2017 Fiscal Year Annual Research Report
In-situ複合計測によるリチウム/酸素の移動・反応の統合的解明と電池高性能化
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15H02347
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
平井 秀一郎 東京工業大学, 工学院, 教授 (10173204)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植村 豪 東京工業大学, 工学院, 特任准教授 (70515163)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リチウム空気電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
リチウム空気電池の高性能化については,放電または充電の反応が進行するとき、どのような物質がどのような形態で多孔質の電極内で析出または溶出するかという電池内部の核心的な現象の解明が必要不可欠である.そこで本年度は放電時の正極内の酸素輸送現象に着目し,電池性能の向上を目指した実験を実施した. これまでの実験ではミクロスケールの空隙を有するカーボンペーパーを用いていたが,本年度は反応面積を増大できるよう,ナノカーボン材料を用いた正極を製作し,電極構造が放電特性と反応生成物の析出におよぼす影響について調べた. 実験では,比表面積の大きいカーボンブラック,及びCVD法で合成された高結晶性カーボンナノチューブVGCFを用い,それぞれをバインダーのPTFEと混合させることで高比表面積をもつナノ構造電極を作成した.実験の結果,従来のカーボンペーパー正極と比べて,ナノ構造正極では放電特性が向上することが分かった.しかし電極内に生じた放電析出物の分布を調べたところ,析出物が電極表面に偏在しており,電極深部まで酸素が到達していないため,高比表面積の電極構造が有効に活用できていないことが明らかになった. そこでカーボンペーパー上にカーボンブラックを塗布した,複合的な構造を有する正極を作製したところ,高電流密度条件において,カーボンブラックのみで作製したナノ構造電極よりも高い性能を示すことが明らかになった.これはカーボンブラックにミクロスケールのクラックが存在しており,ミクロ・ナノスケールの空隙が混在した多孔質構造が形成されている結果,電極の深部まで酸素が効率良く供給されたためであると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来のリチウム空気電池では,空隙率と比表面積の均質な電極構造が用いられてきたが,本年度の研究では電極表面と内部で空隙率と比表面積が異なる複合構造を有した正極を作製し,濃度過電圧を抑制できる結果が得られている.これは以前に実施した正極内酸素濃度のその場(in-situ)計測の結果とも合致しており,今後の電池の高出力化に向けた指針を得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究から,電極内で空隙率と比表面積を適切に変化させた複合構造の方が,濃度過電圧が抑制できる結果が得られた.しかし濃度過電圧を最も抑制できる電極構造はまだ明らかではない.このため,電極の構造パラメータを変化させた実験を行い,高い電流密度を実現できる電極構造を明らかにする予定である.また,正極に空気ではなく酸素を直接供給した際,電池性能や,放電析出物の種類,および析出物の分布形態の変化についても検討を進める予定である.
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Research Products
(3 results)