2016 Fiscal Year Annual Research Report
Development of the parallel low-noise muography telescope towards the visualization of magma dynamics
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15H02124
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 宏幸 東京大学, 地震研究所, 教授 (20503858)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ミュオグラフィ / 火山 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国は、東京大学地震研究所主導のもと、素粒子ミュオンを用いた火山内部のイメージング(ミュオグラフィ)に世界に先駆けて成功した。成果は世界に波及し、火山観測や資源探査等幅広い対象に対して技術開発が急ピッチで進められているが、我が国は未だ世界をリードする立場にある。今、ここで我が国から世界へと波及した新しい地球観測技術を進化させ、引き続き世界のリーダーシップをとり続けることが重要である。研究目標は本提案で新たに開発する並列ミュオグラフィテレスコープを用いた火山内部のマグマ動態の透視につなげる技術開発であり、火山観測分野で、今後も世界を主導し、国際的プレゼンスを示すことである。
活動的火山内部のマグマ動態のイメージングは噴火予知技術の向上にとって、喫緊の課題であるが、未だ開発途上である。例えば、桜島における地震波を用いた先行研究 (Iguchi et al. 2008)から、10分程度の時間スケールで噴火の直前、直後で山体が膨張収縮することが示唆されている。これはマグマの通り道(火道)が膨張収縮するためと考えられているが、破砕物、火山灰、ガスの混合物で満たされた複雑な物質から構成される火道がどのようなメカニズムで膨張収縮するのかが未だ分かっていない。従来の噴火モデルは地震、地殻変動等から推定した間接的なものだったが、本提案で開発する新技術により10分を切る時間分解能で火道内の変化を直接確認できるようになれば、桜島等、活動的火山の噴火直前と噴火直後の状態変化を直接可視化できる。本成果を将来の大型並列ミュオグラフィに直結させることで、短い時間スケールでの噴火先行現象の理解に対して新たな展開を期待できる。
本研究では2台の小型テレスコープを並列運用できる基礎技術を開発する。平成28年度は、並列ミュオグラフィテレスコープ用自動データ解析ソフトウェアを開発し、機能試験を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は基礎技術開発からテスト観測実施へ向けた移行フェーズと位置づけ、以下の3つの項目について実施することを計画していた。(1)並列ミュオグラフィテレスコープ用自動データ解析ソフトウェアを開発し、平成27年度までに動作が確認されている並列ミュオグラフィテレスコープを用いて機能試験を行う。試験項目は以下の通りである:(A)ミュオンイベントの記録時刻及びテレスコープの通過位置が正確に記録されるか。(B)方向毎のミュオンイベント数のヒストグラムが自動的に生成されるか、の2点について並列テレスコープの機能検証を行う。そのため、①同期した2つのテレスコープからの信号の出力時刻をX座標、Y座標、層番号と共に、観測開始時刻を基準として、ナノ秒単位で記録するデータ記録ソフトウェアを完成させた。②①で生成されるナノ秒精度で取得されるミュオグラフィデータの連結プロセス(ミュオン飛跡のトラッキング)を自動化し、解析期間に応じた、ミュオン飛跡の角度分布を自動的に生成することで、ミュオンの飛跡の到来角度と数を方位角、仰角の関数でヒストグラムすることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は完成した並列ミュオグラフィテレスコープを用いて、活動的火山を対象にしたテレスコープのテストを行う。テストは桜島を対象に行う。鹿児島県の桜島は現在日本で最も活動度の高い火山で、2014年には656回、2015年には1252回の噴火が確認されている (鹿児島地方気象台 2016)。繰り返し噴火を行う火山では噴火イベント毎のミュオグラフィデータを積層する観測を実施する。Tanaka et al. (2014)は,鹿児島県薩摩硫黄島で,小噴火が起きていた2013年6月-7月の観測において、マグマの昇降を示唆する火山内部の密度構造の時間変化を捉えることに成功したが、このときの時間分解能は,3日間であった。この時間分解能を向上させるためには、ミュオグラフィ観測装置の有感面積を拡大する以外の方法は無いが、噴火による火山内部の密度構造変化が毎回同様であることを仮定すれば、各噴火時に得られるデータ量がわずかでも複数の噴火イベントにおいて得られたデータを合成することで統計を増やすことができる。
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Research Products
(6 results)