2017 Fiscal Year Annual Research Report
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15H02284
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
箱崎 和久 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 室長 (10280611)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 由紀子 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (40450936)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 発掘遺構 / 建築遺構 / 寺院建築 / 古代 / 出土瓦 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、基礎的な作業である建築遺構と瓦類の収集作業を行った。またデータベース作成作業を進めた。建築遺構の収集では、今年度で全国の都府県の資料収集作業は終了した。今年度は、富山・三重・長野・茨城・群馬・埼玉・千葉・東京・岩手・山形・宮城の11都県の作業を行った。北海道・青森・秋田には対象となる遺跡がなかった。 関東・東北・北陸地方では、整った伽藍配置を備えた寺院(遺跡)は、国分寺を除けば数が少なく、いわゆる山林寺院や村落内寺院といった、整った伽藍配置をもたない遺跡や、掘立柱による仏堂と想定できる遺跡が多い。特に村落内寺院は、遺構だけでなく出土遺物の共伴状態などから、その性格を捉えられる場合が多い。そのため遺構の収集がやや難しく、今後のデータベース化の方法等について検討すべき課題となった。 以上を踏まえ、今年度は11都県の124遺跡で寺院遺構(村落内寺院等の仏堂を含む)を確認した。金堂32件、講堂26件、塔27件、門42件、食堂2件、付属院5件などである。その他の、平地寺院で検出した性格不明の仏堂、山林寺院で堂塔名を比定できないもの、あるいは村落内寺院における仏堂などは140件に達した。今年度後半にはデータベース作成作業に移り、近畿・中国地方がほぼ終了してきている。 瓦資料の収集は、寺院関連と関連する官衙について、一通り全県の収集作業が終了した。やはり北海道・青森・秋田・沖縄には古代寺院の瓦を確認できていない。寺院については560遺跡、官衙については90遺跡のデータを収集した。先行研究を踏まえて神奈川県より西では補足する必要がある。 東アジア諸国の事例収集については、中国河南省ギョウ南城で中国社会科学院考古研究所が発掘調査中の東魏北斉期の寺院遺跡に赴いて遺構を実見するとともに、山西省東南部で、身舎のみで手先をもつ組物を備えた寺院建築の事例をいくつか実見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
寺院遺構および出土瓦の集成に関しては、大学生・大学院生を使って作業を進めているが、思いのほか大学の授業の履修が厳しいため、作業をしてもらえる時間が少なかったのが原因の一つである。また職場の環境の変化により、学生の作業できるスペースが限定されてしまう場合があり、作業スペ ースについては検討する必要が生じている。 次段階のデータベース作成作業に入っているが、現在のところ、伽藍配置が明確な堂塔についてデータ入力している。これは当初から予定していた作業のため問題は少ないが、上記の理由でやや遅れ気味である。前述したように、村落内寺院等の堂塔のデータベース化に向けて、入力方法の再検討をおこないたい。データベース化に向けては、報告書を読み込む必要があるため、適切な指導とチェックを施す必要があり、日常業務の多寡により、十分な対応がとれない場合もあった。これらについては円滑に進むように工夫したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は発掘遺構および瓦研究の集成とそのデータベース入力を重点的におこなっていく。発掘遺構のデータベース化については、具体的なデータベース入力をおこなう前に、県ごとに、平地寺院、山林寺院、村落内寺院にまず分類し、それらに対応したデータ入力になるよう、方針をやや変更することとしたい。さらに収集資料の成果を報告書としてまとめることができるよう調整を進める。データが整った部分から、資料集のレイアウト作業をおこないたい。それらの作業のため、大学生・大学院生の確保をおこなうとともに、作業手順やスペースも検討して作業を円滑に進めることができるようにしたい。9月には新庁舎への引っ越しがあるが、大学生や大学院生が適切なスペースが確保できるように努める。
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