2017 Fiscal Year Annual Research Report
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15H02082
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横山 順一 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (50212303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
カンノン キップ 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (50777886)
伊藤 洋介 大阪市立大学, 大学院理学研究科(理学部), 助教 (60443983)
茂山 俊和 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (70211951)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 重力波 / 連星中性子星合体 / インフレーション宇宙 / 独立成分解析 / GW170817 / Bモード偏光 / LIGO / KAGRA |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、実観測時代を迎えている100Hz帯の重力波については、今年度はLIGO検出器を用いた連星中性子星合体からの重力波の発見、という非常に大きな業績を挙げることができた。LIGOチームは6種類の即時検出システムを擁しているが、このうちCannon分担者が主導者となって開発しているgstlalのみがこのイベントの即時検出に成功したのである。このイベントはGW170817と呼ばれると共に、このgstlalの功績によって世界中の電磁波観測装置にアラートが出され、世界初の電磁波対応天体すなわちガンマ線バーストGRB170817Aの発見に繋がった。これはまさに、本研究計画応募時に理想的な結果としたことであり、それが現実のものになったのである。 こうした連星中性子星合体のもつ天体物理学的な意義を明らかにする一環として、竜座矮小銀河に属する星のすばる望遠鏡を用いたスペクトル観測を行い、星の大気でのr-過程元素の組成を解析した。その結果、かなり異なる量のr-過程元素を供給する中性子星合体が二回起こった兆候を捉えた。さらに理論的な研究として、中性子星合体の際に自由中性子のみからなる層が高速で飛び出してくる可能性について、流体力学的数値計算を行い調べた。その結果、最大で太陽質量の100万分の1程度が放出されることがわかり、その層が数時間の間観測可能なほどの明るさで可視光で光ることを示した。 一方宇宙論的重力波の研究については、宇宙論的極長波長重力波の観測手段として有望な、宇宙背景放射のBモード偏光の理論的研究に取り組み、Bモード偏光の三点関数が観測可能なほど大きな値を持つのは、重力理論にアインシュタインテンソルとスカラー場の結合項のある場合に限られることを示した。 さらに、独立成分解析によるiKAGRAのデータ解析に引き続き取り組み、その準備をほぼ終えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実観測時代に入っている100Hz帯の重力波に関する研究については、当初計画以上に世界をリードする大きな成果を挙げることができ、関連する理論研究も進捗した。より多波長に亘る宇宙論的重力波については、さまざまな観点から理論研究を進め、順調に進捗している。独立成分解析によるデータ解析については準備をほぼ終えることができたので、次年度に論文を刊行する道筋をつけることができた。全体としては、(2)という評価になろう。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画には特に変更を必要とする項目はないが、100Hz帯の重力波の観測が当初の想定以上に進捗しているので、それに合わせて今年度後半に新たな研究計画を立案する予定である。
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Research Products
(17 results)