2016 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロ固体フォトニクスによる次世代レーザー点火・燃焼計測
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15H02030
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
平等 拓範 分子科学研究所, 分子制御レーザー開発研究センター, 准教授 (50216595)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤松 史光 大阪大学, 工学研究科, 教授 (10231812)
林 潤 大阪大学, 工学研究科, 講師 (70550151)
石月 秀貴 分子科学研究所, 分子制御レーザー開発研究センター, 助教 (90390674)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 量子エレクトロニクス / エネルギー効率化 / レーザー点火 / 燃焼計測 / 高性能レーザー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,定容容器内に封入された空気および可燃性混合気に対する二時刻多重ブレイクダウンによるプラズマ形成 過程観察試験および点火試験を行った.昨年度から引き続き多時刻ブレイクダウンの観察手法の開発を行い,フォトマルチプライヤを用いたブレイクダウンからの発光強度の空間分布・時系列計測手法を構築した. また,レーザー誘起ブレイクダウン分光法(Laser Induced Breakdown Spectroscopy: LIBS)用マイクロチップレーザーを用いたLIBS試験を行った.結果として,ブレイクダウンの発光輝度はマイクロチップレーザー(パルスレーザー)の励起用ポンプレーザーの波長が吸収線と異なる場合には,LIBS信号に励起レーザーの波長が重畳して現れることが明らかとなった.さらに,その強度はLIBSの信号強度と同程度であることが示された. なお,リコーに,分子研で開発のジャイアントパルス・マイクロチップレーザー(GP-MCL)の技術移転を行う事で,大阪大学で必要となるLIBSに適したGP-MCLの実用化と応用展開を図った.一方.分子研では広帯域中赤外光燃焼ガス評価に有用な光源開発を継続して行った.特に平成27年度は,ジャイアントパルス・マイクロチップレーザー(GP-MCL)単体では出力不足だったことから,平成28年度は,レーザーアンプを増設することでパワーアップを図った.さらに,LIBSでは,可視域や紫外域での波長励起も重要とのことから,可能性を広げるため新たに水晶を用いた可視・紫外域での波長変換法についても検討を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,定容容器内に封入された空気および可燃性混合気に対する二時刻多重ブレイクダウンによるプラズマ形成過程の観察試験および点火試験を行った.昨年度から引き続き多時刻ブレイクダウンの観察手法の開発を行い,フォトマルチプライヤを用いたブレイクダウンからの発光強度の空間分布・時系列計測手法を構築した. また,ジャイアントパルス・マイクロチップレーザー(GP-MCL)を用いたLIBS試験を行った.結果として,ブレイクダウンの発光輝度はYAG結晶に吸収されなかった励起レーザーが,プラズマによって散乱され,LIBS信号に重畳して現れることが明らかとなった.この結果は,LIBS装置の高度化に対する重要な知見となる. 一方,リコーでは分子研においてエンジン点火用に開発のGP-MCLの技術を導入し,LIBSに適したレーザーとして大阪大学に供給した.一方,分子研ではマイクロチップによるレーザーアンプを構築,増設することでGP-MCLのパワー増強を図った.波長1064nmの基本はエネルギー6.1mJ,パルス幅は480psから590psとなった.次にPPMgLNにより中赤外光への波長変換を図った.なお,ここでは1560nmに着目し,選別したところ,エネルギー1mJ,パルス幅390psを得た.尖頭値は2.6MWに達し,まさにジャイアントパルスの中赤外光を発生できた. また,水晶を0.05mmまで薄くし結晶軸を交互に配置するQPM構造による高調波発生を検証した.水晶は光損傷に強く,吸湿性なども無く,透明域が波長150nmに及ぶため真空紫外域に至る波長変換も望めるために可視,紫外域での重要な波長変換素子となり得る.ただれまでは波長変換素子としては余り評価されなかった.しかし,QPM構造として,高輝度GP-MCL励起にする事で,14.9kWにも至る第二高調波発生に成功した.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成29年度は,これまでに構築してきたブレイクダウン計測,燃焼計測が可能な定容容器を用いて燃焼試験を行う.燃焼試験に用いる気体はこれまでに結果を得ている,メタン-空気予混合気とする.この燃焼試験では,平成28年度までに開発の指針を得たレーザー発振器と計測用ファイバが一体となったLIBS用マイクロチップレーザーを用いる.LIBS用マイクロチップレーザーのパルス数,パルス間隔,各パルスのエネルギー密度を変更し,希薄条件,高圧条件における点火確率を検討する.同時にLIBS計測によって燃焼改善効果の物理的な要因を明らかにする. また,パルス幅がLIBSに与える影響につき,圧力依存性も含めて評価を行う.さらには,構築した中赤外光によるガス分光や,可視など短波長域でのLIBSも試みたい.
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Research Products
(30 results)