2015 Fiscal Year Annual Research Report
栄養状態に応答して神経細胞の成長を調節する器官間相互作用
Project/Area Number |
15H02400
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上村 匡 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (80213396)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 栄養 / 神経細胞 / 樹状突起 / 器官間相互作用 / 全身性シグナル因子 / 脂肪組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物が摂取する栄養は、主要な環境要因の一つとして発生速度などの life history traits を大きく左右する。本研究では、発生途上の動物が栄養制限下におかれた際、どのような仕組みが神経細胞に働きかけ、その成長や分化が調節されて神経系の形成が破綻せずに進むか、あるいは完全には回避できず障害が生じてしまうのかを明らかにする。我々は、発生途中での一時的な絶食あるいは栄養素のアンバランスが、神経細胞の樹状突起の発達に与える影響を調べた。そして単一細胞の解像度で捉えた栄養状態依存的な表現型から、栄養条件を感知して樹状突起の発達を調節する、全身性あるいは体内局所での器官間相互作用の存在が強く示唆された。この実体の解明を試みた。神経細胞にボディーサイズの情報を伝える器官の候補として、脂肪組織に注目した。そして、脂肪組織から分泌することが報告されている複数の全身性シグナル分子について検討を開始した。その中でも、摂取した食餌中の栄養状態を全身に伝えるシグナル分子の複数の候補を絞り込み、その一つに特に注目した。このシグナル伝達経路は、炭水化物を多く含むエサに応答して遺伝子発現を調節し、代謝恒常性を維持して、個体の成長に必要であった。 この分泌タンパク質に対して抗体を作製してシグナル分子の検出を試みた。しかし作製した抗体の感度が十分かどうか判定できなかった。研究遂行上、シグナル分子を検出することが必要不可欠であることから、培養細胞を用いてシグナル分子を発現させて抗体の感度を検証できる系を構築することにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経細胞にボディーサイズの情報を伝える器官を想定し、その仮想シグナル源およびシグナルの探索と特定を引き続き試みた。Gal4/UAS 遺伝子発現系を用いて、特定の組織で温度感受性型Dynaminをコードする shibire[ts] を発現させて、高温への温度シフトによりその組織からの分泌を阻害し、da ニューロンの樹状突起形態に与える影響を観察した。以上の探索から「脂肪体発現用」Gal4 系統を用いた結果がポジティブとなったので、脂肪体に焦点を絞ることができた。先行研究を参考にして、脂肪体から放出される全身性シグナル分子の候補を絞り込むことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
摂取した食餌中の栄養状態を全身に伝えるシグナル分子を特定し、その分子を分泌する組織を特定し、用いる動物種間での発現を比較検討する計画だった。シグナル分子の複数の候補を絞り込み、抗体を作製してシグナル分子の検出を試みたが、感度が十分かどうか判定できなかった。研究遂行上、シグナル分子を検出することが必要不可欠であることから、培養細胞を用いてシグナル分子を発現させて抗体の感度を検証できる系を構築する。またそのシグナル伝達経路のリードアウトとして、細胞内伝達因子のリン酸化と、その変動をモニターできるか検討する。
|
Research Products
(14 results)