2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H02082
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横山 順一 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (50212303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 洋介 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (60443983)
茂山 俊和 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (70211951)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 重力波 / データ解析 / 独立成分分析 / 宇宙論 / 初期宇宙 / インフレーション / 中性子星合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、地面振動計などの環境チャンネルの出力を使い、そこに独立成分分析という解析手法を用い、特に重力波チャンネルに非ガウス雑音が乗法的に載っている場合、それを除去する方法を定式化した。さらに、数値シミュレーションにより、この手法を用いることで重力波信号の信号対雑音比が増加することを明らかにした。この方法を実データに適用するための、クラスタ計算機を導入した。 また、KAGRAによる連続波重力波の検出を目指して、F-statisticを用いて解析パイプラインを構築するとともに、カイ二乗識別子を用いた全天連続波探査におけるライン雑音除去法を新たに提案した。 中性子星合体により放出された重元素が星間物質中を拡散し混ざって行く様子をモデル化し、次世代の恒星に受け継がれて行く様子を銀河系の初期から計算して、現在銀河系ハローに生き残っていて観測されている恒星の元素組成と比較することで合体の頻度などを推定した。 一方、宇宙論的重力波の研究に関しては、まずXG3理論と名付けた空間方向のみに座標変換に対する不変性を持つ理論において生成する量子的重力波の挙動を解析し、この理論が高階微分相互作用を持つにもかかわらず、こと重力波に関してはアインシュタイン重力と同等の表現をとる座標系を選べることを証明した。また、大域的相転移を起こした多成分スカラー場が宇宙膨張と共に一様化する際に放出される重力波は、インフレーション中に生成する量子的重力波とともに宇宙論的スケール不変重力波の起源を与えるが、本研究では、この場の時間発展を、インフレーション後の再加熱期の宇宙膨張と共に解き、生成する重力波のスペクトルを精細に求めると共に、再加熱温度に対する依存性を明らかにした。そして、DECIGO等の観測衛星によって熱史を決定できる条件、ならびにインフレー ション起源の重力波と峻別できるための条件を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
重力波宇宙論に関する理論的な研究については、多くの共同研究者を得てさまざまな研究成果を挙げ、多数の論文を刊行し、きわめて順調に進捗している。一方、実データの解析については、博士研究員の雇用が遅れたものの、理論的準備については実行できたが、iKAGRAデータの較正手法が見直されたため、現在最新のデータの生成を待っているところであり、独立成分分析による実データの解析が未着手の状態となっており、この点に関しては遅れているといわざるを得ない。したがって、全体としては平均的な進捗状況であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
データ入手次第独立成分分析を行う。また、LIGOが重力波の実検出を果たし、重力波宇宙物理学を巡る状況は申請時と大きく異なってきているので、臨機応変に計画を見直していく。
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Research Products
(20 results)