2016 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカにおける文化遺産の継承と集団のアイデンティティ形成に関する人類学的研究
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15H01910
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
吉田 憲司 国立民族学博物館, 文化資源研究センター, 教授 (10192808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀井 哲也 中京大学, 現代社会学部, 教授 (60468238)
飯田 卓 国立民族学博物館, 先端人類科学研究部, 准教授 (30332191)
慶田 勝彦 熊本大学, 文学部, 教授 (10195620)
和崎 春日 中部大学, 国際関係学部, 教授 (40230940)
Oussouby Sacko 京都精華大学, 人文学部, 教授 (70340510)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 文化遺産 / アイデンティティ / 伝統 / アフリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
計画第2年度にあたる平成28年度においては、研究代表者・分担者・連携研究者計7名が、それぞれの担当地域に赴き、現地研究拠点機関・現地研究協力者と共同で、当該地域における文化遺産の現状と集団のアイデンティティ形成との関係についての現地調査を実施した。すなわち、南部アフリカについては、吉田憲司がザンビア、亀井哲也が南アフリカ、飯田卓がマダガスカル、東部アフリカについては慶田勝彦がケニア、西部アフリカについては、和崎春日がカメルーン、ウスビ・サコがマリ、そして連携研究者の阿久津昌三がガーナにおいて調査を行なった。その結果、ザンビア、マラウィ、モザンビークにまたがって居住する民族集団チェワの人びとの間で、伝統的仮面舞踊のユネスコの無形文化遺産登録を契機に、国境を越えたチェワという集団としてのアイデンティティが形成されてきていることが確認された。同様に、ケニアの集団ミジケンダにおいても、伝統的遺産の無形文化遺産登録をきっかけにして、集団の自己認識に変化のみられることが確認されている。これに対して、南アフリカやマダガスカルでは、国民国家の政策によって民族集団の位置づけに変化が生じ、そのことが文化遺産の動態に影響を与えていることが指摘された。一方、西アフリカのマリでは国内の紛争、カメルーンでは中国の経済進出、ガーナでは疾病の流行といった近年の動きによって、文化遺産に対する認識とそれに伴う集団の自己イメージに変化が生じていることも報告された。このように、研究の進行に伴い、文化遺産の継承に影響を与える様々な要因が明らかになってきている。今後とも、文化遺産に継承を阻害・促進する要因の把握に努めたい。なお、平成28年度は、ザンビアにおいて、文化遺産の継承における博物館の役割に焦点を当てた現地ワークショップを開催した。次年度は、ガーナにおいて、同様のワークショップの開催を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
年度当初に計画した、アフリカ諸地域での調査は、全て計画通り実施され、その結果、文化遺産に継承を阻害・促進する要因として、従来は想定していなかったような新たな知見が次々に明らかになってきている。また、過去30年以上にわたる協力関係を背景に、現地研究拠点機関との連携がきわめて順調に進み、本プロジェクトの現地拠点としての受入れのみならず、本プロジェクトと共同で当該国内の文化遺産の現状を調査し、情報の集積を行うまでの協働関係が構築できている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後とも、研究代表者・分担者・連携研究者がそれぞれの担当地域に赴き、現地研究拠点機関・現地研究協力者と共同で現地調査を実施する。あわせて、今後は、現地で入手した文化遺産に関する情報を、データベースに登録し、研究成果の国際的共有化を積極的に進めることとする。
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Research Products
(22 results)