2015 Fiscal Year Annual Research Report
音楽科教育は社会性を育むー音楽教育学、行動内分泌・遺伝学、脳機能イメージング研究
Project/Area Number |
15H01991
|
Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
福井 一 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (10199185)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高須 一 玉川大学, 芸術学部, 教授 (10236218)
小川 容子 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (20283963)
森下 修次 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (80323947)
高岸 治人 玉川大学, 付置研究所, 助教 (90709370)
豊島 久美子 大阪樟蔭女子大学, 公私立大学の部局等, 講師 (00565450)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 音楽教育 / 社会性 / 共感性 / 利他性 / 脳画像 / 内分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、音楽教育学、行動内分泌学、行動遺伝学、脳機能イメージングの手法を用い、小・中学生を対象に、音楽(聴取)が脳を賦活(活性化)し、社会行動に関わる生体化学物質を調整することで、ヒトの共感性や利他性に影響を与え社会性を高めることを検証する。そして、その成果を音楽科教育の意義の確立や医療・福祉等関連分野への応用をはかるものである。 27年度は、28年度の小・中学生を対象にした本実験に向けた準備を行った。具体的には、大学生を対象に、被験者が選んだ①好きな音楽 ②嫌いな音楽 および③沈黙(コントロール)を条件にして利他性の変化を調べるため、以下の測定を行った。 ①経済ゲーム:独裁者ゲーム、 ②生化学物質:ステロイド・ホルモン(コルチゾル:C、テストステロン:T、エストラジオール:E)およびオキシトシン:OXT、③脳機能イメージング:fMRI、④調査・心理テスト:音楽行動調査(嗜好や経験)、主要5因子性格検査(一般用):Big Five personality inventory (Big Five)等。 その結果、独裁者ゲームでは女性のみ、好きな音楽で利他性が上昇し、嫌いな音楽で低下した。生化学物質の分析では、男性に有意差がみられなかったものの、女性では好きな音楽でE値が増加し、嫌いな音楽で減少するという結果が得られた。MRI実験では、嫌いな音楽を聴いているときに葛藤や痛みなどに関連する前帯状皮質の活動が見られた。 この結果は、5月に開催される日本音楽知覚認知学会で発表される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実施計画に従い、打ち合わせ会議および研究会を五回開催した。その間、研究代表者、研究分担者が所属するすべての大学で倫理委員会の審査・承認を得、具体的な実験準備を行った。27年度の主たる計画である、大学生を対象にした予備実験を実施した。その過程で、問題や修正すべき事項が明らかになり、本実験にむけて、実施計画の改善を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在は、本実験実施のため準備作業を行っている。音楽実験に使用する機材も準備を完了しており、被験者(小学生~中学生40名)を募集するため、ホームページを立ち上げる準備を行っている。また、スクリーニング(被験者選出)を行うための、各種テスト類も準備済みで、それらの結果をもとに最適な被験者集団を構成する予定である。実験は玉川大学および周辺の小・中学校で実施する予定で、実施校については、教育委員会の理解を得つつ候補を選定中である。
|
Research Products
(1 results)