2015 Fiscal Year Annual Research Report
結晶Siタンデム型太陽電池に向けたSi系ワイドギャップ新材料の探索
Project/Area Number |
15H02237
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
末益 崇 筑波大学, 数理物質系, 教授 (40282339)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 太陽電池 / シリサイド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、半導体BaSi2をベースとして、Si原子の一部を等電子的な炭素(C)原子で置換したBa(Si,C)2を薄膜成長し、結晶Si基板上にエピタキシャル成長可能な禁制帯幅が約1.6eVの半導体を作製することを目的とする。2接合タンデム型太陽電池に最適な禁制帯幅の組み合わせは、1.1eV(結晶Si)と1.6eVの半導体である。結晶Si太陽電池のエネルギー変換効率は、ヘテロ接合型で25.6%が最高であり0.6%の向上に約20年要した。結晶Si上に高品質成長が可能な禁制帯幅1.6eVの半導体を組み合わせることで、将来、Si系でも大幅なエネルギー変換効率向上が期待できるため、本研究は重要である。 まず、プロパン(C3H8)ガスをプラズマ化することで、C源として働くか否かを確認する実験を行った。プラズマ出力が40W以上では、C3H8が分解されて低次のC-H化合物が形成されること、さらに、プラズマ出力を上げると、C3H8の分解が促進されることを、プラズマのスペクトルから確認した。さらに、C源となり得ることを、加熱したSi(111)基板にプラズマを供給して、3C-SiC膜が形成されたことで確認した。 次に、CドープBaSi2膜を形成した。まず、Si(111)基板上に熱反応堆積法により厚さ5nmのBaSi2膜を成長し、これを種結晶としてCドープBaSi2膜の形成をMBE法で試みた。アンドープBaSi2膜と同様に、Si(111)基板上ではa軸配向で成長した。しかし、反射電子線回折パターンはリングであり、ドメインが面内で回転した多結晶膜であった。また、プラズマ出力が大きくなるほど、つまり、BaSi2膜中のC濃度が増加するにつれて、a軸の格子定数が減少した。減少幅は、最大約0.3%であった。この結果から、BaSi2膜中のSi原子の一部がC原子に置換された可能性が高いといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
C3H8ガスをプラズマ化することで、C源として働くことを実証し、さらに、CドープBaSi2膜のa軸高配向成長に成功した。ドープしたC量は、プラズマ出力と線形の関係にあり、C量の増加とともに、CドープBaSi2膜のa軸格子定数が減少した。 この結果から、BaSi2膜中のSi原子の一部がC原子に置換された可能性が高いといえる。このように、a軸配向したCドープBaSi2膜の形成に成功し、次年度のエピタキシャル成長達成に向けて準備が整っており、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目の実験でCドープBaSi2膜においてa軸配向膜は得られたが、ドメインが面内で回転した多結晶膜であった。ランダム粒界は少数キャリアの再結合中心となることが予想されるため、ドメインの面内回転を抑えたエピタキシャル膜にする必要がある。また、Cの添加量に比べて、a軸の格子定数の変化がかなり小さい。このため、Si原子位置だけでなく、格子間サイトにC原子が侵入した可能性がある。 そこで、結晶成功時の基板温度および堆積レートを制御し、エピタキシャル成長を実現しつつ、a軸の格子定数が大きく変化する堆積条件を見出す。平行して、第一原理計算により、C原子がBaSi2格子のどの位置に入りやすいのか、計算で予想する。 エピタキシャル成長を達成した後、次の段階として光特性評価に移る。具体的には、厚さ0.5μm以下の単結晶Si(111)膜を石英基板上に配置した透明な特殊基板を作製し、この基板上にBa(Si,C)2膜をエピタキシャル成長し、光吸収特性から1.6eVに迫る光吸収端を実証する。
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Research Products
(39 results)