2017 Fiscal Year Annual Research Report
大規模サーベイ観測による時間軸天文学のフロンティアの開拓
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15H02075
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
田中 雅臣 国立天文台, 理論研究部, 助教 (70586429)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨永 望 甲南大学, 理工学部, 教授 (00550279)
諸隈 智貴 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (10594674)
安田 直樹 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (80333277)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 光赤外線天文学 / 時間軸天文学 / 突発天体 / 超新星爆発 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度11月から平成29年度5月まで、すばる望遠鏡HSC戦略枠観測の一環として、HSCを用いた突発天体サーベイ観測を行い、各月の新月付近に可視光g,r,i,z,yバンドの画像データを数日おきに繰り返し取得した。また、リアルタイムに発見された突発天体の分光観測を、すばる望遠鏡、Gemini望遠鏡などを用いて実施した。さらに、突発天体の母銀河の多天体分光観測を、オーストラリア3.9m望遠鏡を用いて実施している。また、もともとの計画に加えて、平成29年度12月よりすばる望遠鏡インテンシブ枠を使ってHSCの画像データを追加で取得しており、よりユニークな突発天体のデータが得られつつある。 平成29年度5月にサーベイ観測を終了した後、網羅的なデータの再解析を行い、再度突発天体・変動天体のサンプルを構築を行なった。その結果、合計で約1800天体の超新星候補天体を同定することができた。これは、これまでの突発天体サーベイで得られた中では最大規模のサンプルである。このデータを用いて、赤方偏移z = 0.3のII型超新星を使った宇宙論パラメータ推定に関して論文を出版した。また、赤方偏移z=2付近の超高輝度超新星の発見と、分光追観測に関してそれぞれ論文を投稿中である。主目的である短時間突発天体の研究に関しては、新しく構築した全サンプルに対して、光度曲線を用いたタイプ分類を行うことで通常の超新星を同定し、既存のテンプレートで表現できない天体に注目することで速い変動を示す天体の探査を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29度の研究計画は、すばる望遠鏡HSC戦略枠観測による突発天体探査データを網羅的に再解析し、短時間突発天体を同定することでそのような天体の性質を調べ、発生率などを推定することであった。突発天体観測データの再解析は終了し、合計約1,800天体の超新星候補を同定することができ、これまでで最大の突発天体サンプルを構築することができた。このデータを用いて、II型超新星を使った宇宙論パラメータ推定や、高赤方偏移の超高輝度超新星に関する論文を出版・投稿している。また、もともとの計画になかった母銀河の多天体分光や、すばる望遠鏡インテンシブ枠を使った追加のデータの取得などを行ったことで、HSCの突発天体探査データをよりユニークなものにしている。II型超新星や超高輝度超新星のケーススタディが順調に進む一方で、検出された天体から偽検出を取り除く作業に予想以上に時間を要したため、上述の突発天体サンプルの再構築が遅れ、主目的である短時間突発天体の探査は完了していない。ただし、光度曲線を用いたタイプ分類は全天体に関して終了しており、速い変動を示す天体の探査の準備は整っている。以上より、計画全体はやや遅れていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、これまでの突発天体サーベイ観測の結果をまとめた論文を出版すべく、(1)検出された全突発天体の系統的な分類を行い、(2)その中から短時間突発天体を同定し、天体の性質や発生頻度を調べる。 (1)HSCで発見される突発天体はほとんど分光観測を行うことができないため、まずは様々なタイプの超新星の光度曲線テンプレートを用いて超新星の分類方法を行う。知られているタイプの超新星の光度曲線テンプレートによる分類の実装は完了しているため、今年度は既存で分類できない突発天体や、短時間の変動を示す突発天体を検出する手法を確立する。並行して、タイプ分類の精度向上のため、突発天体の母銀河の分光観測を進める。 (2)開発した手法を用いて短時間突発天体のサンプルを構築し、そのような天体の性質を系統的に調査する。特に、先行研究によって短時間突発天体の絶対等級には大きく多様性があることが知られており、そのような性質を検証する。また、突発天体の明るさと色の関係、母銀河の特徴との関係を調べる。さらに、光度曲線を理論計算と比較することによって、そのような天体の爆発メカニズムや放射メカニズムを明らかにする。最後に擬似観測データを作成し、実際のサーベイ観測データと擬似観測データを同じ手法で処理することで、発見した短時間突発天体の発生頻度を求める。
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Research Products
(34 results)