2015 Fiscal Year Annual Research Report
超小型衛星の宇宙実験による軌道上における宇宙エレベータの運動解析
Project/Area Number |
15H02224
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
能見 公博 静岡大学, 工学部, 教授 (20325319)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 義男 日本大学, 理工学部, 教授 (30184047)
山極 芳樹 静岡大学, 工学部, 教授 (30220255)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 超小型衛星 / 宇宙テザー / 宇宙ロボティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,超小型衛星を用いて宇宙空間においてテザーを伸展し,テザー上においてエレベータの昇降機を移動させる宇宙実験を実施する.本宇宙実験のキー技術は,テザー伸展および昇降機移動となる.テザー伸展技術および昇降機移動技術について,それぞれ専門知識を有する研究者が担当し,超小型衛星全体を研究代表者が取り纏める. ・テザー伸展:2kmオーダーの長距離テザー伸展について,当初スプール式テザー展開装置を用い,バネ式テザー放出を行うことが適していると考えていた.しかしながら,当該年度に国内外の過去のミッション等を調査し,その結果からリール方式が妥当であると判断した.この結論を受けて,テザー材質および形状を考慮してリール方式のテザー伸展装置の試作機を製作した.そして,試作機を用いて伸展抵抗等の計測を行う地上実験を実施した.また,テザーの柔軟性を考慮した力学定式化を行い,シミュレーションによる挙動解析を実施した. ・昇降機移動:テザー形状・材質を含めた昇降機の設計を検討し,車輪式移動機構を持つ試作機を製作した.とくにテザー接触面の車輪に関しては,接触状態を複数の実験的評価を行うことができるものとし,地上実験による評価を行った.そして,超小型衛星搭載可能なサイズとすることを達成した.次に宇宙環境仕様とすることが課題である. ・超小型衛星全体:本衛星はH-IIA の無償相乗りを視野に入れ,50kg 級とする.これより,テザー伸展装置および昇降機のサイズを検討し,とくに重要となる親衛星および子衛星(この間をテザーで繋ぎ、そのテザー上を昇降機が移動する)の結合機構について検討し,試作機を製作した.また,電力系,制御系,データ取得系,通信系を検討し,とくに重要となる姿勢制御について通信系を含めた電気システムを試作した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H27年度は,本宇宙実験のキー技術について,テザー伸展技術は山極(静岡大),昇降機移動技術は青木(日本大)が担当し研究開発を進めた.また,超小型衛星として能見(静岡大)が取り纏めて進めた. ・テザー伸展(山極担当):従来研究の調査から2kmテザーの伸展に適する伸展方式を選定,その試作機を設計製作して基本性能を実験的に確認した.当該年度の計画である試作機の開発を達成したと評価できる. ・昇降機移動(青木担当):昇降機の設計を検討し,車輪式移動機構を持つ試作機を製作した.従来研究の調査から車輪式を採用,試作機による車輪機構の検討を行い,試験機への見通しを得ることができた.当該年度の計画である試作機の開発を達成したと評価できる. ・超小型衛星(能見担当):本研究で開発する衛星は50kgであり,試作機としてとくに重要となるのは,親衛星および子衛星(この間をテザーで繋ぎ、そのテザー上を昇降機が移動する)の結合機構である.当該年度には,結合機構を検討した結果を踏まえた試作機を製作した.また衛星の電気システムに関しては,テザー伸展および昇降機移動の観点から,とくに重要となる姿勢制御について試作した.電力系,データ処理系,通信系については,過去の衛星開発実績を利用できると考えている.とくに本衛星のキーとなる技術を評価する試作機の設計製作を達成したことから,当該年度の計画を達成したと評価できる.
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度の開発を円滑に進めることができたことから,当初計画通りに,テザー伸展技術は山極(静岡大),昇降機移動技術は青木(日本大)が担当し,超小型衛星として能見(静岡大)が取り纏める体制で進める. ・テザー伸展(山極担当):初年度にテザー伸展方式を決定,装置試作を行い実験評価を実施した.この結果を踏まえて,選定したリール方式の制御方法を構築する必要がある.これと並行して耐宇宙環境性能を持つ試験機を設計開発し,テザー伸展制御に関する地上実験評価を行う.ここで,軌道上のテザー伸展に関する実験的挙動解析は困難であるため,初年度に用いた力学定式化によるシミュレーションを用いて評価することとする.また試験機については,衛星本体に搭載することとし,各種試験を実施していく. ・昇降機移動(青木担当):初年度に開発した試作機によるテザー上移動性能の評価を継続して実施し,その結果を踏まえて宇宙環境を考慮した試験機の開発を行う.ここでは,実ミッションを想定した電機システムなども搭載し,宇宙機仕様とする.そして地上模擬環境におけるテザー上移動に関する評価検証を行う. ・超小型衛星(能見担当):初年度に開発した試作機を用いて,とくに親衛星と子衛星の結合機構について,ロケット打ち上げ環境に耐えること,および確実に分離できることを地上実験により評価検証する.また姿勢制御に関して,制御則を実装した機能評価を行う.これらの結果を踏まえて,その他の電気システムを含めて試験機を開発する.開発した試験機には,テザー伸展装置および昇降機を搭載し,宇宙環境試験を実施する.また本衛星のキー技術について,とくにテザー伸展(バネによる放出初速度,テザー伸展抵抗)および昇降機の動作(テザー上移動速度,移動精度)について,地上模擬環境における評価検証を行う.
|
Research Products
(18 results)