2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of GRB polarimeter for elucidation of the radiation mechanism
Project/Area Number |
15H02080
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
郡司 修一 山形大学, 理学部, 教授 (70241685)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中森 健之 山形大学, 理学部, 准教授 (30531876)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ガンマ線バースト / 偏光 / 検出器 / コンプトン散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はガンマ線バースト(GRB)のエネルギー輻射メカニズムを解明するために、高感度のGRB偏光度検出器を開発し、精度の良い偏光観測を実現しようとしている。そのためニューハンプシャー大学やNASA/MSFCと共同で国際宇宙ステーション(ISS)に大面積のガンマ線バースト偏光度検出器を搭載するLEAP計画を推進している。2016年の12月にアメリカ側でNASAのヘッドクオーターから募集があったMission of Opportunity(MO)にプロポーザルを提出していたが、残念ながら2017年夏に不採択が決まった。また日本側で2017年1月にJAXAに応募していた小規模計画のプロポーザルもほぼ同時期に同様に採択されなかった。しかしながら物理に関しては高い評価を受けていたため、グループ内で話し合い再チャレンジすることとなったが、2024年以降はISSの運用は不透明である。そのため小型衛星に搭載できるように検出器の再設計と基礎実験を開始した。その一環として光電子増倍管の代わりにMPPCという新しいデバイスが使用可能かを調べるため、プラスチックシンチレーター1つとそれを囲む4枚のCsI(Tl)でできた小さな偏光計を製作した。そして、プラスチックシンチレーターに60keVのガンマ線を照射し、CsI(Tl)で散乱ガンマ線を検出するという実験を行った。従来MPPCはノイズレートが高いため、プラスチックシンチレーターで起こった低エネルギーデポジットをノイズと分離することはできないと考えられていたが、温度をー20度に冷やし、さらにCsI(Tl)とのコインシデンスのテクニックを使うとノイズに埋もれる事無く、1.5keV程度のエネルギーデポジットがプラスチックシンチレーターから読み出せることが実証できた。そしてこの成果を2018年のISRD国際会議で発表し、現在論文を投稿中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在2つの方向性で研究が進められている。一つは前述したLEAPプロジェクトである。これは残念ながら今回採択には至らなかったが、すでに新たなデザインで偏光計を開発すべく、基礎実験を開始した。そして、散乱型偏光度検出器特有のコインシデンステクニックというものを使えば、ノイズが大きい事で知られているMPPC検出器でもノイズを抑えられることが実証できた。さらに我々は、OKEANOSソーラーセイル実証機に搭載予定のガンマ線バースト偏光度検出器(GAP2)も同時に開発している。こちらは順調に進捗しており、OKEANOSは2018年度の戦略的中型機の2つの候補のうちの1つに選ばれた。まだ未定ではあるが、早ければ2019年度初頭にはプリプロジェクトに移行する予定である。 GAP2は散乱型の偏光度検出器であり、当初散乱体シンチレーターも吸収体シンチレーターも光電子増倍管で読み出す事が検討されていたが、MPPCが原理的に使えることが分かってきたため、少なくとも吸収体シンチレーターはMPPCで読み出す事がディフォールトのデザインとなった。以上の様にLEAPプロジェクトの進捗状況は振り出しに戻ってしまったが、GAP2の方は順調に進んでいるため、順調な進捗状況と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、今年度に引き続きMPPCの基礎実験を行うことを計画しており、主に2つの事を行う予定である。一つはMPPCの放射線耐性に対する実験である。MPPCは比較的新しい検出器であるため、宇宙での利用実績がほとんど無い。そのため宇宙放射線によってどの程度損傷を受けるかが分かっていない。そのため、我々は2018年1月に放射線医学総合研究所で陽子線をMPPCに照射して予備的に損傷の様子を調べた。この実験では検出器の電源をONにした状態で、普通では考えられないほどの高フラックスでプロトンを照射した。その結果、我々が当初予想していたよりも早く劣化が起こってしまった。その原因として、トータルなドーズが同じでもフラックスによって劣化の状態が変わる可能性があるため、平成30年の5月にもう一度放射線医学総合研究所で実験を行う予定である。この実験では放射線のフラックスを変えると同時に、MPPCと同等の性能を持つSensL社のSiPMに対しても照射実験を行う予定である。もう一つの基礎実験は小さなコンプトン望遠鏡を製作し、その性能を調べるというものである。今までの光電子増倍管と違いMPPCは非常に薄いため、小さなキューブ状のシンチレーターに貼り付け、それを積層した検出器を製作する事ができる。つまり3次元的な散乱位置と吸収位置を検出することができるため、コンプトンテレスコープを作る事ができる。しかし、その様なコンプトンテレスコープは未だ製作された事が無いため、小さな検出器を作ってその性能を実験的に調べる事を計画している。そして、その基礎実験の結果とコンピューターシミュレーションによって、大型のコンプトンテレスコープがどの程度の性能を発揮できるのかを調べる予定である。
|
Research Products
(9 results)