2015 Fiscal Year Annual Research Report
電子・核運動共役測定による水素・プロトン移動反応中の電子デカップリング効果の解明
Project/Area Number |
15H02157
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤井 正明 東京工業大学, ソリューション研究機構, 教授 (60181319)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 充彦 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教 (00378598)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 励起状態ダイナミクス / 励起状態水素移動反応 / 溶媒和クラスター / 超音速ジェット |
Outline of Annual Research Achievements |
プロトンおよび水素原子移動反応は最も基礎的な化学反応素過程であるが、そのメカニズムはいまだ十分に理解されているとは言えない。最近の理論研究から、単に水素原子やプロトンが移動するのではなく電子と水素原子核(プロトン)が別々の経路で移動し、その後の再結合反応を経て最終的に水素あるいはプロトン移動が完了するのではないかと予想された。本研究では、電子、原子核の運動を独立に測定することでこの説の検証を目指す。 これまで原子核の運動についてはピコ秒時間分解赤外分光を用いて研究を進めていたが、より速い電子の運動を検出するために27年度は、フェムト秒時間分解近赤外分光システムの構築を行なった。フェムト秒波長変換装置(TOPA)を購入し、励起用波長可変紫外光および検出用波長可変近赤外光発生システム構築を行なった。既存のチタンサファイア再生増幅器を調整したため、TOPASシステムの調整を慎重に行い時間分解能~100 fsの時間分解近赤外分光光源を立ち上げた。さらに、超音速ジェット分光装置と組み合わせ、測定条件確認のためのナノ秒分光装置の調整と併せて行い、測定装置を構築することが出来た。 装置の基本性能の確認のために、基礎情報がすでに良くわかっているフェノール‐(NH3)nクラスターに対し、S1状態励起後の近赤外吸収の立ち上がり時間の見積りを行なった。その結果、フェノール‐(NH3)5だけが他のサイズのクラスターと比べ特異的に速く、数百フェムト秒の立ち上がり時間を示すことが見出された。本研究が目的とする水素移動メカニズムに顕著なサイズ依存性があることを示しており、今後サイズ依存性、波長依存性などを詳細に検討することで、電子、原子核のダイナミクスの理解につながると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
速い電子移動を検出するためのフェムト秒時間分解近赤外分光システムの構築を行ない、フェノール‐(NH3)5の近赤外吸収の立ち上がり時間の測定を行っており、当初計画での予定をほぼ達成しているため、おおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
フェムト秒近赤外時間分解装置を構築し、基本的測定を行なった。しかし、データ取得法などにさらに改善が必要であるため、まず遅延光学系の構築やシステムコントロールの改良などを行なう。 フェノール‐(NH3)5のS1光励起後の近赤外吸収の立ち上がりが数百フェムト秒であることを見出したが、立ち上がり時間の厳密な決定には光強度依存性などを十分に吟味する必要があることが明らかとなった。そこで、まずフェノール‐(NH3)5クラスターの近赤外吸収の立ち上がり速度の決定、およびその励起光、検出近赤外光波長依存性を確立する。 その後、フェノール‐(NH3)n、n<5のESHT反応における近赤外と赤外領域の時間発展測定を行い、電子‐原子核デカップリングの溶媒サイズ依存性を調べる。 また、異なる系におけるプロトン/水素移動におけるデカップリング機構の一般性を調べるため、カテコール‐(NH3)nやナフトール‐(NH3)nクラスターなどの代表的系における反応についての検討を行う。これらの系に対しては、量子化学計算による反応探索および反応機構の検討も並行して進め、実験を行う上での指標を得る。
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Research Products
(1 results)