2016 Fiscal Year Annual Research Report
木質系バイオマス構成基本構造を単離して石油系化学物質を製造する触媒プロセスの開発
Project/Area Number |
15H02314
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
増田 隆夫 北海道大学, 工学研究院, 教授 (20165715)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多湖 輝興 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (20304743)
吉川 琢也 北海道大学, 工学研究院, 助教 (20713267)
中坂 佑太 北海道大学, 工学研究院, 助教 (30629548)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 化学工学 / 反応工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、木質系バイオマスの構成成分に含まれる所望の結合を分解し基本骨格構造を単離する触媒プロセスを開発し、化成品へ変換するシステムを提案する。研究代表者らが開発した水/有機溶媒を用いた木質系バイオマスの処理では、リグニンを可溶化し有機相に回収することができる。そこで本年度は、モデル物質を用いて抽出リグニンの分解によるフェノール類合成、生成フェノールの官能基変換による樹脂原料モノマーの合成について実施した。 1)低分子リグニンのモデル物質としてベンゾフラン、ジベンジルエーテルを用い、Pt/Al2O3触媒存在下、メタノール溶媒中でのin-situ水素化分解を行った。メタノール分解により生成した水素により、各モデル物質に含まれるフラン環、エーテル結合が水素化され、単環フェノール類が得られることを見出した。 2)リグニン由来フェノール類のモデル物質としてメトキシ基を含有したグアヤコールを選定し、ベンゼン溶媒中でMFI型ゼオライトによる反応を行った。メトキシ基の分解により、カテコールとトルエンの生成が見られたが、2環以上の生成物が副生した。よって、フェノール類中のメトキシ基は、本反応の前段階で処理することが有効であると示唆された。 3)リグニン由来フェノール類の官能基変換として、バニリンのアルデヒド基の酸化、p-クマル酸のフェノール性水酸基のアミノ化を検討した。バニリンの酸化は、金属酸化物のスクリーニングにより、酸化銀においてバニリン酸が得られることを確認した。また、p-クマル酸のスマイルス転移では、アミノ化剤の付加によりフェノール性水酸基がアルキル化された中間体が収率よく生成していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)低分子リグニンの化学結合分解による単環芳香族化 モデル物質としてベンゾフランを採り上げ、Pt/Al2O3触媒存在下、メタノール溶媒中、アルゴン雰囲気でのin-situ水素化分解を行った。220℃で反応を実施することでメタノール分解により生成した水素によってフラン環が選択的に水素化され、単環フェノール類が得られることが分かった。また、エーテル結合を有するモデル物質としてジベンジルエーテルを用いた場合も、ベンゾフランと同じ反応条件においてエーテル基の水素化分解が進行し、単環フェノール類が得られることを見出した。 2)リグニン由来アルキルフェノールの脱アルキル化と芳香族の併産 ゼオライト触媒を用いたリグニン由来フェノール類からの樹脂原料合成における基質適用性を検討するため、メトキシ基を含有したグアヤコールを用い、MFI型ゼオライトによる反応を行った。メトキシ基の分解により、カテコールとトルエンの生成が見られたが、その生成比は量論比と異なり、かつ2環以上の生成物が副生した。これは、トルエン生成過程のメチルカチオン種が不安定であるため、重合反応を含む副反応が進行したためと考えられる。これより、リグニン由来フェノール類中のメトキシ基は、トランスアルキル化の前段階での処理が必要であると示唆された。 3)リグニン由来フェノール類の官能基変換による高付加価値物質への転換 リグニン由来フェノール類に、カルボキシル基、アミノ基を導入することで、樹脂原料モノマーへ転換できる。バニリンを原料に、金属酸化物によるアルデヒド基の酸化を検討し、酸化銀においてバニリン酸が得られることが分かった。p-クマル酸を原料に、スマイルス転移によるフェノール性水酸基のアミノ化を検討した結果、アミノ化剤の付加によりアルキル化された中間体が収率よく生成していることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
木質系バイオマス成分の基本骨格構造を単離し、石油関連化学原料へ変換する触媒反応プロセスを開発するため、これまで利用が限られてきたリグニン由来成分の分解・変換反応を中心に研究を実施する。 1)低分子リグニンの化学結合分解による単環芳香族化:難分解性官能基であるベンゼン環に直結したエーテル基(ジフェニルエーテル、メトキシベンゼン)の水素化分解を実施し、単環芳香族が得られる反応条件を検討する。さらに、有機溶媒相に回収された実リグニン由来オリゴマー成分に対して本触媒反応系を適用し、in-situ水素化分解による単環芳香族の回収を実証する。 2)リグニン由来アルキルフェノールの脱アルキル化と芳香族の併産:ゼオライト触媒によるアルキルフェノールのトランスアルキル化反応は、これまで回分式反応器により実施したが、これを固定床流通式反応器に展開する。熱履歴の影響の低減によるコーク析出の抑制、生成フェノールの逐次消費の抑制が期待され、それに伴いフェノール収率の向上を図る。 3)リグニン由来フェノール類の官能基変換による高付加価値物質への転換:スマイルス転移によるフェノール性水酸基のアミノ化では、アルキル化された中間体が生成したことを確認した。反応原料、アミノ化剤、反応条件を精査することにより、転移反応が進行する条件を明らかとする。また本反応は、芳香環への求核性が転移反応に必要であるため、DFT計算により芳香環電荷密度を計算し、反応原料、アミノ化剤の選定にフィードバックする。上記検討に基づき、リグニン由来フェノール類からの芳香族樹脂原料モノマー合成プロセスを提案する。
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Research Products
(7 results)