2016 Fiscal Year Annual Research Report
地方創生に資するモバイル型地域博物館システム構築と地域個性に基づく運用手法開発
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15H01907
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山下 裕作 熊本大学, 大学院社会文化科学研究科, 教授 (50414438)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 寛之 熊本大学, 文学部, 准教授 (00305179)
石本 敏也 聖徳大学, 文学部, 准教授 (00406745)
栗田 英治 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 主任研究員 (00414433)
福與 徳文 茨城大学, 農学部, 教授 (30414436)
重岡 徹 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 上級研究員 (40527024)
嶺田 拓也 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 上級研究員 (70360386)
芦田 敏文 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 主任研究員 (70414448)
三澤 純 熊本大学, 文学部, 准教授 (80304385)
八木 洋憲 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (80360387)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地方創生 / モバイル型地域博物館 / 民俗誌 / 地域農業経営情報 / 農村景観の保全 / 農村地域の生態・環境 / 住民参加型農村振興 / 地域資源の可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、全体計画のうち「VIMSの改良によるモバイル型地域博物館システムの構築」を中心に研究を推進した。研究の実施地域は①熊本県阿蘇地域、②熊本県天草地域、③熊本県水俣地域、③新潟県下越地域(十日町市他)、④茨城県常陸太田地域、⑤島根県石見東部地域であり、10名の研究分担者と、(株)イマジックデザイン、熊本県庁文化財担当者、(株)文化財保存活用研究所等による研究協力により遂行された。 まず農地管理地理情報システムであるVIMSの改良にあたり、地域資料の資源化を行い、展示コンテンツとして活用できる形でのシステム改良を目指した。コンテンツ化としては、①聞き取りによる民俗情報と、その地理的特性の関連の可視化 ②広域ランドスケープ(景観)情報の3Dモデルでの可視化 ③農業技術の精度と収量の可視化【以上、新潟班】 ④住民参加型環境点検ワークショップの地域資源情報の集積可視化【茨城班】 ⑤地震による被災文化財や、民俗芸能の360°静止画・動画での撮影 ⑥地震被災農地・埋め戻し保存が予定されている発掘中遺跡のドローンを用いた撮影による細密3Dモデルの作成 ⑥無人島に位置する(通常見ることが出来ない)文化資源を対象としたパノラマツアーの作成【熊本班】であり、これらをそもそもVIMSが有している農地管理機能・自治防災機能を損なうことがないよう検証しながら【島根班・熊本班】既存のVIMSシステムにコンテンツを載せながら、改良点を検討し、いまだβ版ではあるが、2月にMMGシステムとして新しく実験用システムを構築した。さらに全体計画の「1.地域資料の現況確認と収集」に関しても熊本地震の被災地である南阿蘇村・西原村において精力的に実施し、地域文化財を探索し、被災状況について記録し続けている。加えて「3.「村がら」の構成要素の解明」にもVIMS導入過程の分析により着手している【新潟班】。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年4月に発生した熊本地震は本研究プロジェクトに大きな影響を与えた。VIMSはそもそも自治防災機能を有しているため、阿蘇地域の被災状況確認に提供することとなったが、基本性能は有効であるものの、日常的に操作に慣れていなければ、非常時に対応出来ず、効果は限定的であった。VIMSが持つ自治防災機能・農地管理機能(島根県石見東部地域の「多面的機能支払い事業」への応用により機能の有効性と同課題が実証された)を十全に活かすためにも、住民参加型地域博物館機能を加え、日常的に使用される有益で魅力的なシステムとしての再構築が必要であることが改めて確認された。また地震の発生は、本研究の成果に対する需要を大きく高めることになり、地域資料の資源化(コンテンツ化)のため実施を予定した3Dモデルの作成は、農地の被災状況の確認のために応用され、災害査定や復興計画策定、工事に必要な、標高図・断面図の作成が短時間で可能であることを立証した。そして実際に創造的復興にむけての住民説明会の場でも複数回用いられ、住民理解の向上に寄与した。様々な副次的効果を生みながら、研究は進展し、比較的被害の少ない天草地方では、民俗芸能(ハイヤ総踊り)の360°動画の撮影、無人島に位置する古墳群では細密360°静止画の連続によるパノラマツアーの作成、その他多くの通常静止画・動画等を組み合わせた天草全島博物館をVIMS上に作成した。また水俣では古墳時代の墳墓住居遺構である北園上野遺跡を発掘中にドローンで撮影し、細密3Dモデルを作成。現在は埋め戻しされ、永遠に見ることが出来ない。そうした遺跡をリアルに展示閲覧できるシステム開発の最初の段階をクリアした。その他、新潟班も茨城班も28年度目標を達成しており、進捗はほぼ順調であると言える。ただ、熊本の研究代表者・協力者は自身も被災していることもあり、かなり疲弊している。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況は概ね良好であることから、基本的に研究計画書通り「VIMSの改良によるモバイル型地域博物館システムの構築」、「収集地域資料と新システムの構築過程における地域社会の動向分析による「村がら」(地域個性)構成要素の解明」について主に実施する。その一方で、本研究課題はGISを用い、そのベースが自治防災を目的としていることから、熊本地震の記録・地域復興とも密接な関わりを持ちながら進める。 具体的には、埋蔵文化財の展示コンテンツ開発を目途とした3Dモデル作成を、地震被害が甚大であった益城町の布田川断層露出部分で実施し、記録保存に貢献する。さらに、西原村や南阿蘇村等、被災地域の中高生を対象に、地域文化資源データを格納したMMGシステムを活用したワークショップを実験として実施する。本科研成果の社会還元と同時に、今後の技術開発課題を見いだし、MMGシステムを住民参加型活動にて運用可能なシステムに構築するためである。 さらに「村がら」研究においては、伝統的な「村制」研究・村落構造研究の視点を持ちながらも、少し離れ、地域住民・行政担当者等の地震・復興対応の動向、ワークショップの実施過程における地域住民の動向の観察から進める。そして、VIMSやMMGのシステム導入と有効活用に必要な地域社会資源要素を、地域社会が持つ課題と併せて具体的に見いだし、MMGシステム完成後の普及研究に繋げる。 他地区の研究班においても、住民参加型ワークショップへの応用実験を実施する。特に新潟班においては十日町市内、新発田市内で、それぞれワークショップ実験と通常の村落運営におけるMMG活用についての実験が予定されている。これまでも熊本県・新潟県・茨城県・島根県の各研究班が、現地での住民活動とともに、MMGの実用的開発を行い、地方創生にも具体的に貢献している。今年度はより一層研究の進捗と社会還元に努めていく。
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Research Products
(23 results)