2015 Fiscal Year Annual Research Report
二次元半導体ナノ結晶を用いた光エネルギー変換材料の創製
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15H01993
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊田 進太郎 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70404324)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | pn接合 / 光触媒 / ナノシート |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は0.7nmのn型-酸化チタンナノシートと0.3nmのp型-酸化ニッケルナノシートを張り合わせた厚さ1.0nmのナノシートpn接合の作製と作製した極薄のpn接合体が光エネルギー変換素子として機能するか実証することを目的とした。 pn接合の作製に関しては、予定通り0.7nmのn型-酸化チタンナノシートと0.3nmのp型-酸化ニッケルナノシートの作製は達成され、それらを接合した酸化チタン/酸化ニッケルナノシートからなるpn接合体が得られた。接合の厚さが1.0nm程度になっているかどうかの評価は原子間力顕微鏡を用いて評価し、約1.5nm程度の厚さであることが分かった。理論的な厚さ1.0nmよりも厚い結果となったが、これは表面吸着水の影響であり、目的とする極薄のpn接合体が作製できたことを確認した。 次に作成した極薄のpn接合体が光エネルギー変換素子として機能するかどうかの実証は光堆積反応を用いて行った。pn接合が形成された場合、光励起した電子と正孔は接合部に生じた電位勾配を駆動力として電子はn型半導体側へ、正孔はp型半導体側へ移動する。つまり、作製したpn接合が光エネルギー変換素子として機能する場合、光酸化還元サイトが空間的に明確に分かれる。光還元サイトと光酸化サイトの確認はAg+イオンの還元に伴うAgメタルの堆積箇所と、Mn2+イオンの酸化に伴うMnOxの堆積箇所をオージェ電子分光法により確認した。その結果、AgとMnOxの堆積箇所が異なることが分かった。しかしながら、堆積箇所がpn接合のどこであるかの判断を下すためには測定データの質が不十分であり、次年度に引き続き実施する予定である。接合箇所に電位勾配が形成しているかどうかについては、ケルビンフォース顕微鏡により評価し、接合箇所と未接合箇所で明確な電位勾配が形成されていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に目標としていた0.7nmのn型-酸化チタンナノシートと0.3nmのp型-酸化ニッケルナノシートを張り合わせた厚さ1.0nmのナノシートpn接合の作製に成功し、また、作製した極薄のpn接合体が光エネルギー変換素子として機能するために必要な接合間の電位勾配の形成が確認できたため。ただし、光反応サイトの観察にまだ曖昧な点がある点を考慮すると、計画としては90%程度達成と判断したため、区分としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画は以下のように実施する予定である。 Rh-doped TaO3ナノシートを作製した後、Rhドーパントの直接観察を実施し、直接観察により得られた具体的な構造を元に光触媒的水素生成がどのような反応経路で起こっているかをDFT計算により予想し、実験データと比較しながら、光触媒的水分解の反応経路をより明確にするこことを目指す予定である。また、ナノシートpn接合表面の反応サイトの観察も引き続き実施する予定である。 具体的には、ドーパントの直接観察は透過電子顕微鏡を用いて実施する。Rh(Z=45)とTa(Z=73)は原子番号が離れているため、高角度散乱暗視野(走査透過電子顕微鏡)法を用いて像のコントラストにより区別できる。 次に、ドーパントの直接観察によって得られたドープ環境を元に計算する構造を決定し、反応経路や障壁はNudged Elastic Band (NEB)法を用いて実施する。この手法は化学反応における遷移状態を探し出すための手法であり、化学反応の初期構造と最終構造を入力することにより、原系と生成系の間の反応経路を探索し、遷移状態と活性化エネルギーを求めることができると考えている。また、計算で得られた表面での結合の変化を実験的に赤外分光法等で確認しながら、光触媒的水分解の反応機構をより明瞭にすること努める。
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Research Products
(13 results)