2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H02070
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
粟木 久光 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (30252414)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺島 雄一 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (20392813)
松本 浩典 名古屋大学, 現象解析研究センター, 准教授 (90311365)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | X線望遠鏡 / 硬X線 / 活動銀河核 |
Outline of Annual Research Achievements |
観測的研究:「ASTRO-H」衛星が観測したデータを解析するためには観測装置の応答関数が必要となる。我々は、xrtraytraceと呼ばれるソフトを用いて硬X線望遠鏡(HXT)の応答関数を製作し、ASTRO-Hチームに提供した。このソフトはHXTの設計値や反射率などのHXTを記述する各種パラメータを元に入射X線の光線追跡を行い焦点位置でのX線像をシミュレーションするものである。応答関数製作にあたり、放射光施設SPring-8にて取得した地上試験データを再現するようにパラメータの値を調整している。また、活動銀河核(AGN)からのX線スペクトルを評価する解析ツールとして、トーラス形状に分布した低温物質によるX線反射モデルを整備し、e-torusとして公開した。反射体が1万度~10万度の電子温度を持つ場合について、コンプトン散乱した鉄輝線形状の電子温度依存性を調査し、その依存性を示した。この他にも、隠されたAGN等に関する研究を行い論文として発表した。 望遠鏡開発:高形状精度CFRP基板製作の取り組みとして、熱膨張率がほぼ0のスーパーインバー製のCFRP成形型を導入し、成形型の熱変形を抑制した。これにより成形品の形状誤差(rms)は2.9ミクロン(7サンプルの平均値)となり、従来よりも良品の出る割合が増加した。名古屋大学にて、この基板に円筒ガラスや薄板ガラスを用いたレプリカ法で反射面を成膜し、成膜後の可視光による結像性能50~60” (HPD)を得た。これと並行して、ピエゾアクチェータを用いた位置調整機構の開発に着手し、サブミクロンの精度でCFRP基板の位置制御が可能であることを示した。CFRP平板を使った位置調整機構の試作機を作成し課題を抽出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
観測的研究ではASTRO-H衛星による解析と解析ツールの整備が主な研究計画であった。ASTRO-H衛星の解析に関しては、解析用計算機を導入し解析環境を整備するとともに、地上データに基づいたHXT初期応答関数の提供を行った。AGNの解析ツールに関しては、NASA/GSFCのweb site ”http://heasarc.gsfc.nasa.gov/docs/xanadu/xspec/models/etorus.html”からe-torusモデルが公開され、世界中の研究者が利用可能となった。コンプトンショルダーと呼ばれる鉄輝線構造についても、電子温度と鉄輝線の構造の関係を調査し、その関係を示した。今後は、公開を視野に入れて、我々の調査結果の妥当性を評価する予定である。 望遠鏡開発では、高精度基板の反射面形成法の確立と反射鏡基板位置決め法の確立を平成27年度からスタートさせる計画であった。高い形状精度を持った反射基板を生産するためにインバー製金型を導入するとともに、反射鏡基板成形条件の最適化を行い、良品の生産率を向上させた。成形品の性能を評価するための可視平行光源設備も年度末に立ち上がり、簡易的な評価が可能となっている。名古屋大学では、薄板ガラスを用いたレプリカ法など、CFRP基板の形状を崩さずに簡便に成膜できる方法の開発が始まり、改良が進められている。位置決め法では、ピエゾアクチェータ(ストローク25mm, 最小移動量0.1ミクロン以下)をマニュピュレータとし、測定系としてレーザー顕微鏡(分解能0.01ミクロン)を用いた位置調整試作機を制作した。 隠されたAGNについての研究等の観測結果も含め、7編の論文(査読有6、査読無1)として発表するとともに、国際研究会や国内の学会等で報告を行った。 以上の進捗状況から、年次計画通りに概ね進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ASTRO-H衛星は異常事態発生後、衛星復旧作業を続けたが、衛星の運用を断念せざるを得ない状況となった。しかし、衛星搭載機器の初期機能確認フェーズ中に幾つかの天体を観測しており、そのデータを使った搭載機器の正常動作確認、ならびに、観測データを使った科学成果の創出は今後のために重要である。そこで、正常動作の確認も兼ねて軌道上でのHXTの応答関数を作成するとともに、ASTRO-Hユーザーに向けてその応答関数を提供する。また、観測した天体に対してデータ解析を実施し、ASTRO-Hの特長を生かした科学成果を発表する予定である。ASTRO-Hを使って実施できなくなった科学テーマに関しては、NuSTARや他の衛星を使って実現することを目指す。また、我々が調査した電子温度によるコンプトンショルダーへの影響を検証するために、数万度の電子温度の観測例として報告があるWatanabe et al.の結果と比較することを考えている。この検証結果を踏まえて、コンプトンショルダーを含んだ鉄輝線形状を再現するモデルを整備し、公開する。 望遠鏡基板に関しては、基板製作に必要な要素技術(プリントスルー対策、膨潤対策など)開発がほぼ終了しており、次年度以降はこれらの技術を取り入れた反射鏡基板を制作する。可視評価システムで良品と判断したものを名古屋に供給し、反射面の成膜法についての開発を引き続き進める。多層膜成膜により発生する内部応力の検討やレプリカ条件の検討などを実施する予定である。位置決め法に関してはCFRP平板を用いた位置決め機構の開発を引き続き行い、その後ここで得た知見をもとに、本研究の目的である1/4周基板を用いた位置決め機構の開発に移行する。
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Remarks |
愛媛新聞 2016年1月1日号にX線天文衛星「ASTRO-H」搭載硬X線望遠鏡開発に関する記事が掲載された。
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Research Products
(20 results)
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[Journal Article] Studies of Print-through and Reflectivity of X-ray Mirrors using Thin Carbon-Fiber-Reinforced Plastic2016
Author(s)
S. Sugita, H. Awaki, K. Yoshioka, K. Ogi, H. Kunieda, H. Matsumoto, T. Miyazawa, I. Mitsuishi, T. Iwase, S. Saji, S., Tachibana, M. Maejima, S. Yoshikawa, M. Shima, T. Ishikawa, T. Hamada, N. Ishida, H. Akiyama, K. Kishimoto, S. Utsunomiya, T. Kamiya, K. Uesugi, & Y. Suzuki
