2016 Fiscal Year Annual Research Report
ベクトル電場波形整形パルスによる時間反転対称性の破れた量子系の生成と制御
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15H02117
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
三沢 和彦 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80251396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
香取 浩子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10211707)
野村 晋太郎 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (90271527)
佐藤 正寛 茨城大学, 理学部, 准教授 (90425570)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ベクトル波形整形 / キラリティ電磁場 / 時間反転対称性の破れ / 時間分解偏光分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、高強度かつ任意の電場波形を持つテラヘルツ周波数帯域のパルスを生成できる光学系を開発し、そのパルスを二次元電子系や反強磁性体の試料に照射することで電子系の時間反転対称性を破ることを目的としている。任意に偏光状態が制御されたパルスを照射することで、静磁場の無い環境でも静磁場の印加と同じ効果が発現される他、静磁場を印加しただけの平衡状態では実現し得ない動的な量子状態を実現することができる。平成28年度は、以下の研究実績をあげた。 (28-1)様々な電子系に対応させることを見越し、高強度かつ任意の電場波形を持つテラヘルツパルスに変換する前の高強度近赤外域ベクトル波形整形技術を見直し広帯域化を図った。その結果パルスエネルギー270 μJ、偏光回転周波数0.1~10 THzの偏光回転パルスを実現した。そのパルスに対して、テラヘルツ周波数帯域のパルスに変換する光学系を測定系直前に配置し、テラヘルツ周波数帯域のパルスの発生を確認した。 (28-2)電子系の量子状態の観測のために液体ヘリウム使用環境を完成させ冷凍機を試運転し試料温度4.2 Kを確認した。また強磁場を印加した対照実験のために超伝導マグネットによる試料印加磁場6 Tを確認した。 二次元電子系として、GaAs/AlGaAsのヘテロ構造試料、および量子井戸試料を準備し、近赤外域波形整形パルスを照射し基礎データを取得した。その際にGaAsのバンドギャップ励起よりも低いエネルギーのパルス照射によっても伝導電子の化学ポテンシャルに変化見られた。この現象が時間反転対称性の破れに起因するものなのか検証実験を継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高強度ベクトル波形整形技術と低温強磁場輸送測定技術という性質の違う分野を融合させた実験系を開発しているため、対処すべき技術的な問題は多岐に渡る。一例として、輻射熱を抑えた低温環境の試料に対して高強度なテラヘルツ波を照射するために適切なテラヘルツ透過窓を設置する必要があるが、素材が樹脂製のため断熱真空層の低温部の真空を維持するためには特殊な治具を設計する必要がある。こうした諸問題を解決する目処は立っているが、任意の電場波形を持つテラヘルツパルスの照射による時間反転対称性の破れの測定には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
①近赤外域ベクトル波形整形技術の高強度化 ②テラヘルツ周波数パルスへの変換 ③低温強磁場中、電気伝導測定系の構築 ④二次元電子系試料の電子濃度制御と光照射輸送特性の確認 目的達成に必要なこれらの各項目はほぼ完成段階にある。従って平成29年度はこれら個別に開発した技術を1つにまとめ上げることを最優先し、二次元電子系試料において時間反転対称性の破れの観測を輸送測定にて行う。さらに時間分解プローブ光による時間反転対称性の破れを観測するための実験系は台湾国立交通大学と連携し人員体制をさらに強化して開発を進める。
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Research Products
(13 results)