2016 Fiscal Year Annual Research Report
超伝導転移端センサが実現する粒子線治療用線量標準の高精度化
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15H02341
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大野 雅史 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (90391896)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松藤 成弘 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 加速器工学部, チームリーダー(定常) (00280743)
浮辺 雅宏 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (00344226)
清水 森人 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (20613988)
大谷 知行 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, チームリーダー (50281663)
松崎 浩之 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (60313194)
神代 暁 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (60356962)
坂間 誠 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 病院, 主任研究員(定常) (80455386)
黒澤 忠弘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (90356949)
佐藤 泰 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (90357153)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 超伝導転移端センサ / 重粒子線 / カロリメータ / 線量計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
重粒子線の粒子1つずつのエネルギーを高精度に計測しうる超伝導転移端センサ(TES)の開発を進めている。前年度までに確立した、超伝導Ir/Au薄膜温度センサ上に重金属バルクやグラファイトの重粒子線吸収体を搭載する素子の作成プロセスをベースとして、本年度はまず、重粒子吸収体をIr/Au薄膜上に搭載固定する時の台座の役割を担う金バンプの個数、配置位置が異なる素子を作成した。そしてγ線源を用いた応答評価を行った結果、2個の金バンプポストを用いてスズ製重粒子吸収体を搭載固定した素子で高S/Nおよび速い応答速度等の優れた特性が得られることがわかった。さらにこの検出素子と信号増幅用dc-SQUIDアレイ増幅器を寒剤フリー希釈冷凍機内に組み込んだTES検出システムを放射線医学総合研究所HIMACのPH2ビームポートに設置し、重粒子線検出実験を実施した。100MeV/uのHeイオン及びCイオンビームをアルミ板を透過して適度に減速させ、TESに照射してその応答を計測した。これらの重粒子入射によるTESの応答では、パルスの先端が平らになる飽和波形が観察され、検出素子の温度上昇が超伝導転移領域を超えて一時的に完全に常伝導に移行することが確認された。このような飽和波形において、入射エネルギーは信号の飽和時間により見積もることが可能となる。TRIMコードにより、Heイオンビームを通過するアルミ板の厚さを34cm、35cm、36cmと厚くするに従い、Heイオンのエネルギーが減速され、0.3mm厚のスズ重粒子吸収体内のHeイオンのLET(線エネルギー付与)が増加することを見積もられるが、実際にTESに照射した波形の飽和時間を解析したところ、計算により見積もられるLETの増加にしたがって、TES応答波形の飽和時間も増大する傾向があることが確かめられ、TESによる入射重粒子のエネルギー検出の実証に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題実施2年目において本研究課題におけるもっとも重要なタスクであるHIMACでの超伝導転移端センサによる重粒子のエネルギー計測が実証された。そして入射重粒子の検出器内でのLETと入射応答パルス形状、飽和時間の関係の詳細が明らかになりつつあり、高精度な重粒子のエネルギー計測を実現する目途がつけられる段階に到達しており、本研究は順調に進展しているものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度のHIMACでのTES照射実験において、検出素子の重粒子吸収体部を通過した重粒子ビームが超伝導薄膜温度センサ部あるいはその下のシリコン基板や冷凍機コールドステージ台座に到達・吸収されることにより、大きなノイズが生じ、これが重粒子のエネルギー計測精度の劣化を引き起こすことが明らかになってきた。これは、超低温下でのカロリメータとしての高感度ゆえ生じるデメリットと言えるが、重粒子線のエネルギー計測精度をさらに向上させるためには、この検出器を通過後のビームの冷凍機極低温空間内での相互作用を如何に抑制するかが、鍵を握るものを考えられる。来年度以降は、検出器と重粒子ビームの入射体系、配置を改善し、透過ビームが災いするノイズの低減を図る対策を講じつつ、重粒子エネルギー検出精度の向上を図る予定である。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Superconducting Transition Edge Sensor2017
Author(s)
Masashi Ohno, Tomoya Irimatsugawa, Hiroyuki Takahashi, Chiko Otani, Takashi Yasumune, Koji Takasaki, Chikara Ito, Takashi Ohnishi, Shin-ichi Koyama, Shuichi Hatakeyama, R.M.Thushara Damayanthi
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Journal Title
IEICE TRANSACTIONS ELECTRONICS, INVITED PAPER
Volume: E100-C No.3
Pages: 283, 290
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Study of Nb and NbN Resonators at 0.1 K for Low-Noise Microwave SQUID Multiplexers2016
Author(s)
T.Irimatsugawa, F.Hirayama, H.Yamamori, S.Kohjiro, A.Sato, S.Nagasawa, D.Fukuda, M.Hidaka, Y.Sato, M.Ohno, H.Takahashi
Organizer
Applied Superconductivit Conference 2016
Place of Presentation
アメリカ、コロラド州
Year and Date
2016-09-04 – 2016-09-09
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