2018 Fiscal Year Annual Research Report
Anthropological Research on Relationships between Cultural Heritage and Communal Identity in Africa
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15H01910
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
吉田 憲司 国立民族学博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 館長 (10192808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
慶田 勝彦 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (10195620)
飯田 卓 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 教授 (30332191)
和崎 春日 中部大学, 国際関係学部, 教授 (40230940)
亀井 哲也 中京大学, 現代社会学部, 教授 (60468238)
Oussouby Sacko 京都精華大学, 人文学部, 教授 (70340510)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 文化遺産 / アイデンティティ / 伝統 / アフリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度には、研究代表者・分担者が、それぞれの担当する地域に赴き、文化遺産を通じた集団のアイデンティティ形成についての実地調査を行なうとともに、とくにザンビアにおいては「文化遺産とコミュニティ」に関する現地シンポジウムを実施した。 研究代表者の吉田憲司は、ザンビアにおいて、チェワ社会、ンゴニ社会での文化遺産継承の動きを継続調査するともに、国立民族学博物館とザンビア国立博物館機構の間で学術協力協定を締結し、それを記念したシンポジウムのなかで、これまでの研究成果を発表して、今後の現地における研究の進展と文化遺産継承の振興を促した。 研究分担者の和崎春日はカメルーンを訪問し、バムン王国の王都フンバンにおける伝統の継承とヨーロッパ文化およびイスラーム文化の摂取過程について、バムン王宮博物館のガリツィン・ルンペット博士と共同調査を実施した。ウスビ・サコはマリにおいて、伝統的都市の建築遺産修復プロジェクトが地域コミュニティの文化伝承に如何に関与しているかについて、マリ国立博物館と共同調査を行なった。亀井哲也は南アフリカ共和国のンデベレ地域に赴き、参与観察を継続してきている野外博物館コドゥワナ文化村の活動を追跡して、南アフリカにおける多文化主義政策の動向が民族集団の文化の継承に大きな影響を及ぼしていることを確認した。また、飯田卓はマダガスカルのザフィマニリ地域を訪れ、治安の悪化によるセキュリティ向上の必要性から家屋様式の近代化が進んでいることを把握し、地域住民の伝統家屋への意識にも変化が生じていることを確認した。 一連の調査研究活動により、アフリカ各地における文化遺産を通じた集団のアイデンティティ形成のあり方を歴史的に追跡することが可能となってきた。その成果の上にたって、アフリカにおける文化遺産の創造的継承にむけて、現地コミュニティと共同で、新たな指針を提示する準備も整ってきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究代表者・研究分担者が本科研の採択以前から継続してきた長年にわたる研究の蓄積と現地研究拠点との研究ネットワークを活用することで、当初計画していたアフリカ諸地域における文化遺産継承と集団のアイデンティティ形成の「現状」を把握するだけでなく、その動きの史的展開を跡づけることが可能となった。このため、本研究の成果は、エスニシティ研究・文化遺産研究の深化に貢献するだけでなく、現地諸社会にとっても、「集団の文化遺産」の蓄積を可視化し、その遺産を次代に継承する礎を提供するものとなってきている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本研究計画の最終年度に当たる。研究代表者・研究分担者は、それぞれが担当する地域へ赴き、現地研究協力者とのあいだで、本研究計画の成果を総括するとともに、その成果の現地社会への還元について、実施もしくは将来の実現に向けた最終調整をおこなう。とくに、研究計画期間中一貫して、本研究課題に関連した現地ワークショップを開催してきたザンビアについては、コミュニティ・ミュージアムの建設を通じた文化遺産の継承と表象を巡る、地域住民も巻き込んだかたちの現地ワークショップを実施し、博物館を通じた文化遺産の継承とコミュニティ形成に関する研究とコミュニティ活動のモデルを提示する。また、アフリカの研究協力者を招聘した国際共同研究会の日本での開催や、欧米研究機関における共同研究を通じて、得られた知見の共有化と研究成果の総括をおこなう。なお、研究成果に関しては、欧文での公刊に向けて作業を進める。
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Research Products
(40 results)