2015 Fiscal Year Annual Research Report
ハイブリット非線形光学イメージング法による気液熱流動界面の分子選択的輸送現象解明
Project/Area Number |
15H02223
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐藤 洋平 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00344127)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 熱流動界面時空間分子選択的輸送現象 / 非線形ラマン散乱 / 非共鳴バックグラウンドノイズ / ハイブリットイメージング法 / 分子選択的輸送ダイナミクス理論 / エバネッセント波 / CARS / 平衡・非平衡領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱流動を伴う界面における分子の選択的輸送現象に関する新たなダイナミクス理論の体系化を目的として,分子の微視的挙動を計測可能とするハイブリット非線形ラマン散乱イメージング法の開発を4ヶ年に渡り行う.今年度の研究成果を下記に述べる. ①現有のフェムト秒レーザシステムおよび光パラメトリック発振器からのポンプ光およびストークス光を,倒立顕微鏡,分光器およびEM-CCDカメラから成るCARS光受光システム,そして倒立顕微鏡,分光器および購入したEM-CCDカメラから成る偏光CARS光受光システムに導入するハイブリッドCARS光計測システムの開発を行った.回転角度精度0.02度を有する偏光CARS光受光システムにより,取得した濃度分布結果が理論とほぼ一致することを確認した. ②二酸化炭素および窒素のラマンシフトに一致するCARS光発生に対応したポンプ光およびストークス光を,Colinear CARSに適応するように対物レンズを介して気流に照射可能とするCARS光発生システムの開発を行った.平行してBox CARSも考慮しシステムの開発を行ったが,光学系の角度調整が非常に困難であることが判明し,レーザ光径の変換が容易なColinear CARSを今後は採用することとした.CARS光強度と非共鳴バックグラウンドノイズの強度との関係を明らかにし,レイノルズ数変化に応じて変化する気流濃度分布の取得を行った. ③購入した全固体レーザを用いて,液体内にてレーザ光を全反射させ,気流側にエバネッセント波を発生させることは可能であったが,液体からの非共鳴バックグラウンドノイズが非常に大きく,CARS光取得が困難であることが明らかとなった.購入したレーザプロファイラにより,CARS光取得に及ぼす非共鳴バックグラウンドノイズの影響を定量的に把握することが可能となり,新たなエバネッセント波照射システムの開発が必要となってくる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非線形ラマン散乱光を用いて,熱流動を伴う界面における気体分子の時空間選択的輸送現象の解明を目標として,CARS光発生方式の違いによる非共鳴バックグラウンドノイズの定量的評価,ならびにハイブリッドCARS光計測システムの開発を行い,今年度の進捗状況は概ね良好である. ①開発したハイブリッドCARS光計測システムをマイクロデバイス内電解質溶液に適用し, CARS光強度が濃度の二乗に比例することが明らかとなり,理論と一致することを確認した.これにより,ハイブリッドCARS光計測システムの有効性が確認できた. ②非共鳴バックグラウンドノイズを考慮して,Colinear CARSおよびBox CARSの検証を行い,CARS光強度と非共鳴バックグラウンドノイズとの関係が容易に把握可能であるColinear CARSを採用することにより,二酸化炭素および窒素からなる混合気流濃度分布の計測が可能となった.
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Strategy for Future Research Activity |
界面極近傍のエバネッセント波照射領域は,従来,連続体(平衡領域)を支配するNavier-Stokes方程式の境界条件として扱われてきたが,微視的観点に立脚すると,Boltzmann方程式で表される非平衡領域に相当する.Boltzmann方程式およびNavier-Stokes方程式と連動した,分子の選択的輸送現象を表す新たなダイナミクス理論の構築に向けて,今後は, ①Colinear CARS光受光システム,および偏光CARS光受光システムを,マイクロデバイス内に形成される液体・液体界面における化学反応に適用し,その有効性の検証を行う.特に,化学反応に伴い,イオン群の局所的濃度分布が変化するが,同時に屈折率も変化するため,Colinear CARS光強度と屈折率変化との相関関係を明らかにする. ②更に,二酸化炭素および窒素からなる気流混合場にも適用する.その際,前述の結果よりデバイス材質を石英ガラスあるいはホウケイ酸ガラスのみとし,ガラスからの非共鳴バックグラウンドノイズのCARS光強度に及ぼす影響の低減化を図る.その後,高空間分解能にして,気流濃度分布の計測を行い,ハイブリット非線形ラマン散乱計測システムを確立する. ③レーザ光を液体内にて全反射させ,気流側にエバネッセント波を発生可能となったが,液体からの非共鳴バックグラウンドノイズが非常に大きく,CARS光取得が困難であることが明らかとなった.そこでポンプ光およびストークス光を直接全反射させ,エバネッセント波を界面に発生させ,界面極近傍に存在する分子からのCARS光を取得可能とするシステムの開発を行う.本年度は,固体・液体界面極近傍に存在するイオンからのCARS光取得を試み,ポンプ光とストークス光の位相整合や非共鳴バックグラウンドノイズの影響等の影響の検証を行う.出来れば,固体・気体界面への展開も行う.
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Research Products
(10 results)