2015 Fiscal Year Annual Research Report
大都市部における格差拡大の進行過程とその社会的帰結に関する計量的研究
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15H01970
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
橋本 健二 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (40192695)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 香 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (10313355)
片瀬 一男 東北学院大学, 教養学部, 教授 (30161061)
武田 尚子 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (30339527)
浅川 達人 明治学院大学, 社会学部, 教授 (40270665)
石田 光規 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (60453495)
木村 好美 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (90336058)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 階級・階層 / 都市 / 社会移動 / 地域間移動 / 健康格差 / 階層意識 / 社会地区分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、階級恵・社会階層研究の方法と社会地区分析の方法を接合することにより、格差拡大の進行過程を階級・社会階層構造と都市空間構造の両面から解明することである。この目的のため、2015年度には、最新の地域メッシュデータによる社会地区分析を行うとともに、経済的格差の拡大と階層意識および健康格差に関する先行研究の検討を行い、以上をもとに平成28年度に実施する質問紙調査の基本設計と予備調査を行った。 まず、主に国勢調査の3次メッシュ統計のクラスター分析から、「都心型」「郊外ホワイトカラー都心通勤型」「郊外ホワイトカラー型」「子持ち特化型」「持ち家通勤型」など9つの地域類型を抽出した。また市区町村単位の統計から各地域の平均所得・高所得者比率・貧困層比率を推定する重回帰モデルを作成し、これに3次メッシュデータを当てはめることにより、各メッシュの所得水準と所得階層構成を推定した。また2000年と2010年の比較から、都心部の多くの地域で富裕化が進行する一方、周辺部では貧困化が進行するなど、分極化傾向が明確であることが確認された。 次に、これまでの階層意識研究と健康格差研究で用いられた質問紙を網羅的に検討し、現時点までに得られた知見をまとめるとともに新たに解明すべき課題について検討した。その結果、抑うつ傾向および首尾一貫感覚(SOC)と、地域類型および地域の社会資本との関係を解明する必要があること、また地域と階層意識の関係に注目して、居住地域の階層構造に対する評価や、評価の範囲を地域内に限定した階層帰属意識、貧困層・富裕層への帰属意識、民族排外主義を取り上げる必要があるという結論に達した。これらの検討をもとに、65の設問を含む質問紙を作成し、予備調査を実施した。その結果、新たに盛り込まれた設問の多くで一定の有効性が確認され、また改善の方向も明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は1年目であり、2年目に実施する質問紙調査に向けて、(1)調査地点選定のための社会地区分析を行うこと、(2)予備調査を実施し、本調査の質問紙設計を行なうこと、を主要な目標としていた。上記「研究実績の概要」に記したように、この2つはおおむね順調に進展している。 (1)に関しては、この10年間で各地域の経済格差が大幅に拡大し、分極化が予想以上に進行していることが判明した。さらに、富裕化傾向や貧困化傾向を顕著に示している地域を、3次メッシュ単位で特定することができた。これにより富裕化地域と貧困化地域を重点的に調査地点に加えるなど、調査地点の選定方針が明確になった。社会地区分析の成果の一部については、すでに論文として公表している。 (2)に関しては、ある地域の住民ネットワークの協力を得られたことから、予備調査としては多様な階層からサンプルを得ることができた。その結果、予備的分析は期待どおりの成果を上げ、健康格差と階層意識に関する項目を中心に、質問紙の設計を順調に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、平成28年度4-5月にに調査地点とサンプル数の確定など、質問紙調査の設計を完了する見込みで、すでにメッシュ単位・町丁目単位での調査地点の選定がほぼ終わり、また質問紙は最終的な調整の段階である。調査の全体設計と質問紙については、東京大学社会科学研究所による研究倫理審査を受ける予定である。 調査設計が確定したら、入札によって調査会社を選定する。選定業者との打ち合わせの後、11月に調査を実施し、12月から1月にコーディングとデータクリーニング、基礎的な集計・分析作業を進める予定である。質問紙回収後の作業については、早稲田大学および東京大学の大学院生の研究協力者が確保できる見込みとなっている。平成28年度の研究経費は、分析にたえる有効回収数を確保するため、約9割を調査費用に充てる。このため旅費、資料収集とデータ作成作業のための謝金が不足する可能性が高い。このため早稲田大学人間総合研究センターからの研究支援を申請し、すでに支援対象として採択が決定している。
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Research Products
(12 results)