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Journal Title
Journal of Astronomical Telescopes, Instruments, and Systems
Volume: 2
Pages: 014002(8pp)
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] The nature of the torus in the heavily obscured AGN Markarian 3: an X-ray study2016
Author(s)
M. Guainazzi, G. Risaliti, H. Awaki, P. Arevalo, F.E. Bauer, S. Bianchi, S.E. Boggs, W.N. Brandt, M. Brightman, F.E. Christensen, W.W. Craig, K. Forster, C.J. Hailey, F. Harrison, M. Koss, A. Longinotti, C. Markwardt, A. Marinucci, G. Matt, C.S. Reynolds, C. Ricci, D. Stern, J. Svoboda, D. Walton, W. Zhang
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Journal Title
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society Main Journal
Volume: accepted
Pages: 17pp
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] [OIII]λ5007 and X-ray Properties of a Complete Sample of Hard X-ray Selected AGNs in the Local Universe2015
Author(s)
Y. Ueda, Y. Hashimoto, K. Ichikawa, Y. Ishino, A. Y. Kniazev, P. Vaisanen, C. Ricci, S. Berney, P. Gandhi, M. Koss, R. Mushotzky, Y. Terashima, B. Trakhtenbrot, & M. Crenshaw
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 815
Pages: 1 (14pp)
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Development of an x-ray telescope using the carbon fiber reinforced plastic (CFRP)2015
Author(s)
H. Matsumoto, T. Iwase, M. Maejima, H. Awaki, H. Kunieda, N. Ishida, S. Sugita, T. Miyazawa, N. Shima,I. Mitsuishi, & Y. Tawara
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Journal Title
Proceedings of the SPIE
Volume: 9603
Pages: 96030Y (7 pp)
DOI
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[Presentation] ASTRO-H衛星搭載X線望遠鏡について2016
Author(s)
松本浩典, 粟木久光, 國枝秀世, 石田 学, Peter Serlemitso, 岡島 崇, 田原 譲, 三石郁之, 宮澤拓也, 石橋和紀, 田村啓輔, 林多佳由, 古澤彰浩, 幅 良統, 前田良知, 飯塚 亮, 山内茂雄, 他ASTRO-H HXT&SXTチーム
Organizer
日本物理学会第71回年次大会
Place of Presentation
東北学院大学(宮崎県・仙台市)
Year and Date
2016-03-19 – 2016-03-22
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[Presentation] Extremely high-velocity inflow of SiO onto the radio galaxy NGC 10522016
Author(s)
亀野誠二, Impellizzeri, V., Espada, D., 澤田-佐藤聡子, 中井直正, 菅井 肇, 寺島雄一, 河野孝太郎, Lee Minju
Organizer
日本天文学会 2016 年春季年会
Place of Presentation
首都大学東京(東京都・八王子市)
Year and Date
2016-03-14 – 2016-03-17
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[Presentation] NGHXTで狙うブラックホールのサイエンス (Survey of Missing Black Holes with NGHXT)2016
Author(s)
上田佳宏, 信川正順, 寺島雄一, 久保田あや, 森 浩二, 鶴剛, 中澤知洋, 粟木久光, 高橋忠幸, 井上 一, NGHXTチーム
Organizer
第16回宇宙科学シンポジウム
Place of Presentation
宇宙科学研究所(神奈川県・相模原市)
Year and Date
2016-01-06 – 2016-01-07
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[Presentation] 次世代X線望遠鏡のための CFRP ミラーフォイルの開発 IV2015
Author(s)
杉田聡司, 粟木久光, 吉岡賢哉, 横田 翼, 黄木景二, 松本浩典, 宮澤拓也, 前島将人, 島 直究, 國枝秀世, 石川隆史, 浜田高嘉, 石田直樹, 秋山浩庸, 岸本和昭, 宇都宮真, 神谷友祐
Organizer
日本天文学会2015年秋季年会
Place of Presentation
甲南大学(兵庫県・神戸市)
Year and Date
2015-09-09 – 2015-09-11
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[Presentation] Development of an x-ray telescope using the carbon fiber reinforced plastic (CFRP)2015
Author(s)
H. Matsumoto, T. Iwase, M. Maejima, H. Awaki, H. Kunieda, N. Ishida, S. Sugita, T. Miyazawa, N. Shima,I. Mitsuishi, & Y. Tawara
Organizer
SPIE
Place of Presentation
San Diego Convention Center(San Diego・USA)
Year and Date
2015-08-09 – 2015-08-13
Int'l Joint Research
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