2016 Fiscal Year Annual Research Report
Early Earth made and build essential biomolecules
Project/Area Number |
15H02144
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
掛川 武 東北大学, 理学研究科, 教授 (60250669)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 善博 東北大学, 理学研究科, 助教 (00544107)
小林 敬道 国立研究開発法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他研究員 (20260028)
関根 利守 広島大学, 理学研究科, 特任教授 (70343829)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 生命起源 / 初期地球 / 隕石衝突 / アミノ酸 / 核酸塩基 / リボース / ヌクレオチド / ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
初期地球環境を再現した実験を展開し、鉱物-水反応によって生命の材料を作り、それら材料を生体分子に組み立てていくことが本課題の目的である。以下の3つの反応系を設定し、「初期地球が生命を作るのに適していたか」を証明していく。反応系1:初期地球における隕石海洋衝突模擬実験。反応系2:初期地球海底堆積物内部を想定したリボースの生成、さらにリボースと核酸塩基、リン酸との重合実験。反応系3:海底堆積物内部を想定した骨格ペプチド生成実験。
反応系1の隕石海洋衝突を模擬した衝突回収実験を物質材料研究機構と広島大学とで共同研究を行った。その結果、衝撃環境でアラニンなどの安定性やアミノ酸存在下でのカンラン石の得意的な挙動が解明された。同時に多様なアミノ酸生成にも成功してきている。さらに東北大で衝突蒸気雲再現実験を展開し、アミノ酸生成にも成功してきている。隕石衝に関する環境変化の情報を得るためにカナダで隕石衝突現場の調査も行った。反応系2の実験を展開し、リボース安定化へのホウ酸の重要性を示すと同時に、ホウ酸塩鉱物存在下で、世界で初めてヌクレオチド生成に成功した。この成果はAngewandte Chemie にVIP論文及び表紙にも掲載された。さらに初期地球環境でもホウ素や有機物に富んだ環境が存在したことを示した。反応系3として高温高圧発生装置を用いて高温高圧条件で「骨格ペプチド」生成実験を行い、アスパラギン酸やメチオニンから「骨格ペプチド」が生成された。27年度に導入した質量分析計を用いて安定同位体をトレーサーとし、アミノ酸からペプチドが生じる際の具体的反応過程も解明された。ゴールドシュミット国際学会では生命起源に関するセッションを企画し、アストロバイオロジー国際学会(招待講演)などでも成果発表を行った。さらに東北大でアストロバオロジーネットワーク年会を主催し、そこでも成果発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
隕石海洋衝突を模擬した衝撃実験では、実験条件を変化させる中で各種アミノ酸や核酸塩基生成の成功を三年目に目指したが、すでに一次的目標は達成できた。最も困難が予想されたヌクレオチド生成実験(反応系2)にもルーネバガイト(ホウ酸塩鉱物)を用いて成功した。鉱物を用いたヌクレオチド生成は世界で初めてである。さらに、初期地球でも反応系2が起こりうることをグリーンランドの鉱物解析によって明らかにでき論文として公表できた。この成果は世界的に注目され、次年度のElementsに招待論文としても掲載される。本課題の成果をベースに新たな国際共同研究も新たに展開できるようになった。これは当初、予想していなかった展開である。反応系3は予定通りに進み、各種ペプチド生成(メチオニン、アスパラギン酸など)に成功し順次論文化が進行してきている。
|
Strategy for Future Research Activity |
隕石海洋衝突を模擬した衝撃実験では、同様の実験を展開する。実験条件の違いで生成されるアミノ酸や核酸塩基の違いが生じることを明確にする。それと同時にまだ生成に成功していない最困難生成有機物(プリン塩基、含硫黄アミノ酸)の生成にチャレンジする。
反応系2で成功したヌクレオチド生成実験をさらに展開し、粘土鉱物存在下で行うことでより天然に近い状態を再現する。それによって、「初期地球がヌクレオチドやRNAを作り得た」ことを示していく。
反応系3は高温高圧実験をさらに進め、各種骨格ペプチドを生成すると同時に本課題のゴールである金属元素が組み込まれた「酵素」原型の生成を試みる。以上の成果をまとめて「生命の起源新説」を提唱する。
|
Research Products
(19 results)