2017 Fiscal Year Annual Research Report
光格子中の冷却Sr原子を用いたmHz級レーザーの開発
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15H02027
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鳥井 寿夫 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (40306535)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ストロンチウム / レーザー冷却 / レーザー周波数安定化 / 超微細構造定数 / ホローカソードランプ |
Outline of Annual Research Achievements |
Sr原子の準安定状態5s5p3P2を用いたレーザー冷却(サブドップラー冷却)実現に向けて、特注のホローカソードランプ(Ne:0.5Torr+Xe:0.5Torr)による5s5p3P2-5s5d3D3遷移(496nm)の精密分光を行った。その結果、これまで正確には知られていなかった87Sr(フェルミオン):5s5d3D3準位の超微細構造の磁気双極子結合定数をA=-156.9(3)MHz、電気四重極結合定数をB=0(30)MHzと決定した(Applied Optics vol.57,p1450(2018)))。この結果により、光格子時計に用いられる87Srの準安定状態を用いたレーザー冷却に必要なレーザー周波数を正確に予測することができるようになった。 これまで、広いチューナビリティをもつレーザー周波数安定化法として、原子気体にプローブ光方向に磁場を加えるDABLL(Dichroic Atomic Vapor Laser Lock)が知られていたが、原子の吸収(複素電気感受率の虚部)を信号の起源としているため、周波数応答が遅いという欠点があった。これに対し、磁場をプローブ光と垂直に加えると、原子の屈折率(複素電気感受率の実部)を信号の起源とすることができ、この手法(BABLL: Birefringent Atomic Vapor Laser Lock)を用いれば、DABLLより広い帯域幅でレーザー周波数安定化が行えることをRb原子セルを用いた予備実験で明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
87Srの準安定状態5s5p3P2を用いたレーザー冷却実現のためには、5s5d3D3準位の超微細構造定数の精密測定は必ずしも必要なものでなかった。しかし、過去に決定的な報告例がなかったため、予定を変更して実験装置を改良し、超微細構造定数の精密測定をおこなった。また、この結果を論文にまとめるにあたり、不確かさの見積もりに予想以上に時間がかかってしまった。 当初の予定では、平成29年度中に461nm遷移および496nm遷移を用いたレーザー冷却のための原子源および超高真空装置を立ち上げる予定であったが、上記の予定変更により、未だ着手できていない。しかしながら、平成29年度に原理検証実験を行った簡便なレーザー周波数安定化法(BABLL: Birefringent Atomic Vapor Laser Lock)によって、光学系の簡便化が可能となるので、30年度中に後れを取り戻せると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
461nm遷移および496nm遷移を用いたレーザー冷却のための簡便な超高真空装置を立ち上げる。当初の予定であった「原子オーブン→2次元磁気光学トラップ→3次元磁気光学トラップ」というスキームを取りやめ、「原子オーブン→1次元光モラセス(低速原子の選択的偏向)→3次元磁気光学トラップ」を採用する。461nm遷移および496nm遷移のためのレーザー光源として、赤外半導体テーパーレーザー(2W)および導波路型周期反転LiNbO3を用い、周波数安定化には、ホローカソードランプによる簡便なBABLL(Birefringent Atomic Vapor Laser Lock)を採用する。496nm遷移を用いたレーザー冷却は世界で初めての試みであり、当初期待していたドップラー限界以下の冷却(偏光勾配冷却)が働いているか、飛行時間法などを用いて検証する。
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Research Products
(2 results)