2017 Fiscal Year Annual Research Report
Innovating Ecosystem Dynamics Modeling System for Coral Reefs with Contribution for Enhancing Ecosystem Resilience
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15H02268
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
灘岡 和夫 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (70164481)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮島 利宏 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (20311631)
中村 隆志 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (20513641)
渡邉 敦 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (00378001)
名波 敦 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 西海区水産研究所, 主任研究員 (90372060)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生態系動態モデル / サンゴ礁 / トップダウン効果 / 群集構造マッピング / レジリエンス強化策 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)各種リモートセンシング画像に基づくサンゴ礁内のサンゴ、海草等の主要一次生産者の空間分布や水深のマッピング技術を高精度化し、白保サンゴ礁や名蔵湾などの重点調査サイトに適用することにより、海底地形図および海底被覆分類マップを作成した。 2)昨年度に引き続き、サンゴ、海草藻場および付着藻類の基底資源に関するモデル化を進めた。また、昨年度までに得られた上位捕食者の現地観測データを基に、上位捕食者を組み込んだトップダウン型のモデル開発の検討を行った。 3)1)の海底地形データを基に白保サンゴ礁や名蔵湾におけるサンゴ礁流動モデルを完成させるとともに、高精度海底被覆分類マップと合わせてボトムアップ型モデルを組み込むことで、環境に応じた基底資源の時空間変動を表現できるようにした。 4)サンゴから放出される粘液等の有機物から出発する食物網の解析の一環として、粘液等の溶存有機物における光分解の影響の検証を試みるとともに、前年度から行っているパルスチェイス法による食物網動態解析を継続した。光分解実験に関しては現場実験で行ったため、天候条件に左右されたこともあって、有意な光分解が起きている証拠を得ることはできなかった。またこれらと並行してトップダウン型生態系動態モデルのための基礎情報とすることを念頭に置いて、食物段階上位の魚類の食性の可塑性を評価するため、分担者の名波氏により魚食性魚類(ニジハタ)の採集が行われた。得られた試料は今後、アミノ酸化合物別窒素同位体比を用いた食物段階解析と炭素・窒素安定同位体比による基底資源寄与率解析に供せられる予定である。 5)人為的に大型藻類を繁茂させたプレートを用いてインターバル撮影を行った結果、藻類に接近する藻食魚類をリストアップできた。サンゴの白化後の影響を明らかにするために、名蔵湾近海で13地点を設け、造礁サンゴ類、サンゴ食魚類、藻食魚類の分布調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)マルチスペクトル衛星画像を用いた対象海域の生物群集マッピングに関して、spectral unmixing法やテクスチャ分類手法に加えて、機械学習型アルゴリズムの導入を試みており、マッピング精度向上が図られつつある。また衛星画像に加えて、droneによる高解像度マッピングについても検討を始めている。 2)リーフスケールでのボトムアップ型モデル開発は概ね順調に進んでいる。今後、現地観測データとのすり合わせを行うことで精度を高めていく予定である。一方、トップダウン型モデルの検討は進んでいるが、まだモデルのフレームワークが十分に議論されていない。 3)本年度予定していた研究項目の一部(浮遊卯生物群集由来沈降粒子・懸濁粒子の基底資源としての役割の解明)は分析機器の不調等の不慮の要因のために遅延しているが、その代わりにサンゴから放出される粘液物質を基底資源とする食物網について、溶存有機物の光分解実験と粘液物質のトレーサー実験を実施し、後者の成果の一部は30年5月に学会発表を行った。またトップダウンモデルにおける上位捕食者の餌選択性に関する情報を得るためのサンプリングも実施した。予定より進んでいる部分と遅れている部分があるが、全体としてはおおむね順調に進展している。 4)さらに、藻食魚類のトップダウン効果評価のための現地操作実験アプローチとしてケージによる囲い込みを用いた操作実験系を確立している。サンゴの白化現象の直前と直後における造礁サンゴ類と魚類群集のデータを蓄積しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
1)機械学習型および深層学習型アルゴリズム等の導入によるリモートセンシング画像に基づくサンゴ礁内のサンゴ、海草等の主要一次生産者の空間分布や水深のマッピング技術の高精度化を進め、白保サンゴ礁や名蔵湾等に適用することで、海底地形図および海底被覆分類マップの高品質化を図る。また、droneによる高解像度マッピングも進める。 2)昨年度に引き続き、サンゴ、海草藻場および付着藻類の基底資源に関するモデル化を進め、ボトムアップ型モデルのフレームワークの完成度を高める。2016年に、調査海域において基底資源を担っているサンゴの大規模白化が確認された。この基底資源に大きな変化を表現するために白化現象もモデル体系に明示的に組み込む。また、炭素同位体のフローのモデル化も引き続き進める。 3)前年度に機器の不調のために実施できずに繰越手続を行った水柱由来基底資源(懸濁物・沈降粒子)の動態に関する調査を実施する。得られた結果を過去のデータと統合して季節変動も視野に入れて取りまとめる。またトップダウンモデルにおいて最も重要となる最上位捕食者の餌資源選択性を解明するために前年度に採集した魚食性魚類の試料について、安定同位体比法を利用した食性解析を進める。 4)名蔵湾で複数の地点を選定し、藻類食魚類が及ぼす海底基質の藻類除去の影響を検証する野外実験を行うとともに、サンゴの白化の影響を検証するために造礁サンゴ類と魚類の調査を引き続き継続する。
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Research Products
(16 results)