2016 Fiscal Year Annual Research Report
Study of visualization of nano-magnetic dynamics and the development of the experimental techniques using synchrotron radiation
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15H02244
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
中村 哲也 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 主席研究員 (70311355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小谷 佳範 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (10596464)
岡本 聡 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (10292278)
野村 光 大阪大学, 工学研究科, 助教 (20506258)
菊池 伸明 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (80436170)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | X線磁気円二色性 / 放射光 / 軟X線 / スピントロニクス / STM |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、放射光を用いた空間分解能10 nmレベルのナノ磁化ダイナミクスの研究推進を目的として実施している。H27年度、当初計画の空間分解能(約10nm)を抜本的に上回る可能性を有する「軟X線ナノビーム走査プローブ顕微鏡(SPM)」の開発を開始し、装置本体の設計・組み立て、および、一部の基本的な周辺機器と測定ソフトウェアを開発した。そこでH28年度は、探針の振動状態制御用ロックインアンプ、および、SPM探針の位置制御用FPGAモジュールを整備した上で、SPring-8の軟X線ビームライン(BL25SU)において「10 nmスピンデバイスの先端解析のための放射光ナノビームSTMの開発(課題2016B1018)」を実施した。試料として、新たにPt(0.5 nm)/[Pt(0.5 nm)/Co(1.0 nm)]10/Pt(2 nm)/Ta(2 nm)/SiO2sub./Si多層膜を作製した。この実験で、探針電流と試料電流の2種類の方法で軟X線照射位置の検出に成功した他、軟X線ビーム照射位置とSPM短針位置を正確に調整する技術を確立した。また、放射光照射によるカンチレバーの共振周波数シフトという放射光SPM特有の問題が浮上した。そこで、共振周波数のドリフト補正システム開発し、探針位置の安定的制御を可能にした。一方、放射光軟X線によるダイナミクス計測の研究においては、放射光パルスとマイクロ波との同期技術の開発を行うことにより、歳差運動の位相検出など磁化ダイナミクス計測に必要な時間分解測定技術を確立した。特に、超高真空下でのマイクロ波実験が可能であることの確認に加え、同じ実験セットアップでの硬X線を用いた計測により、測定時間分解能は放射光のパルス幅と同程度の50 psが実現できることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H27年度に続き、技術開発として難しい課題に取り組み、多数の技術的困難を解決しながら現在の進捗を得ている。本研究を進めるなか、早くから同種技術の開発に取り組んできたスイスの放射光施設(SLS)では計画を中止したとの情報も入ったが、本研究における測定システムは設計コンセプトが異なるため直接的な比較はできない。一方、米国の放射光施設(APS)では、空間分解能2 nmでの磁気イメージングに成功しており、技術開発の方向性に関する妥当性を確認した。本研究では、軟X線をSPM短針直下の試料位置に集光した軟X線ビームを照射する計画であり、成功すれば米国APSと比較して約1000倍の効率で測定が可能となることが期待される。しかし、H28年度内にSPring-8のBL25SUにおいて実施した放射光SPM装置の性能評価において、当初の予測に反して異種信号が混入し、期待する検出信号が得られていないという解析結果を得た。そこで計画変更(繰り越し申請)の承認を受け、この問題の原因特定と解決のための再実験をH29年度のSPring-8の成果公開優先課題として実施した。その結果、高倍率電流アンプに微弱なノイズが混入していることが判明し、外部からノイズ遮蔽を徹底することで解決した。一方、放射光軟X線によるダイナミクス計測の研究においては、当初計画の発展的課題であったMCDによる時間分解計測のセットアップを構築した。硬X線で同じセットアップを用いた実験により放射光のバンチ幅と同程度の50psの時間分解が実現できることを実証し、次年度は電流励起型のデバイスを含めて軟X線によるダイナミクス計測を行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
放射光軟X線SPM計測技術の開発においては、今後、主に2つの技術課題を達成することが目標となる。第1に、世界的にもユニークな技術である軟X線集光ビームを放射光SPMの励起光源として用いること、第2にスピントロニクス材料への応用を見据えた磁気ナノドット試料を用いた実験である。前者の軟X線集光ビーム生成については、軟X線集光用の素子(フレネルゾーンプレート)を実装して光学調整を行う方針であるが、調整作業における集光状態の確認方法を確立することが課題である。まず、SPM短針からの電流検出で用いて行う方法から試行する。また、後者の磁気ナノドットとして、Si基板上に作製したパーマロイ合金(Ni-20at.%Fe)薄膜に微細加工を行い、直径2μm程度の磁気ドットが配列した試料を作製する予定である。一方、放射光軟X線によるダイナミクス計測の研究においては、より実デバイスに近い電流励起型の素子のMCD計測を行うことを計画している。
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Research Products
(4 results)