2015 Fiscal Year Annual Research Report
シードフリー環境適合型クリーンMHD発電の実用化に向けた基盤構築
Project/Area Number |
15H02346
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
奥野 喜裕 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 教授 (10194507)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤野 貴康 筑波大学, システム情報系, 准教授 (80375427)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | MHD発電 / 電力工学 / エネルギー効率化 / 省エネルギー / 電磁流体力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,従来の研究では煩雑ながらも不可避とされてきた「シード」(作動気体への金属蒸気の微量添加)のフリー化という既成概念を大きく転換するブレークスルーを,本研究代表者の過去から最新にわたる一連の独創的な研究成果に立脚して達成し,「シードフリー環境適合型クリーンMHD発電」の実用化に向けた新たな突破口を開く基盤を構築することを目的とする。本年度(平成27年度)は,本研究の主題である低温度動作化に向けての基礎を確立することを念頭に置き,リニア形状ファラデー形MHD発電機ならびにディスク形状ホール形MHD発電機を衝撃波管実験装置に組み込み,前者では実績のあるアルゴンArでの更なる高性能化に向けた指針を [(1) M.Tanaka, T.Murakami, Y.Okuno, "Numerical Simulation of Performance of a High Temperature Inert Gas Plasma Faraday-type Magnetohydrodynamic Generator", Journal of Propulsion and Power, Vol.31, No.5, pp.1362-1369 (2015.10)] ,また後者では発電機内のプラズマ電磁流体の挙動を明らかにするとともに[ (2) 田中 学,奥野喜裕「高温希ガスプラズマディスク形状MHD発電機内のプラズマ挙動」電気学会論文誌B,135巻,8号, pp.527-532 (2015.8) ],より電離電圧の低いキセノンXeにおける低温度動作化を実証した[(3) 田中 学,泉裕一朗,奥野喜裕「キセノンを作動気体とする高温希ガスプラズマディスク形MHD発電機の発電特性」電気学会論文誌B,136巻,2号, pp.205-210 (2016.2) ]。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究実績は上の「研究実績の概要」で述べたとおりで,当初の予定どおり,初年度に達成すべき成果は得られており,本研究の目的の達成に向けてその基盤を確立している。具体的には,上記性成果論文(1)では, リニア形状ファラデー形MHD発電機におけるAr高温希ガスプラズマMHD発電で得られている発電性能(エンタルピー終出率12.9%)に対して数値計算からその妥当性や理論的裏付けを行い,それに基づいて,入口全温度の発電性能やプラズマの安定性・均一性への影響について詳細に検討し,高性能化に向けた指針を明確にしている。一方,成果論文(2)では,ディスク形状ホール形MHD発電機による高温希ガスプラズマMHD発電についてr-θ二次元解析からプラズマ挙動について検討を行い,入口全温度の増加により発電機内の電子はクーロン衝突を支配的とすることで発電機内プラズマは電離不安定の抑制された安定な状態となることや,ディスク形発電機では,ファラデー形発電機比べ,電子温度が増加しやすく,中性粒子との衝突断面積が大きくなることから,発電チャネル内でプラズマがクーロン衝突を支配的とし,安定化するために必要な入口電離度(入口全温度)は高くなることなどを指摘した。更に成果論文(3)では,Xeを作動気体とするディスク形MHD発電機による高温希ガスプラズマMHD発電実験を行い,Arを作動気体としたときには十分な電離度が得られずエンタルピー抽出率が1%未満であった入口全温度7000Kにおいて,Xeを作動気体流体とするとエンタルピー抽出率4.8%が得られ,Xeを作動気体とすることでの低い入口全温度での発電を実証した。これらの初年度おける主な研究成果は,確実に次年度以降の本研究の進展に資するものとなっており,「おおむね順調に進展している」と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(平成28年度)は,「シードフリー環境適合型クリーンMHD発電」の実用化に向けて,その基礎技術となる予備電離手法の確立を念頭に置いた研究に発展させる。具体的には,下記の2点に焦点を絞って遂行する。 1)リニア形状ファラデー形MHD発電機でのXe作動気体による低温度動作化実証実験ならび数値シミュレーションによる作動気体依存性の把握と高性能化指針の明確化 まず平成27年度に実証したディスク形状ホール形MHD発電機でのXeにおける低温度動作化をリニア形状ファラデー形MHD発電機においても実証する。その際に,プラズマの安定性,均一性の観点からXeの優位性を明らかにする。一方で,同一形状の発電機ではXeはArに比べて性能が低下することが予測されることから,数値シミュレーションにより作動気体依存性ならびに高性能化指針を明確化にする。 2)予備電離・プラズマ制御手法の基礎技術の構築 シードプラズマ方式において研究代表者が独自に発案・開発し,多くの有用な実績を持つ高周波誘導加熱による予備電離手法の適応可能性を探る。その基礎実験として,希ガスの亜音速,超音速流れに対して高周波電磁界を印加し,プラズマの生成を試みる。その際に生成されるプラズマの構造や挙動を明らかにし,予備電離に適する条件を見いだす。高周波生成プラズマは,様々な分野で利用されているが,超音速流れといった高速流体中でのプラズマ生成はほとんど研究例がなく,その生成過程は学術的にも意義深い。一方で,数値解析において,より詳細なプラズマ生成モデルを構築し,実験結果との比較からその信頼度を高め,予備電離・プラズマ制御手法の基礎技術を構築する。
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Research Products
(11 results)