2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H02284
|
Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
箱崎 和久 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 室長 (10280611)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 由紀子 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (40450936)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 発掘遺構 / 建築遺構 / 寺院建築 / 古代 / 出土瓦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、基礎的な作業となる建築遺構の収集および瓦磚類の収集を中心として、作業をおこなった。 まず、建築遺構の収集では、奈良文化財研究所が公開している古代寺院遺跡データベースを活用し、近畿6県、四国4県、および中国5県のうち岡山・島根・山口各県のデータ収集をほぼ終了した。遺構には、金堂・講堂・塔・門・回廊・僧房・食堂などがあるが、性格が明確でない遺構も少なくない。また、瓦の散布等により、寺院遺跡と考えられながらも、遺構が明確でないものもある。たとえば大阪府では、遺跡数137件に対し、遺構を確認できたのは62遺跡と半数以下に留まるが、開発によってすでに失われた遺跡が多いとみられる。これらを総合すると、平成27年度には、461の遺跡で遺構を確認し、このうち金堂が139件、講堂が78件、塔が224件、門が145件、等であった。 瓦研究の成果は、主として軒瓦の同笵関係と製作技法の把握、道具瓦の収集に主眼を置き、やはり古代寺院遺跡データベースを活用しながら、近畿・中国・四国・九州・中部・関東の一部について、366ヶ寺のデータを収集した。 以上の収集データについて、データベースの作成およびその分析作業もおこなう予定であったが、予想どおり遺構の収集に時間を要したため、データの収集を優先させた。 東アジア諸国の事例収集については、日本にも大きな影響を与えたと考えられる新羅・皇龍寺について分析した、梁正錫『皇龍寺の造営と王権』(2004年)の翻訳作業を進めた。また、身舎のみの単純な平面をもつ建築で、手先を出す複雑な組物をもつ実例について、中国山西省南西部に赴いて資料収集をおこなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
建築遺構および出土瓦の資料収集に関しては、大学生・大学院生を使って進めている。古代寺院遺跡データベースのおかげで、対象とする寺院遺跡とその資料については、東北地方を除き目処をつけることができている。寺院遺跡が集中している近畿圏の資料収集にどれくらいの時間がかかるのかが、始めてみないとつかめず、当初は近畿圏だけで1年を費やすことも覚悟していたが、思いのほか早く、順調に進んでいると判断している。ただしデータベースの作成は、今年度はおこなわなかった。それは、データの扱いについて、判断基準を一定に保つ必要があり、継続的に短期間でおこなうという方法をとりたいためであった。これは瓦研究の場合も同様で、同笵関係などの判断には、研究者の見識を求められる部分があるため、単にアルバイトの学生をふやせばできるものではないことを再認識した。順調とは言え、これをふまえて今後の作業を見通す必要がある。また、資料となる発掘調査報告書は、毎年新たなものが出版されていくので、できる限りそういったデータを漏らさず収集するための努力が必要だが、完全を期すことはおそらく不可能で、どこで線引きをするかの見きわめがやや難しい。 また、平成27年度に雇用したアルバイトが4月で一部が入れ替わる、あるいはカリキュラムの変更などで勤務日数が異なってくるなどのため、新たな人材の確保や、作業体制の変更などが生じてくる。この点は当初からわかっていたこととは言え、新たな課題である。いずれにしてもこの集成作業をできるだけ円滑に済ませることを重点的に考えていきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後もまずは遺構の集成作業と、瓦関係の資料の集成作業を重点課題として進めていく。そのうえで、データベースの作成を開始したい。データベース作成の作業は、少人数でできるだけ短期間におこなうことができるよう、体制を作りたい。瓦研究については、古代の地方寺院においては瓦生産や流通について、官衙遺跡と密接な関連がある場合が多いため、官衙関連遺跡についても同様の集成作業をおこなう予定である。支障収集の分析作業は、データベースの成果をふまえておこなっていきたい。 東アジア諸国の事例収集については、梁正錫『皇龍寺の造営と王権』(2004年)の翻訳作業を進めて完結させたい。その他の資料収集もおこないたいが、上記の集成作業に重点的に力を注ぎ、その予算的・時間的な余力を勘案しながら遂行したい。
|