2016 Fiscal Year Annual Research Report
法的本質論を踏まえた非営利団体の地位と役割及び団体訴訟に関する比較法的総合研究
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15H01913
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
亘理 格 中央大学, 法学部, 教授 (30125695)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大貫 裕之 中央大学, 法務研究科, 教授 (10169021)
北見 宏介 名城大学, 法学部, 准教授 (10455595)
小澤 久仁男 香川大学, 法学部, 准教授 (30584312)
田中 啓之 北海道大学, 法学研究科, 准教授 (60580397)
岸本 太樹 北海道大学, 法学研究科, 教授 (90326455)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非営利団体 / 団体訴訟 / 環境訴訟 / 消費者訴訟 / オーフス条約 / 権利概念 |
Outline of Annual Research Achievements |
アメリカの公共訴訟に造詣の深い研究者と環境権を提唱する民法研究者を招き国内研究会を開催するとともに、環境法と消費者法分野で活発な非営利団体活動と団体訴訟を繰り広げてきた国としてドイツとフランスを選び、非営利団体の参加権及び団体訴訟の法制度を幅広く把握するための海外調査を行った。海外調査では、ドイツやフランスの状況をヒアリング調査するだけではなく、科研メンバーが日本法の状況を報告し、これに対するコメントを聴取するという双方向的な方式を採用した。 以上により以下の点が明らかとなった。第1に、ドイツでは、自然保護分野を中心に団体訴訟が法制化される一方、他の分野では権利要件が障害となり団体訴訟は認められてこなかったが、オーフス条約が契機となって法改正が進むとともに、環境団体訴訟が活発化しつつある。フランスでは、消費者団体訴訟が法制化される一方、元々環境法や都市法を中心に行政団体訴訟が活発に行われており、オーフス条約は、それを更に強化し事前参加や環境情報へのアクセスを強化することに資していることが明らかとなった。 第2に、アメリカでは、コモンローとエクゥイティの区別の相対化を背景に、インジャンクションを多数人の救済のための公共訴訟として活用する運用が定着し、裁判と裁判執行の双方を包摂した裁判管轄権の下で救済法固有の法手段(remedy)を組み込んだ訴訟法を構築してきた。以上により、アメリカの民事訴訟法は、多様な公共訴訟の提起を許容する点で団体訴訟に親和的であることが明らかとなった。 第3に、我が国で環境団体訴訟を法制化しようとする場合、主観的な権利利益概念を残した団体訴訟とするか、純粋公益的な団体訴訟とするか、あるいは双方を組み合わせた複合的制度とするかが、まず以て問われることとなる。いずれの場合も、伝統的な司法、法律上の争訟、権利等の概念との関係を整理する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドイツ、フランス、アメリカにおける非営利団体の参加権その他の諸権利及び団体訴訟について、各国の一般的な法制度をほぼ把握することができた。特にドイツとフランスについては、双方向的なヒアリングを通して、正確且つ詳細な制度理解を得ることができた。しかし、消費者法や環境法分野における具体的な政策選択や紛争又は訴訟との関係で、各国における非営利団体の活動実態及び訴訟実態を把握するまでには至っていない。また、非営利団体と法人概念との関係等の基礎理論的な側面の再検討も不十分である。以上により、幾つか課題を残しながらも、前年度に比し非営利団体の制度と団体訴訟の面では大きく前進した点で、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ドイツとフランスにおける環境団体訴訟及び消費者団体訴訟について、具体的な紛争又は訴訟事件を参照しつつ検討を深化させるとともに、両国における伝統的な権利論や司法(裁判)観にも目を配り、訴訟法ドグマティークとの関係を掘り下げた検討を行う必要がある。以上のような研究を通して、伝統的な司法観及び権利概念に執着するが故に団体訴訟の独自の展開をなし得ていない我が国の訴訟法理論との間で、理論的にも立法論的にも緻密な比較法的検証が可能となることが期待できる。さらに、消費者団体や環境保護団体の政策立案への参加及び情報へのアクセスについて、比較法的な検討を前進させる。さらにアメリカとイギリスの非営利団体の法制度と団体訴訟について、主に国内研究者から知識の提供を受けるための研究会等を開催する。
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Research Products
(14 results)