2016 Fiscal Year Annual Research Report
反応経路自動探索法を基盤とする化学反応の理論解明と制御
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15H02158
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
諸熊 奎治 京都大学, 福井謙一記念研究センター, 研究員 (40111083)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 化学反応理論 / 反応経路自動探索法 / 最低円錐交差 / 光機能性分子 / 触媒反応機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では反応経路自動探索法(GRRM戦略)を活用した化学反応の解明と制御分子の光物性の解明と制御を目指す。 1.光機能性分子の発光消光過程の解明:佐々木らによって合成された凝集誘起発光を起こすアルキルアミノアントラセンの発光特性について、円錐交差を計算し、液相中で消光しやすい理由を明らかにした。さらに、固相中でどの程度円錐交差が不安定化するのかを見積もり、凝集により円錐交差を経由した失活が大きな立体制約を受けることを明らかにした。 2.アボベンゼンの光化学反応:アボベンゼンではノリッシュII型プロトン移動反応とcis-,trans-異性化という全く異なる反応が競合して起こる。GRRM戦略により、基底状態、第一、第二励起状態の各状態の平衡点、交差を網羅的に探索し、生成物の傾向が明らかになった。一部の反応は基底状態で熱的に起こることもわかった。 3.鉄ニッケル錯体による生体模倣触媒反応: 小江らにより合成されたNiFe二核錯体は生体酵素であるヒドロゲナーゼを模倣して作られた触媒である。この反応機構を検討している。水素分子活性化触媒における強塩基の役割の解明、反応中の鉄のスピン状態に注目して反応機構の解明を行う。これまでのベンチマーク計算で、複数の密度汎関数理論により全てのスピン多重度を仮定し、X線構造解析で得られている中間体において構造最適化を行なっているが、その相対的安定性については汎関数依存性が大きいことがわかっているので、高精度な計算を行い検証を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実験化学者と共同で凝集誘起発光の基本的な仕組みを理解することができた。また、仕組みが理解できたことにより、計算による予測がある程度可能であることがわかってきたのでさらなる分子設計へ進展させることができる。 アボベンゼンについては論文にまとめ、投稿準備中である。 鉄ニッケル錯体の触媒反応については計算精度の問題によりやや計画より遅れているが、基本的な反応機構は明らかになってきたので今後計算精度を向上する。
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Strategy for Future Research Activity |
凝集誘起発光分子の設計が可能な段階まで知見が蓄積されてきたので、実験化学者と共同で分子設計とそれに基づく合成、測定へ向けて研究が進行している。
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Research Products
(5 results)