2016 Fiscal Year Annual Research Report
すばるHSCとSDSSで探る宇宙論的スケールの物質循環
Project/Area Number |
15H02064
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大内 正己 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (40595716)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 正夫 筑波大学, 計算科学研究センター, 准教授 (10338585)
鈴木 尚孝 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任助教 (20722804)
梅村 雅之 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (70183754)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 光赤外線天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
干渉膜をフィルター基板に蒸着することにより、すばる望遠鏡大型広視野カメラ用狭帯域フィルター(一式)を完成させた。これらの狭帯域フィルターは基本的に要求仕様を満たしているものの、1つの狭帯域フィルターにおいて、狭帯域フィルター中心から265mm外側では、中心波長が要求される仕様よりも僅かに(0.08-0.36nm)ずれてしまったことが判明した。しかしながら、精度測定をしたのは室温であり、実際の仕様環境が摂氏0度程度であることを考えると相違が0.04-0.32nmに減る上、この相違であれば要求される赤方偏移決定精度の悪化も許容範囲ということがシミュレーションにより明らかになった。また、これと同時にHSC SSPプログラムの枠内で、本研究で用いる第一の狭帯域フィルター観測が8月下旬に行われ、現在データを解析中である。 一方で、平成27年度から続けてきたSDSSとすばる望遠鏡データを用いた準備研究がまとまり、ApJ誌に出版された(Mukae et al. 2017)。これに加えて、COSMOS領域をはじめとした探査領域のz~2 LAEの性質を調べた。まず、Lya等価幅が200-400Aを持つLAEのデータを調べ、その性質を理論モデルと比較したところ、これらはHIガスが少なく、若い星形成(<20Myr)をしており、金属量が非常に小さい(太陽金属量の2%程度)ことが示唆された(Hashimoto et al. 2016)。これらは、宇宙大規模構造から流入したガスのインフローの影響で若い星形成が起こったと考えられる。さらに、LAEを構成する星間物質を分光データを数値計算モデルと比較したところ、LAEは金属量が小さい上に電離パラメターが同時代の他銀河と比べても大きいことが分かり、小さい金属量および若い星形成の描像を裏付ける形となった(Kojima et al. 2017)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
作成された狭帯域フィルターは基本的に要求仕様を満たしている。1つの狭帯域フィルターは中心波長が仕様よりも僅かにずれているのだが、要求される赤方偏移決定精度の悪化も許容範囲であることが分かった。これも含めて、今後の計画には支障はない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度作成された狭帯域フィルターは現在、国立天文台ハワイ観測所で観測の準備を行っている。これを用いた観測を今後は行う予定である。さらにこれまで続けてきたSDSSとすばる望遠鏡データを用いた研究を継続し、LAEを用いた大規模構造と銀河形成の関係を明らかにしていく予定である。特に、本研究を進める中でカリフォルニア大学サンタクルーズ校のK.G. Lee氏の協力が得られるようになり、同じターゲットフィールドで我々が持っている銀河データと彼らが持っている、高空間分解されたHIガス分布データ(Lee et al. 2014)を組み合わせて、SDSSデータだけでは十分な統計が得られない小さいスケールの銀河と銀河間物質の観測情報も加えて、より精度の高い結果を目指した研究へと進展している。
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Research Products
(5 results)