2017 Fiscal Year Annual Research Report
噴霧脱臭・除菌と置換換気の複合による快適・安全な病室換気システムの開発研究
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15H02279
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山中 俊夫 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80182575)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
甲谷 寿史 大阪大学, 工学研究科, 教授 (20243173) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 置換換気 / 咳飛沫核 / 2流体ノズル / 次亜水 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度においては、大きく、2つのテーマについて研究を進めた。 1つは、置換換気される病室内において、患者の咳によって発生した飛沫に起因する飛沫核が置換換気される室内においてどの様に移動、拡散していくかという観点での検討であり、もう一つは、次亜水を噴霧することによって、脱臭を行う技術において、これまで用いたノズルではなく、小流量で微細なポータブルタイプの噴霧器を用いて、次亜水を噴霧した場合の消脱臭効果についての検討である。 前者の検討においては、人工気候室をベースに、吹き出し口を置換換気用に床面近くの低速吹き出し給気口に変更をし、給気チャンバーの断熱性を向上させることによって、病室を模擬した置換換気室を作成、その置換換気室内で、咳マシンを用いて人工的に咳を発生させた。咳には、生理食塩水と同等の濃度の食塩水を用いることで、ミストの飛沫が気中で蒸発し、飛沫核を模擬した食塩の粉末が室内に漂うことになる。給気口には、HAPAフィルターが付けられており、飛沫核の分布をパーティクルカウンターを用いて測定することが出来る。実験の結果、置換換気室で境界面の上部と下部で、飛沫核の量や粒径分布が異なることが明らかになり、また、咳の高さや方向によって、飛沫核の拡散性状が異なることも明らかになった。患者相互の感染を防ぐためには、仰臥状態で、上向きに咳をするのが最も感染を防止することがわかった。 後者の検討においては、既製品の噴霧器を例として採用し、次亜水ミストの噴霧性状をPDA(Phase Doppler Anemometer)とPID(Particle Image Velocimetry)によって把握を試みた。用いたノズルは小型の2流体ノズルであるが、これまでの研究と同様に、噴霧ミストの速度分布は正規分布であり、噴流式の適用が可能で、重力による下降の存在を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、研究の開始から、ちょうど三年目の研究成果であり、初年度に購入したPDAによる噴霧粒径に関する様々な測定を行って来て、今年度は、置換換気を導入した実際の病室(4床病室)を対象とした非常に現実的な条件での飛沫核分布の測定を行うことができた。また、実験を説明するために、置換換気のゾーンモデルをベースとした、飛沫核分布の予測計算モデルの開発に着手することができ、次の年度への研究の展開も順調に進められている。一方、前年度まで用いていた汎用的な2流体ノズルでは、空気中で次亜水ミストが完全に蒸発せず、病室の床を濡らしてしまうことが大きな問題点として、実用化の障害となっていたが、今回用いた市販のノズルは、気中で完全にミストが蒸発することから、実用的な消脱臭方法として確立できる可能性がある。現状では、市販品をそのまま利用しているだけであるが、今後は、その消脱臭性能の検証と予測性能の把握を行うことによって、様々な用途の室に応用のできる汎用的な性能予測手法の確立ができると考える。 研究を立案した当初の研究目的は以下の5つであるが、これまでに、(1)、(2)、(3)について研究を進めてきた。それぞれの手法を完全に確立できたわけではないが、残る研究期間の2年の間に、確立できるものと考えられ、その意味で本研究は概ね順調に進展していると言うことができる。(4)と(5)については、今後取り組む課題である。
1.噴霧ミストの挙動解析と脱臭効果の予測・評価法の確立 2.置換換気時における室内立位人体(医療関係者、外来者)及び患者の呼吸空気質(臭気濃度、暴露飛沫核数)の予測手法の開発 3.咳嗽による飛沫・飛沫核の挙動解析手法の確立 4.ベッド周囲の外乱条件(カーテン、ドアの開閉、人体移動)が室内汚染物濃度、飛沫核数の分布に及ぼす影響の解明 5.付加気流+ミストによる汚染物・飛沫核の暴露防止効果の予測
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策であるが、当初の研究目的で掲げている以下のテーマのうち、(1)、(2)、(3)を完全に確立することと、(4)、(5)の研究に着手することである。 (1)噴霧ミストの挙動解析と脱臭効果の予測・評価法の確立 (2)置換換気時における室内立位人体(医療関係者、外来者)及び患者の呼吸空気質(臭気濃度、暴露飛沫核数)の予測手法の開発 (3)咳嗽による飛沫・飛沫核の挙動解析手法の確立 (4)ベッド周囲の外乱条件(カーテン、ドアの開閉、人体移動)が室内汚染物濃度、飛沫核数の分布に及ぼす影響の解明 (5)付加気流+ミストによる汚染物・飛沫核の暴露防止効果の予測 ただし、(5)の付加気流+ミストによる汚染物・飛沫核の防止技術の開発に関しては、病室での在室者の特性を十分に考慮して可能な方法を探る必要があると考えている。研究申請時には、ベッドの両脇から、上向き方向にファンで気流を起こす方法を想定していたが、ファンによる強制対流は、飛沫核の上方への拡散を大きくし、医者や看護師など、立位の医療従事者に取って感染の確率を高める危険性がある。そこで、放射パネルの様なも自然対流を用いる上昇気流によって、飛沫核に空気汚染物質を置換換気室の上方に送り、拡散させずに室外に排出する方法を検討したいと考えている。
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Research Products
(10 results)