2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15H02380
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
高村 典子 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, フェロー (80132843)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今藤 夏子 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 主任研究員 (10414369)
山口 晴代 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 研究員 (20722672)
中山 剛 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (40302369)
辻 彰洋 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (40356267)
角谷 拓 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 主任研究員 (40451843)
松崎 慎一郎 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 主任研究員 (40548773)
牧野 渡 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (90372309)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生態学 / 湖沼生物モニタリング / 次世代DNAシーケンス / 因果関係推定解析 / 生態系観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
将来の環境メタバーコーディングにより、プランクトンの群集組成が、他の生物群と同一の環境サンプルを使って解析可能となることを目指し、霞ケ浦湖内で採集した動物プランクトンのうち、すでにCOI領域の配列情報が得られた62タクサについて、18SrRNA遺伝子の配列情報を解析した。また、植物プランクトンの種レベルでの群集組成の可能性を検討するため、珪藻の葉緑体rbcL遺伝子およびシアノバクテリアのITS領域を用いた解析を行った。昨年度に引き続き、シアノバクテリア、真核藻類のrRNA遺伝子アンプリコン解析および霞ヶ浦から得られた藻類培養株のDNAバーコーディングを進めた。
消化管内容物からDNAを抽出した。本研究で作成したワカサギのCOI遺伝子に特異的なブロッキングプライマーを用い、次世代シーケンサーでCOIの塩基配列を解析した。その結果、ケンミジンコ等の動物プランクトンやユスリカなどの配列が検出され、9月はイサザアミを摂食しないことなど、採集時期による食性の違いを示唆するデータが得られた。また、炭素窒素安定同位体の分析からも、6月から9月にかけて、ワカサギの炭素同位体比に変化が見られたことから、この短い期間に食性が変化したことが示唆された。
最新の因果関係手法であるCCM(Convergent Cross Mapping)法を用いて、霞ヶ浦の一次生産量を決める要因について分析した。一次生産量は、水温、溶存態リン濃度(PO4-P)、溶存態窒素濃度(DIN)等のボトムアップ要因に強い影響を受けていた。一方、動物プランクトンによるトップダウン効果は認められなかった。むしろ、一次生産量がワムシ類や小型動物プランクトンの密度に影響を与えていた。このことから、霞ヶ浦のような富栄養湖では、栄養塩→一次生産→動物プランクトンというボトムアッププロセスが働いている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度に取得した藻類培養株のDNAバーコーディング情報を日本DNAデータバンクに登録した。明らかになったこれまでの種同定の間違いは修正を行った。既存の霞ヶ浦原生生物相の調査結果を整理し、形態的特徴をもとに約580種の存在を確認した。そのうち、NGSデータ等から珪藻、シアノバクテリアを除いた中で存在量が多いクリプト藻に関して分子データとの突き合わせを行い、形態・分子データ間に矛盾がないことが確認できた。珪藻rbcL遺伝子を用いたメタゲノム解析を、昨年度シアノバクテリア解析を行った試料について実施した。珪藻rbcL遺伝子を用いたNGS解析ではほぼ種レベルでの解析が可能であるもの、Stephanodiscus hantzschii-minutulus 種群などでは、種群レベルの解析しか出来なかった。シアノバクテリアのカビ臭(2-MIB)産生に関わるPseudanabaena属に特異的なITS(16S rRNA - tRNA-Ala)遺伝子を用いたメタゲノム解析では、カビ臭非産生種と思われるOTUが多く見られた。霞ヶ浦産の動物プランクトンにおいても、得られたmtCOIおよびmt16S・DNAバーコーディング情報を日本DNAデータバンクに登録し、いくつかのタクサでは同定の修正を行った。さらに18SrRNA遺伝子の配列情報を解析した。
ワカサギの同一個体において消化管内容物のDNA解析と同位体解析の各データが順調に得られた。これにより、ワカサギに伴う餌種の構成や競争者の変化に関する考察が進んだ。また、ワカサギの餌生物であるイサザアミ等についても、予備的な消化管内容物の遺伝子解析を行い、食物網解析の手法検討を進めた。
時系列データの因果関係解析を、着実に進めた。食物網解析の基盤となる情報の統合整理を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
バーコーディングが終わっていない藻類培養株について、引き続き、DNAバーコーディングを進める。シアノバクテリア・珪藻・Pseudanabaena属のメタゲノム解析と、国立環境研究所で実施されてきた植物プランクトンの計数結果について突き合わせを行い、NGSを用いたメタゲノム解析と従来の計数解析の特質を明らかにすると共に、霞ヶ浦の植物プランクトンフロラについての精度を高める。また形態情報とDNA情報を統合したデータベース構築を進める。 ワカサギの食性についてDNA解析と同位体分析を引き続き行い、ワカサギの主要な餌構成種の季節変化を明らかにするとともに、サブテーマ3の食物網解析・モデル構築に知見を提供する。ワカサギの主要な餌生物と考えられるイサザアミについても、同様の食性解析を行う。 一次生産量を決める要因について、地点間(特に湾部と湖心)に差異がないか調べる。また、サロゲート法を用いて、CCM解析の精度を向上させる。ワカサギの資源利用の時空間パターンを明らかにし、個体群・食物網動態との関係を分析する。
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Remarks |
ダム湖のプランクトン(国立科学博物館)http://www.kahaku.go.jp/research/db/botany/dam/ 霞ヶ浦のプロチスタ(筑波大学)http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~algae/PoK/
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Research Products
(14 results)