2015 Fiscal Year Annual Research Report
ADL維持回復のための人の内外複合モデルと力制御型生活支援機器(ITR)の開発
Project/Area Number |
15H02235
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
村上 俊之 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (00255598)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
満倉 靖恵 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (60314845)
野崎 貴裕 慶應義塾大学, 理工学部, 助教 (20734479)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 福祉機器システム制御 / 生体信号処理 / パワーエレクトロニクス / IMUセンサ / 立ち上がり動作 / 力制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27度では,歩行動作および座位動作における身体運動状態のモデル化を行うため,運動状態計測システムの構築を行った.同システムを用いて,椅子の座位状態からの立ち上がり動作に着目し,胸部および脚部に1つずつ設置した加速度センサ応答に基づき,若年層を被験者として動作の解析とフェーズ分解を行った.ここでは,人の動作を阻害しないようにブルートゥースを利用した加速度応答データ転送を行った.最終的には立ち上がり動作において重要となる動作フェーズを特定化し,立ち上がり動作支援機器のための機構設計ならびに有効な機器制御手法について明らかにした.一方で,床での座位状態からの立ち上がり動作についても骨格モデルに基づいた発生力ならびにエネルギーの変化量解析を行い,立ち上がり動作において負担を抑えられる姿勢や外部からの適切な力支援の加え方についての検証を行った. また,移動動作における支援機器となる知的突っ張り棒(Intelligent Tension Rod: ITR)のプロトタイプの製作を行ない,人の力の計測と同時に加速度応答を計測することによって,人の動作に準じたITRの同期制御手法の提案を行った.提案手法により,人によるITRの操作性を改善できることを実験的な検証によって示した.ただし,ITRの構造については実験結果より改良が必要であることも判明し,平成28年度において改良型のITR製作を行う予定である. 上記に述べた立ち上がり動作の解析と併行して,スポーツ動作(テニスにおけるフォアハンド動作)の骨格モデルに基づいた解析も行った.これは,ITR制御において基礎となる骨格モデルの構築を狙いとして行っているが,加速度センサによる加速度応答の不確定性(ノイズの影響)を適切に考慮することが必要であることが判明し,本年度はノイズを考慮した動作解析手法提案のための数学モデルの構築に留まっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の進捗において,最も目標達成率が高かったものは知的突っ張り棒(Intelligent Tension Rod: ITR)のプロトタイプ製作および人とITRの同期制御手法の確立にある.ただし,ITRの構造について,その軽量化やアクチュエータシステムのコンパクト化は達成できておらず,構造(安定性,安全性の確保)についての改良の必要性があることが明確になっている.また,人とITRの制御において重要となる人の骨格モデルについては,リンク構造に基づいた解析手法の提案を行うことはできたが,モデルの妥当性についての検証をより厳密に行う必要がある.基本的には骨格モデルに基づいて危険状態(躓き,転倒)の予測を行い,ITRによるその防止支援を行うことが一つの制御目標となる.その際,人の動作状態の把握が重要となり,本年度は加速度センサ情報に基づいた人の動作解析手法の明確化をある程度行ったが,その汎用性は必ずしも高いものではなくより柔軟性の高い解析手法の確立が望まれる. ADL(Activities of Daily Living)動作の一つと考えれれる椅子の座位状態からの立ち上がり動作については,本年度において動作のフェーズ分解による解析とその支援動作に関するアルゴリズムは提案できており,ITRを立ち上がり支援動作に利用する際の制御アルゴリズムへの拡張が期待できる.また,床の座位状態での負担軽減のための動作支援については,支援機器にある程度の自由度が必要となるため,解析結果をそのままITRの制御へ拡張応用することは難しい.この点に関しては,得られた研究成果を汎用的な骨格モデルの構築に繋げたいと考えている.上記に示したとおり,各目標に対してある程度の成果を示すことができているが,同時にその問題点も明確化しており「おおむね順調に進展している」と判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては,当初の計画通り,①ITRの製作完了とその制御アルゴリズムの確立,②身体運動状態モデルの確立とそのITR制御への応用,③身体内的状態モデルの確立とそのITR制御への応用,を考えている.但し,ITRについてはそのプロトタイプ製作の段階で,安全性,安定性の向上が重要な問題として明確になっており,それらを優先した研究の推進を予定している.また,制御システムについては電源システムを含めて小型化しシステム全体の軽量化をはかる. 次年度(平成28年度)の主課題に関連する身体内的状態モデルについて,研究分担者である満倉は本年度(平成27年度)に「単極脳波信号を用いた集中状態判別」を既に明確化しており,この成果を発展させ身体運動状態モデルとの関連性について検討を行いたい.一方で,身体運動状態モデルについては,昨年度は加速度応答に基づいた解析を中心に行ったが,今年度は画像情報を含めた解析を併用する.基本的には,ITRとそれを利用する人,また人とITRの周囲環境を考慮したITRの適応制御に帰着させる.人の支援機器,人,環境の三者の相対関係ならびに相互作用を考慮した支援機器の制御は,人の意思や環境の状態に応じたものとなり,福祉機器システム制御において重要な位置付けとなる. 平成27年度に得られた研究成果については,各課題において有用なものとなったが,課題毎に分散化した成果となってしまい,それらを融合する段階に至っていない.少なくとも,身体運動状態モデルおよび身体内的状態モデルの融合化,また身体状態の計測結果および融合モデルに基づいた福祉機器システムの制御体系を明確化したいと考えている.
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Research Products
(5 results)