2015 Fiscal Year Annual Research Report
企業統治と企業成長:変容する日本の企業統治の理解とその改革に向けて
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15H01958
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
宮島 英昭 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (60182028)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 一功 早稲田大学, 商学学術院(ファイナンス研究科・センター), 教授 (40338653)
蟻川 靖浩 早稲田大学, 商学学術院(ファイナンス研究科・センター), 准教授 (90308156)
小倉 義明 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (70423043)
広田 真一 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (40238415)
久保 克行 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (20323892)
大湾 秀雄 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (60433702)
齋藤 卓爾 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 准教授 (60454469)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 企業金融 / 企業統治 / 所有構造 / 取締役会構成 / M&A |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1990年代以降の日本企業の統治構造の変容とパフォーマンスの関係を包括的に解明する点にある。具体的な課題は、①株主のコミットメント、取締役会・報酬制度、従業員の関与を捉える新たな変数を開発し、日本企業の統治構造の特性を様式化し、その制度変化の要因を解明する。②リスクを取る経営および事業再組織化等について新たな指標を開発し、こうした企業行動に対する統治構造の影響を分析する。③統治構造がパフォーマンスを決定する面のみでなく、パフォーマンスが統治構造を規定する関係をも考慮して、両者のダイナミックな相互関係を解明する点にあった。 本年は、①に関連して、宮島が“Convergence or Emerging Diversity?”、大湾・宮島が「従業員持株会が生産性等に与える影響」、宮島・齋藤が「企業統治制度の変容と経営者の交代」、また、広田が“Investment Horizons and Price Indeterminacy in Financial Markets”を公表した。 ②に関連した成果としては、鈴木の“Estimating Private Benefits of Control from Stock Price Changes Around the Announcement of Tender Offer Bid (TOB)”があり、さらに、日本のTOB規制に関する論文をIFABS Corporate Finance Conference(オックスフォード大学)にて発表した。また、久保は“Corporate Governance and Employee”をコンファランス(北京)で報告した。 ③については、小倉が企業パフォーマンスの分布の国際比較をまとめた研究を、広田が世界の最大500社の収益性と持続性を解明した研究をパリのワークショップで報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、これまで早稲田大学に蓄積してきたデータの延長・拡充を図り、本研究課題実施のための基礎的なデータベースの構築を進めることができた。また、本資金によるアルバイトの雇用によって、幾つかの新たなデータ系列を構築した。例えば、ファクトセットのデ-タを利用して、機関投資家について最終的な保有主体を解明したこと、メインバンク関係について最新の時系列データを構築したことが、その成果である。さらに、本資金によりCORPORATE GOVERNANCE AND OWNERSHIP DATABASE (NRG Metrics)、Fortune Global 500等のデータを購入し、国際比較のデータの構築も進め、これらは本年度以降の本格的な分析の基礎となる。 研究手法の開発については、課題①に関連して、機関投資家、従業員持ち株会の特性把握、③に関連した企業統治とパフォーマンスの相互関係については初期の効果を得た。②のリスクをとる経営については、幾つかのトライアルを試みたが、通常利用されるボラティリティを超える指標を開発し、実証可能なモデルを構築する課題が残った。 研究成果の公表については、特に、課題①、③に関して多くの業績をDPの形で公刊できた。この一部は、宮島編『企業統治改革と日本の企業成長』(仮題・東洋経済新報社)として公刊予定である。また、英文のDPは本年度に適当な英文誌に投稿する。 その他、③についても、27年度中に研究計画の実質的な進展を見た。M&A/事業再組織化について、鈴木が中心となって共同研究を進め、その一部を公表した。また、久保が専門職層の雇用選択(外部雇用か内部養成か)について10数社のヒアリングを試み、今後の実証分析の展望を得た。さらに、蟻川は上場企業のみならず非上場企業の行動について分析を進め、実証分析に使用可能なデータベースの構築がほぼ終了した。
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Strategy for Future Research Activity |
データ面では、ひきつづき日本企業の統治制度に関する長期データ系列の拡充・整備を継続する一方、所有構造、CSR活動の国際比較のためのデータ構築にも取り組む。特に、今年度は、機関投資家(生命保険会社)のデータの利用可能性も追求する。 研究成果の発表としては、第1に、前年度の暫定的な結果を得た成果の公刊を目指す。宮島は研究協力者メイヤー、フランクスと開始したIPO、自己株消却と企業の所有構造の関係に関する論文について独自のデータに基づく分析を目指す。小倉、広田はKick-off Meeting of the INCAS Project(2015年6月)で報告した企業パフォーマンスの分布の国際比較に関する分析(小倉)、および、収益性と持続性の国際比較に関する研究(広田)を完成し、英文誌への投稿を目指す。久保は前年度に着手した雇用削減と企業統治の関係の分析の公刊を目指す。 第2に、27年度中に公表した成果の拡充を図る。宮島・大湾は従業員持ち株分析を拡充し、持株会と機関投資家の銘柄選択行動の関係の分析に着手する。宮島・齋藤は27年度の成果の英文化とともに、機関投資家が経営者の交代に影響を与える経路の分析を進める。鈴木は宮島・フランクスと共同して機関投資家の役割の国際比較に関する研究に着手する。 本研究の成果については、早稲田大学で定期的に行うセミナーやRIETI等の機関での報告を進める一方、JSPSの拠点形成事業の一環として本年9月に開催予定のワークショップで発表し、集中的に議論する。また、メンバーの成果は、同拠点形成事業のHPを通じて、DP段階でアクセスが可能となるよう工夫する。 また、宮島は本資金によるデータの構築、実証分析の成果を基礎に、日本の企業統治の進化に関する英語書籍の原稿執筆を進め、この英語書籍の中心部分を海外協力者の所属機関で可能な限り報告する機会を探る。
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Research Products
(32 results)