2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H02198
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 亮 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (80256495)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高分子 / ゲル / 自己組織化 / 生体材料 / 自律機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
Belousov-Zhabotinsky(BZ)反応は代謝反応(TCA回路)の化学モデルでもあり、生体現象の中でもよく見られる時間リズムや空間パターンを自発的に生み出す化学振動反応としてよく知られている。金属触媒(RuやFe錯体など)共存下の酸性水溶液中で、マロン酸などの有機基質が臭素酸などの酸化剤によって緩やかに酸化される反応であるが、その過程でサイクリックな反応ネットワークが自発的に構成され、触媒となる金属錯体が周期的な酸化還元振動を起こす。散逸構造を生み出す化学システムの代表的な例でもある。我々はこのBZ反応をゲル内で引き起こしその化学エネルギーを力学エネルギーに変換する分子設計を行い、ゲルの周期的な膨潤収縮振動を生み出すことに成功した。1996年に初めてこの「自励振動ゲル」(self-oscillating gel)を報告し、以降系統的に研究を進めてきた。時空間機能を持つ4次元マテリアルとして、新しい機能性高分子ゲルの概念を提唱し具現化するとともに、生体模倣アクチュエータ、物質自動輸送表面、機能性流体など、新たな自律機能性材料への応用展開を試みた。一般的にBZ反応の振動挙動は反応物濃度や温度により変化するため、それらを制御パラメータとして膨潤収縮振動の周期や振幅、蠕動運動の速度や波長が制御できる。また温度や光を外部刺激として振動自体のon-off制御も可能である。さらに重要な因子がゲル自身の膨潤収縮の応答性であり、振幅等に大きく影響を及ぼす。ゲルの組成、物理/化学構造変化により振動挙動を制御するため、種々のゲルの構造設計が試みられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最近我々は、親水性高分子(PEO)セグメントと自励振動高分子セグメントからなる新しいタイプのジブロック共重合体を合成した。この自励振動ブロック共重合体は、BZ反応基質存在下において自励振動セグメントの親疎水性が周期的に変化することで、自律的にその自己集合状態が変化する。周期的なチンダル現象の変化とともにその散乱光強度および流体力学的半径が自励振動することを明らかにした。すなわち、ミセル形成に基づく自己集合状態を周期的に変化させることができた。これは散逸構造に支持された自己集合という自己組織化概念を合成ブロックコポリマーで実現した系としても興味深い。さらにそのブロック比の制御により、ベシクル構造などの自己集合構造が水溶液中で自律的に形成・崩壊を繰り返す自励振動ジブロック共重合体(自励振動ベシクル)の創製を行った。また、側鎖に二重結合を導入しベシクル構造を化学架橋することで、細胞膜のように自律的に体積・形状を振動させる人工細胞の作製も実現している。更に3つ以上のブロックを持つマルチブロック型(ABA型など)の自励振動ブロック共重合体を合成することで、アメーバ運動に見られるような自律的なゾル・ゲル転移を生起させる試みも行っており、バイオミメティックなソフトマシンや機能性流体といった様々な応用展開が期待されている。
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Strategy for Future Research Activity |
このように、我々は生体のように自律的な時空間機能を発現する高分子およびゲルの開発に取り組んできた。周期的な膨潤収縮振動を自発的に生み出す分子回路を材料自身の中に内包している点に大きな特徴を有している。外部刺激のon-offなしに膨潤収縮振動を起こすゲルを実現した世界的にも新規な研究、またBZ反応の化学エネルギーを高分子の形態変化に転換して力学エネルギーを生み、機能性材料設計に応用した最初の研究でもある。高分子ゲルの新しい可能性を提唱した研究として先導的な役割を果たしてきた。これまでに様々な階層スケールでの自励振動現象を発現することに成功してきたが、これらを更に応用展開することで、革新的な時空間機能性材料を提案していきたいと考えている。
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Research Products
(8 results)