2016 Fiscal Year Annual Research Report
大振幅地震動に対する伝統木造住宅の倒壊挙動の解明と耐震安全余裕度の定量化
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15H02275
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 康裕 京都大学, 工学研究科, 教授 (70324704)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多幾山 法子 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (10565534)
吹田 啓一郎 京都大学, 工学研究科, 教授 (70206374) [Withdrawn]
杉野 未奈 京都大学, 工学研究科, 助教 (80758368)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 伝統木造建物 / 倒壊余裕度 / 生物劣化 / 立体効果 / 静的加力実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
[熊本地震における住宅倒壊被害の分析] 当初計画にはなかったが、本研究のミッションである「木造住宅の倒壊余裕度の解明」を行う上で、貴重な実被害経験である。このため、急遽、熊本県益城町、西原村、阿蘇市一宮の強震観測点周辺を中心として、倒壊住宅調査を空中写真と地上目視を併用して実施した。そして、建築年代別の倒壊率を分析するとともに、観測されたパルス性地震動が、どのように住宅倒壊と関係したのかを分析した。 [劣化要素実験] 超音波法と衝撃弾性波法を用いた完全非破壊型の材料特性推定手法を、試験装置・計測方法・ヤング係数推定法をセットにして新たに構築した。ただし、ヤング係数の推定精度や解像度が向上したことで、推定値が材軸方向や断面方向で変化した。このため、部材全体のヤング係数推定や材料強度推定には、別途、新たな推定法が必要であることが確認された。 [架構実験] 層間の連成効果などの立体効果や、柱脚の浮上り・滑動の拘束効果を明らかとするとともに、耐震補強による建物の安全余裕度の変化を把握する。そこで、まず、1列3段型の典型的な京町家を想定した2層軸組架構の1 方向静的水平加力実験を実施し、層間の連層効果について検討するとともに、デザイン性に配慮した耐震補強法について検討した。また、せいの大きな大垂壁付き架構に対しても、全壁の増設や柱脚部を補強した試験体を作成して静的水平加力実験を実施して検討した。 [解析] 木材の異方性、材料非線形、接合部のめり込み・剥離・滑りなどを含む接合部の強非線形挙動を考慮し、架構の崩壊に繋がる可能性のある接合部の破壊限界を把握するための3次元解法を構築する。本年度は、京町家や大垂壁架構を対象とした実験結果について、骨組み解析モデルを用いてシミュレーション解析を行い、様々な平面架構の限界変形性能や破壊パターンについて検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画にはなかったが、交付申請書を提出した後に発生した2016年熊本地震は、甚大な木造住宅被害をもたらした。本研究のミッションである「木造住宅の倒壊余裕度の解明」を行う上で、貴重な被害経験であることから、独自に膨大な木造住宅被害データを収集した。その研究成果は、研究分担者が平成28年度日本地震工学会「論文奨励賞」を受賞するなど、高く評価されている。 一方、非破壊のヤング係数推定法についても、新規性の高い高精度・高解像度の手法を提案できた。しかし、部材全体のヤング係数や曲げ強度の推定に関して、これまで先行研究では見過ごされてきた新たな研究課題が見つかった。 架構実験については、1層と2層の層間連成効果については、実験によって十分な成果が得られているものの、構面間連成効果については実施に至っていない。 以上を総合して自己点検評価すると、概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
熊本地震における住宅倒壊被害の分析については、木造住宅の倒壊率被害関数を構築するとともに、倒壊余裕度を定量的に分析する。 劣化要素実験については、部材のヤング係数と材料強度の推定法の構築を行う。また、解体住宅から切り出した部材を対象にした非破壊検査と、劣化部材から切り出した小試験体の曲げ試験を行って、劣化度と材料強度の低下度の定量的評価を行う。 架構実験については、京町家を想定した2層軸組架構を対象と大垂壁付き架構を対象として、倒壊余裕度を増大させるような耐震補強法の構築を行う。立体効果については、予算や時間的な制約から、解析的に検討を進めることと方針変更する。 解析については、倒壊挙動を実用的な簡略さで追跡可能な設計用解析モデルとして、魚骨形モデル、あるいはそれに代わる簡易な設計用解析モデルを提案する。
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Research Products
(20 results)