッセンス分析、古地磁気分析、中性子放射化分析、数種類の鉱物学的分析、植物同定など、年代測定や材料、焼成技術に関する検討を複合的に実施している段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画としては、荒平第2支群発掘調査の出土遺物の整理作業を実施し、出土須恵器の編年的位置付けを行う。また、窯体片・焼台についても分類・整理し、発掘調査で得られた1号窯跡のデータをもとに、窯構造について考古学的に解明する。 出土須恵器や窯体片の自然科学分析結果とあわせて、生産技術について検討を行う。自然科学分析としては、熱ルミネッセンス法、地磁気分析、中性子放射化分析、鉱物学的分析、植物分析を複数実施しており、焼成温度や焼成回数、須恵器や窯体の材料、燃料の種類、など生産に関するものの他、消費地遺跡での中岳産須恵器の同定を実することによって、流通に関しても検討を行っている。なお、自然科学分析には、ドイツ・オーストリアなどのヨーロッパ研究者も参加している。 研究成果は国内外の学会発表の他、発掘調査報告を含めた研究成果報告書を刊行する。また、南さつま市を中心に企画展などを実施し、研究成果の一般向け公開に努める。
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Research Products
(6 results)